【過去問解答】2017年統計検定1級<統計数理4>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

正規分布の線形変換と条件付き分布に関する出題でした。

(1)

正規分布の再生性より,$Z$は正規分布に従う。

確率変数の性質より,$Z$が従う正規分布の期待値は

\begin{align}
E[Z] &= a+kE[X]+E[Y] = a
\end{align}

であり,分散は

\begin{align}
V[Z] &= k^{2}E[X]+V[Y] = k^{2}+1
\end{align}

となるため,$Z\sim\N(a,~k^{2}+1)$となります。

(2)

\begin{align}
\rho[X,Z] &= \frac{k}{\sqrt{k^{2}+1}}
\end{align}

小問(1)の結果と確率変数の性質より,$X$と$Z$の共分散は

\begin{align}
\Cov[X,Z] &= \Cov[X,a+kX+Y] = k\Cov[X, X]+\Cov[X,Y] = kV[X] = k
\end{align}

となるため,$X$と$Z$の相関係数は

\begin{align}
\rho[X,Y] &= \frac{\Cov[X,Y]}{\sqrt{V[X]V[Y]}} = \frac{k}{\sqrt{k^{2}+1}}
\end{align}

となります。

(3)

\begin{align}
\N(a+kx,1)
\end{align}

$X=x$を与えたとき$Z=a+kx+Y$となるため,$Z$は$Y$を線形変換した確率変数となります。したがって,小問(1)と同様に$Z$は正規分布に従い,その期待値は$E[Z]=a+kx$,分散は$V[Z]=1$となります。

正規分布の条件付き分布は正規分布となることもおさえておきましょう。

(4)

\begin{align}
\N\left(\frac{k}{k^{2}+1}(z-a),~\frac{1}{k^{2}+1}\right)
\end{align}

定義から条件付き分布を求めた後に,定義から期待値と分散を計算します。定義より,

\begin{align}
f(x|z) &= \frac{f(z|x)f(x)}{f(z)}
\end{align}

となるため,小問(1)と小問(3)の結果より

\begin{align}
f(x|z) &=
\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\exp\left[-\frac{\{z-(a+kx)\}^{2}}{2}\right]
\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\exp\left[-\frac{x^{2}}{2}\right]
\sqrt{2\pi(k^{2}+1)}\exp\left[\frac{(z-a)^{2}}{2(k^{2}+1)}\right]\\[0.7em]
&=\frac{k^{2}+1}{2\pi}\exp\left[-\frac{1}{2}\left\{(z-(a+kx))^{2}+x^{2}-\frac{(z-a)^{2}}{(k^{2}+1)}\right\}\right]\\[0.7em]
&=\frac{k^{2}+1}{2\pi}\exp\left[-\frac{1}{2}\left\{(k^{2}+1)x^{2}-2k(z-a)x+\frac{k^{2}}{k^{2}+1}(z-a)^{2}\right\}\right]\\[0.7em]
&= \frac{k^{2}+1}{2\pi}\exp\left[-\frac{k^{2}+1}{2}\left\{x^{2}-\frac{2k(z-a)}{k^{2}+1}x+\frac{k^{2}}{(k^{2}+1)^{2}}(z-a)^{2}\right\}\right]\\[0.7em]
&= \frac{k^{2}+1}{2\pi}\exp\left[-\frac{k^{2}+1}{2}\left\{x-\frac{k}{k^{2}+1}(z-a)\right\}^{2}\right]\\[0.7em]
&= \frac{1}{2\pi/(k^{2}+1)}\exp\left[-\frac{1}{2/(k^{2}+1)}\left\{x-\frac{k}{k^{2}+1}(z-a)\right\}^{2}\right]\\[0.7em]
\end{align}

が得られるため,

\begin{align}
X|Z &\sim \N\left(\frac{k}{k^{2}+1}(z-a),~\frac{1}{k^{2}+1}\right)
\end{align}

となります。

別解

$X,Y,Z$は3変量正規分布に従うものとしても一般性は失われません。3変量正規分布の条件付き期待値と分散より,$Z=z$を与えたときの$X$の期待値は

\begin{align}
E[X|Z=z] &= E[X] + \frac{\Cov[X,Z]}{V[Z]}(z-E[Z]) = \frac{k}{k^{2}+1}(z-a)
\end{align}

となり,$Z=z$を与えたときの$X$の分散は

\begin{align}
V[X|Z=z] &= V[X]\left\{1-(R[X,Z])^{2}\right\} = 1-\frac{k^{2}}{k^{2}+1} = \frac{1}{k^{2}+1}
\end{align}

となります。多変量正規分布の条件付き分布もまた正規分布となることに注意すると,求める答えは

\begin{align}
X|Z &\sim \N\left(\frac{k}{k^{2}+1}(z-a),~\frac{1}{k^{2}+1}\right)
\end{align}

となります。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 過去問解説ありがとうございます。質問です。
    4番の問題で$X=(z-a-Y)/k$として、$X$の平均と分散求めてその平均と分散を持つ正規分布に従うとしたらなぜダメなのでしょうか。

    • かに様

      ご質問ありがとうございます。$E[X]\neq E[X|Z=z]$だからです。

      $Z$は$X$と$Y$により定められますが,問3では$X$が与えられたため$Z$は$Y$のみにより定められます。一方,問4では$X$と$Y$により定められる$Z$が与えられるため,依然として確率変数は$2$個のままです。$X$と$Z$は無相関ではありませんので「$X$の定義に$Z=z$を代入して期待値をとったもの」が$X$の期待値になる訳ではありません。$X$と$Z$の相関係数に基づいて$Z$の"効果分"をスケーリングしなければなりません。分散も同様です。

      別解を追記しましたのでご確認ください。

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