本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
正則行列と逆元の存在
正方行列$A$が正則であることと,次の条件は互いに同等である。
- $AB=BA=I_{n}$を満たす$n$次正方行列$B$が存在する
併せて正則と六つの同等な条件もおさえておきましょう。
証明
正則行列の定義より明らかです。もしくは,次のような証明を行うことができます。正則と六つの同等な条件より,$A$が正則ならば$\det(A)\neq 0$が成り立ちます。このとき,余因子行列を用いた逆行列の表現より,
\begin{align}
B &= \frac{\tilde{A}}{\det(A)}
\end{align}
B &= \frac{\tilde{A}}{\det(A)}
\end{align}
とすれば,$AB=BA=I_{n}$を満たす$B$を見つけることができます。ただし,$\tilde{A}$は$A$の余因子行列を表します。逆に,$AB=BA=I_{n}$ならば,積の行列式の性質より
\begin{align}
\det(A)\det(B) &= \det(AB) \\[0.7em]
&= \det(I_{n}) \\[0.7em]
&= 1
\end{align}
\det(A)\det(B) &= \det(AB) \\[0.7em]
&= \det(I_{n}) \\[0.7em]
&= 1
\end{align}
が成り立ちますので,$\det(A)\neq 0$となります。正則と六つの同等な条件より,$\det(A)\neq 0$ならば$A$は正則が成り立ちますので,$AB=BA=I_{n}$ならば$A$は正則になります。
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