【過去問解答】2012年統計検定1級<数理統計問4>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

いわゆる$z$検定が一様最強力不偏検定であることを示す問題です。

小問1

標本平均は$\calN(\mu, 1/\sqrt{n})$に従いますから,有意水準を$\alpha$とおくと以下が成り立ちます。

\begin{align}
-z\left( \frac{\alpha}{2} \right) \leq \sqrt{n}( \overline{x} - \mu ) \leq z\left( \frac{\alpha}{2} \right)
\end{align}

これを変形すると,$\mu$の信頼区間を求められます。

\begin{align}
\overline{x} - \frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}} \leq \mu \leq \overline{x} + \frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}}
\end{align}

小問2

母平均に関する一様最強力不偏検定を導出する方針は以下です。

  • 指数分布族の性質を用いて一様最強力検定を与える統計量を求める
  • 通常$\alpha$を小さな値に設定することを前提として不偏性を確認する

まずは,確率密度関数を以下の指数型分布の形に変形して$T(x)$が何に相当するか確認します。

\begin{align}
f(x; \theta) &= h(x) \exp\left( \theta T(x) -c(\theta) \right)
\end{align}

そのうえで,$T(x)/n$が一様最強力検定を与える統計量であることを利用します。$\calN(\mu, 1)$から無作為に抽出された$n$個のサンプルの同時確率密度関数は,

\begin{align}
\prod_{i=1}^n \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \exp\left\{ -\frac{1}{2} (x_i - \mu)^2 \right\}
&= \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \right)^n \exp\left\{ -\frac{1}{2} \sum_{i=1}^n (x_i - \mu)^2 \right\} \\[0.7em]
&= \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \right)^n \exp\left\{ -\frac{1}{2} \left(\sum_{i=1}^n x_i^2 - 2\mu n\overline{x} + n\mu^2\right) \right\} \\[0.7em]
&= \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \right)^n \exp\left\{ -\frac{1}{2} \sum_{i=1}^n x_i^2 \right\} \exp\left\{ \mu n \overline{x} - \frac{1}{2} n\mu \right\}
\end{align}

この形は,指数型分布において

\begin{align}
h(x) &= \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \right)^n \exp\left\{ -\frac{1}{2} \sum_{i=1}^n x_i^2 \right\} \\[0.7em]
\theta &= \mu \\[0.7em]
T(x) &= n \overline{x} \\[0.7em]
c(\theta) &= \frac{1}{2} n\mu
\end{align}

となっており,指数型分布に対応していることが分かります。したがって,$T(x)/n = \overline{x}$は一様最強力検定を与える統計量になります。このときの棄却域は,両側検定であることに注意すると,

\begin{align}
\left\{ x~\middle|~\overline{x} \leq a~\or~b \leq \overline{x} \right\}
\end{align}

です。さて,有意水準$\alpha$は通常小さい値に設定します。そのため,$a$と$b$を$z(\alpha)$で表せば,$\mu < 0$の場合でも$-z(\alpha)$を下回る確率(すなわち検出力)の方が有意水準よりも大きくなり,この検定は不偏性をもつことが分かります。したがって,小問1の結果(つまり$\pm z(\alpha/2)$を$\sqrt{n}$で割ったものが$a$と$b$に相当するという結果)も参考にして,以下のように棄却域を設定すれば一様最強力不偏検定を行うことができます。ただし,$\vx = [x_1, \ldots, x_n]$とします。

\begin{align}
\left\{ \vx~\middle|~\overline{x} \leq -\frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}}~\or~\frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}} \leq \overline{x} \right\}
\end{align}

ここら辺の議論は後日改めて別ページでまとめる予定です。図解していきます。

小問3

改めて小問1と小問2の結果を見比べましょう。小問1の結果を変形すると

\begin{align}
\mu - \frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}} \leq \overline{x} \leq \mu + \frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}}
\end{align}

となりますので,表記を棄却域に書き換えると以下のようになります。

\begin{align}
\left\{ \vx~\middle|~\overline{x} < \mu -\frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}}~\or~\mu + \frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}} < \overline{x} \right\}
\end{align}

小問2の結果は以下でした。

\begin{align}
\left\{ \vx~\middle|~\overline{x} < -\frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}}~\or~\frac{z\left( \frac{\alpha}{2} \right)}{\sqrt{n}} < \overline{x} \right\}
\end{align}

小問1の棄却域に$\mu = 0$を代入した結果が小問2の棄却域に一致しています。これは,小問2で帰無仮説に$\mu$を設定しているからです。まとめると,$\mu = 0$が小問1の信頼区間に入っていないことと,小問2で与えた帰無仮説$H_0$を棄却することが同値であるということです。言い方を変えれば,$\mu = 0$が小問1の信頼区間に入っていることと,小問2で与えた帰無仮説$H_0$を棄却しないことが同値であるということです。

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