本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
行列と写像
ある行列$A\in\mK^{m\times n}$は,$n$次元空間$\mK^{n}$から$m$次元空間$\mK^{m}$への線型写像を表現する。ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表す。行列$A$を定めることは,$\mK^{n}$に一つの正規直交基底$\{\vu_{1},\ldots,\vu_{n}\}$を定め,それぞれが写像されるべき$m$次元ベクトル$\va_{1},\ldots,\va_{n}$を指定することに相当する。このとき,行列$A$は次のように書ける。
\begin{align}
A &= \va_{1}\vu_{1}^{\ast}+\cdots+\va_{n}\vu_{n}^{\ast}\label{主題_K}
\end{align}
A &= \va_{1}\vu_{1}^{\ast}+\cdots+\va_{n}\vu_{n}^{\ast}\label{主題_K}
\end{align}
特に,$\mK=\mR$のときは行列$A$は次のように書ける。
\begin{align}
A &= \va_{1}\vu_{1}^{T}+\cdots+\va_{n}\vu_{n}^{T}
\end{align}
A &= \va_{1}\vu_{1}^{T}+\cdots+\va_{n}\vu_{n}^{T}
\end{align}
本項では,表現行列の定義や線型変換の行列表現の定義で同等の主張を説明していますが,上の主張はこれらをより分かりやすく記述したものになります。
補足
実際,$1\leq i\leq n$に対して式($\ref{主題_K}$)の両辺に右から$\vu_{i}$を掛けると,正規直交性から
\begin{align}
A\vu_{i} &= \va_{i}
\end{align}
A\vu_{i} &= \va_{i}
\end{align}
となり,$\va_{1},\ldots,\va_{n}$は$A$による$\vu_{1},\ldots,\vu_{n}$の像であるという定義に一致します。
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