【過去問解答】2016年統計検定1級<統計数理4>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

モンテカルロ法に関する出題でした。

(1)

$X$は確率$\theta$で$0$以上$1$以下となるため,$X$は二項分布$\Bin(n,\theta)$に従う。よって,

\begin{align}
V[\hat{\theta}_{1}]
&= \frac{1}{n^{2}}V[X]
= \frac{1}{n^{2}}n\theta(1-\theta)
= \frac{\theta(1-\theta)}{n}
\approx \frac{0.3413(1-0.3413)}{n}
= \frac{0.2248}{n}
\end{align}

となる。

小問(3)と小問(4)を見据えて$\theta\approx0.3413$を代入しています。

(2)

$X$は確率$2\theta$で$-1$以上$1$以下となるため,$X$は二項分布$\Bin(n,2\theta)$に従う。よって,

\begin{align}
V[\hat{\theta}_{1}]
&= \frac{1}{4n^{2}}V[X]
= \frac{1}{4n^{2}}2n\theta(1-2\theta)
= \frac{\theta(0.5-\theta)}{n}
\approx \frac{0.3413(0.5-0.3413)}{n}
= \frac{0.0542}{n}
\end{align}

となる。

小問(3)と小問(4)を見据えて$\theta\approx0.3413$を代入しています。

(3)

$U_{1},\ldots,U_{n}$は独立であることから,

\begin{align}
V[\hat{\theta}_{3}]
&= \frac{1}{2\pi n^{2}}\sum_{i=1}^{n}V[e^{-U_{i}^{2}/2}]
= \frac{1}{2\pi n^{2}}\sum_{i=1}^{n}\left(E[e^{-U_{i}^{2}}]-E[e^{-U_{i}^{2}/2}]^{2}\right)\\[0.7em]
&= \frac{1}{2\pi n^{2}}\sum_{i=1}^{n}\left\{E[e^{-U_{i}^{2}}]-2\pi E\left[\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{U_{i}^{2}}{2}\right)\right]^{2}\right\}\\[0.7em]
&= \frac{1}{2\pi n^{2}}\sum_{i=1}^{n}\left(E[e^{-U_{i}^{2}}]-2\pi\theta^{2}\right)
\end{align}

が得られる。ここで,$U$が区間$[0,1]$上の一様分布に従うこと,および区間$[0,1]$上の一様分布の確率密度関数は$1$であることより,

\begin{align}
E[e^{-U^{2}}]
&= \int_{0}^{1}e^{-u^{2}}du
= \frac{1}{\sqrt{2}}\int_{0}^{\sqrt{2}}e^{-z^{2}/2}du
= \frac{\sqrt{2\pi}}{\sqrt{2}}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{0}^{\sqrt{2}}e^{-z^{2}/2}du\\[0.7em]
&= \sqrt{\pi}P(0\leq Z\leq \sqrt{2})
\end{align}

が得られる。ただし,$u^{2}=z^{2}/2$とおいた。以上より,$\sqrt{\pi}\approx 1.7725$および標準正規分布表の値を用いると,

\begin{align}
V[\hat{\theta}_{3}]
&= \frac{1}{2\pi n^{2}}\sum_{i=1}^{n}\left(\sqrt{\pi}P(0\leq Z\leq \sqrt{2})-2\pi\theta^{2}\right)
= \frac{1}{n}\left(\frac{P(0\leq Z\leq \sqrt{2})}{2\sqrt{\pi}}-\theta^{2}\right)\\[0.7em]
&= \frac{1}{n}\left\{\frac{0.5-P(\sqrt{2}<Z)}{2\sqrt{\pi}}-\theta^{2}\right\}
= \frac{1}{n}\left(\frac{0.4207}{2\cdot 1.7725}-0.3413^{2}\right)
= \frac{0.0022}{n}
\end{align}

公式解答は$0.0023/n$となっていますが,$0.0022/n$が正しいと思われます。

補足として,問題文で与えられた$\theta$の定義を確認しておきます。$U$が区間$[0,1]$上の一様分布に従うため,

\begin{align}
E\left[\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{U^{2}}{2}\right)\right]
&= \int_{0}^{1}1\cdot \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{u^{2}}{2}\right)du
= \theta
\end{align}

が得られます。

(4)

$\hat{\theta}_{2}$ではおおよそ$2411$個,$\hat{\theta}_{3}$ではおおよそ$103$個必要となる。

小問(1)より$n=10000$のとき$V[\hat{\theta}_{1}]\approx 2.248\times 10^{-5}$となるため,小問(2)と小問(3)の結果より,$\hat{\theta}_{2}$では

\begin{align}
n &= \frac{5.42\times 10^{-2}}{2.248\times 10^{-5}}
\approx 2411
\end{align}

となり,$\hat{\theta}_{3}$では

\begin{align}
n &= \frac{2.3\times 10^{-3}}{2.248\times 10^{-5}}
\approx 102.3\approx 103
\end{align}

となります。ただし,解答は小数第一位を切り上げました。

小数第一位を四捨五入して答えてもよいですしょう。公式解答では小数第一位まで解答していますが,一般に乱数の個数は整数となるため,整数で答えた方がよいと考えられます。

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