【過去問解答】2012年統計検定1級<数理統計問1>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

不適切な内容があれば,記事下のコメント欄またはお問い合わせフォームよりご連絡下さい。

目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

小問1

これは俗に言う「逆関数法」というやつです。乱数の生成方法の一つなのですが,少しややこしいですよね。知っていなければ解けないような問題だと思います。

まず,累積分布関数が「連続かつ狭義単調増加関数」ならば「逆関数が存在する」が成り立ちます。言われてみればそうですよね。連続かつ狭義単調増加の累積分布関数は全単射ですので,逆関数が存在します。また,累積分布関数$F(z)$の値域が$(0,1)$ですので,その逆関数$F^{-1}(z)$の定義域は$(0,1)$になります。問題文上の「区間(0,1)上の」は逆関数の定義域だったのです。

さて,実際に解答に入っていきます。方針としては,$U$の累積分布関数$G_U(u)$が$0<u<1$に対して$u$となることをいえば,$U$は区間$(0,1)$で一様分布に従うことが示せます。

\begin{alignat}{2}
G_U(u) &= P\left(U \leq u\right) \\[0.7em]
&= P\left(F(Z) \leq u\right) \\[0.7em]
&= P\left(Z \leq F^{-1}(u)\right) &\quad &(\because F\text{の逆関数は存在する}) \\[0.7em]
&= F\left( F^{-1}(u) \right) &\quad &(\because \text{累積分布関数の定義}) \\[0.7em]
&= u
\end{alignat}

このときの変換$U=F(Z)$を確率積分変換と呼びます。

小問2

まず,$g_1(x)$について考えます。$U_{1},U_{2},U_{3}$のうち一つの変数が$x$という値を取ったとき,その変数が$X_{1}$となる確率を考えます。$x$という値を取った変数以外の二つの変数が$x$以上の値を取れば,$x$という値をとった変数が$X_1$となるため,その確率が$g_1(x)$となります。$x$という値を取る変数の選び方は$3$通り,$x$という値を取る変数以外の変数の選び方は$1$通り,すなわち$U_{1},U_{2},U_{3}$に対する$X_{1},X_{2},X_{3}$の当てはめ方は$3$通りですので,結局$g_{1}(x)$は以下のように求められます。

\begin{align}
g_1(x) &= 3(1-x)^2
\end{align}

次に,$g_2(x)$について考えます。$U_{1},U_{2},U_{3}$のうち一つの変数が$x$という値を取ったとき,その変数が$X_{2}$となる確率を考えます。$x$という値を取った変数以外の二つの変数のうち,一方の変数は$x$以上,もう一方の変数は$x$以下を取れば,$x$という値を取った変数が$X_2$になるため,その確率が$g_2(x)$となります。$x$という値を取る変数の選び方は$3$通り,$x$以上の値を取る変数の選び方は$2$通り,$x$以下の値を取る変数の選び方は$1$通り,すなわち$U_{1},U_{2},U_{3}$に対する$X_{1},X_{2},X_{3}$の当てはめ方は$6$通りですので,結局$g_{2}(x)$は以下のように求められます。

\begin{align}
g_2(x) &= 6x(1-x)
\end{align}

最後に,$g_3(x)$について考えます。$U_{1},U_{2},U_{3}$のうち一つの変数が$x$という値を取ったとき,その変数が$X_{3}$となる確率を考えます。$x$という値を取った変数以外の二つの変数が$x$以下の値を取れば,$x$という値をとった変数が$X_3$となるため,その確率が$g_3(x)$となります。$x$という値を取る変数の選び方は$3$通り,$x$という値を取る変数以外の変数の選び方は$1$通り,すなわち$U_{1},U_{2},U_{3}$に対する$X_{1},X_{2},X_{3}$の当てはめ方は$3$通りですので,結局$g_{3}(x)$は以下のように求められます。

\begin{align}
g_1(x) &= 3x^{2}
\end{align}

ちなみに,以下のようにして累積分布関数を経由しても求められます。$G_1(x)$と$G_3(x)$は問1.1と全く同じ考え方で導出できます。$G_2(x)$の第一項目は$U_1,U_2,U_3$の全てが$x$以下である場合,第二項目は$U_1,U_2,U_3$のうちいずれか一つが$x$以上,その他が$x$以下であるような場合を考えています。

\begin{align}
G_1(x) &= 1 - (1-x)^3 \\[0.7em]
G_2(x) &= x^3 + 3x^2(1-x) \\[0.7em]
G_3(x) &= x^3
\end{align}

シェアはこちらからお願いします!

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ご解説ありがとうございます。
    しかしながら、$g_{2}(x)$を求める際の「$6$通り」がよくわかりません。
    例えば$U_{1}$から$U_{3}$を無作為抽出した時点で、$U_{1}$~$U_{3}$までが自動的に最大、最小、$2$番目の値、に決まるので
    $1$通りではないでしょうか?

    • 般若面 様

      ご質問ありがとうございます。
      >例えば$U_{1}$から$U_{3}$を無作為抽出した時点で、$U_{1}$~$U_{3}$までが自動的に最大、最小、$2$番目の値、に決まる
      これはおっしゃる通りなのですが,今求めたいのは$X_{j}$を確率変数とみなしたときの確率密度関数であることに注意してください。ご質問の解答となるように本文を致しました。ご確認いただき,まだ疑問が残りようでしたらお手数ですが再度ご質問いただければと思います。

      p.s.
      小問3の解答を作成するのを失念していました。近いうちに作成予定です。

コメントする

※ Please enter your comments in Japanese to distinguish from spam.

目次