【過去問解答】2013年統計検定1級<数理統計問1>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

小問1

一様分布のページでお伝えしているように,区間$[a, b]$上の連続一様分布に従う確率変数$U$の期待値と分散は以下のように求められます。

\begin{align}
E[U] &= \frac{b + a}{2} \\[0.7em]
V[U] &= \frac{(b - a)^2}{12}
\end{align}

$X$は区間$[0, 0.5]$上の連続一様分布,$Y$は区間$[0.5, 1]$上の連続一様分布に従いますので,それぞれの期待値と分散は以下のように求められます。

\begin{align}
E[X] &= \frac{0.5 + 0}{2} = 0.25 \\[0.7em]
E[Y] &= \frac{1 + 0.5}{2} = 0.75 \\[0.7em]
V[X] &= \frac{(0.5 - 0)^2}{12} = \frac{1}{48} \\[0.7em]
V[Y] &= \frac{(1 - 0.5)^2}{12} = \frac{1}{48} \\[0.7em]
\end{align}

小問2

$X$と$Y$の相関係数は$Y=1-X$の関係より$-1$です。実際に計算でも確認してみましょう。

\begin{align}
\rho_{xy} &= \frac{\sum_i (X_i - E[X])(Y_i - E[Y])}{\sqrt{\sum_i (X_i - E[X])^2} \sqrt{\sum_i (Y_i - E[Y])^2} } \\[0.7em]
&= \frac{\sum_i (X_i - E[X])\left\{ (1 - X_i) - (1 - E[X]) \right\} }{\sqrt{\sum_i (X_i - E[X])^2} \sqrt{\sum_i \left\{ (1 - X_i) - (1 - E[X]) \right\}^2} } \\[0.7em]
&= \frac{-\sum_i (X_i - E[X])^2}{\sum_i (X_i - E[X])^2} \\[0.7em]
&= -1
\end{align}

小問3

さて,この問題のポイントは期待値の求め方です。簡単には,$X$の従う連続一様分布が$g(x)=2$であることに注意すれば,以下のように定義通りに求めることができます。

\begin{align}
E[W] &= E[X/(1 - X)] \\[0.7em]
&= \int_0^{0.5} \frac{x}{1-x} \cdot 2 dx \\[0.7em]
&= 2 \int_0^{0.5} \left( \frac{1}{1-x} - 1 \right) dx \\[0.7em]
&= 2\log 2 - 1
\end{align}

しかし,ここからはより汎用的な方法を考えてみたいと思います。期待値を求めるためには確率変数$W$の確率密度関数$f(w)$を知る必要があります。$W$は変数変換によって定義されていますから,変数変換によって定められた確率変数の確率密度関数の求め方の定石にしたがって求めることができます。その定石とは何なのでしょうか。

答えは「累積密度関数を求めて微分する」ことです。累積密度関数を持ち出すことで,確率$P$の中身で式変形を行うことができるのです。実際に以下で見ていきましょう。

まず,$X$に関する累積密度関数$G(x)$を求めます。$0 \leq x \leq 0.5$の範囲で,

\begin{align}
G(x) &= P(X \leq x) \\[0.7em]
&= \int_0^x 2dt \\[0.7em]
&= 2x
\end{align}

となります。したがって,$W$の累積密度関数$F(w)$は以下のように求められます。ここで行っている式変形が「変数変換された確率変数の確率密度関数を求めるために累積密度関数を持ち出す気持ち」になります。

\begin{align}
F(w) &= P(W \leq w) \\[0.7em]
&= P(Y/X \leq w) \\[0.7em]
&= P\left\{X/(1-X) \leq w\right\} \\[0.7em]
&= P\left\{ X \leq w/(1 + w)\right\} \\[0.7em]
&= \frac{2w}{1 + w}
\end{align}

したがって,$W$の確率密度関数$f(w)$は以下のように求められます。

\begin{align}
f(w) &= F^{\prime} (w) \\[0.7em]
&= \frac{2}{(1 + w)^2}
\end{align}

これより,$0 \leq w \leq 1$に注意すると,期待値は以下のように求められます。

\begin{align}
E[X] &= \int_{0}^1 w\cdot \frac{2}{(1 + w)^2} dw \\[0.7em]
&= \int_{1}^2 \left( \frac{2}{t} - \frac{2}{t^2} \right) dt \quad (\because 1 + w = t) \\[0.7em]
&= 2 \log 2 - 1
\end{align}

最後に,中央値を求めます。中央値の求め方は地味に引っかかる人が多いです。$W$の中央値は$F(w)=1/2$を解くことで得られます。

\begin{align}
\frac{2w}{1 + w} &= \frac{1}{2} \\[0.7em]
w &= \frac{1}{3}
\end{align}

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