本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
小行列・主小行列・首座小行列
$A$を$m\times n$行列とし,$p$を$p\leq m$,$p\leq n$を満たす一つの正の整数とする。$A$の$p$個の行と$p$個の列とを任意にとり出して作った$p$次正方行列を$p$次小行列という。$p$次小行列のうち,選び出した行番号の集合と列番号の集合が同じ$p$個の番号に対応する小行列を$p$次主小行列という。$p$次主小行列のうち,行番号と列番号の集合が$p$個の番号$\{1,\ldots,p\}$である場合は,とくに$p$次首座小行列という。
小行列,主小行列,首座小行列の行列式をそれぞれ小行列式,主小行列式,首座小行列式といいます。
例
以下の行列$A$を考えます。
A &=
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 \\
4 & 5 & 6 \\
7 & 8 & 9
\end{bmatrix}
\end{align}
$A$の$1$次小行列は$3$個の行と$3$個の列から$1$つの行番号と列番号を選べばよいため,${}_{3}C_{1}\cdot {}_{3}C_{1}$で$9$種類あります。これらは,$A$の各要素を一つずつ考える$1\times 1$行列に相当し,すべての行列が$1$次主小行列かつ$1$次首座小行列になります。
次に,$A$の$2$次小行列は$3$個の行と$3$個の列から$2$つの行番号と列番号を選べばよいため,${}_{3}C_{2}\cdot {}_{3}C_{2}$で$9$種類あります。
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
4 & 5
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
1 & 3 \\
4 & 6
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
2 & 3 \\
5 & 6
\end{bmatrix}\notag \\[0.7em]
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
7 & 8
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
1 & 3 \\
7 & 9
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
2 & 3 \\
8 & 9
\end{bmatrix}\notag \\[0.7em]
\begin{bmatrix}
4 & 5 \\
7 & 8
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
4 & 6 \\
7 & 9
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
5 & 6 \\
8 & 9
\end{bmatrix}
\end{align}
このうち,$2$次主小行列は選び出した行番号の集合と列番号の集合が同じもので,${}_{3}C_{2}$で$3$通りあります。
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
4 & 5
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
1 & 3 \\
7 & 9
\end{bmatrix}\quad
\begin{bmatrix}
5 & 6 \\
8 & 9
\end{bmatrix}
\end{align}
このうち,$2$次首座小行列は行番号と列番号が$\{1,2\}$となるもので,$1$種類あります。
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
4 & 5
\end{bmatrix}
\end{align}
最後に,$A$の$3$次小行列は$3$個の行と$3$個の列から$3$つの行番号と列番号を選べばよいため,${}_{3}C_{3}\cdot {}_{3}C_{3}$で$1$種類あります。
\begin{bmatrix}
1 & 2 & 3 \\
4 & 5 & 6 \\
7 & 8 & 9
\end{bmatrix}
\end{align}
この行列は,定義より$3$次主小行列でも$3$次首座小行列でもあります。
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