本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
行列式写像
次の三つの条件を満たすような写像$\det :M_{n}(\mK)\rightarrow \mK$を行列式写像という。ただし,$\mK$は実数空間$\mR$または複素数空間$\mC$を表し,$M_{n}(\mK)$は$\mK$の元を成分とする$n$次元正方行列の集合を表す。
- $\det$は列について$n$重線型である
- $\det$は列について交代的である
- $n$次元単位行列の像は$1$となる
$n$重線型と交代的の意味は下でお伝えします。
補足
$\det$が列について$n$重線型というのは,$\det$が行列$A$の$n$個の列のどれについても線型であることを指します。すなわち,$1\leq i\leq n$を満たす任意の整数$i$と$\mK^{n}$の任意の元$\va_{1},\ldots,\va_{i},\va_{i}^{\prime},\ldots,\va_{n}$に対し,
\begin{align}
f(\va_{1},\ldots,\va_{i}+\va_{i}^{\prime},\ldots,\va_{n})
&= f(\va_{1},\ldots,\va_{i},\ldots,\va_{n}) + f(\va_{1},\ldots,\va_{i}^{\prime},\ldots,\va_{n}) \\[0.7em]
f(\va_{1},\ldots,c\va_{i},\ldots,\va_{n}) &= cf(\va_{1},\ldots,\va_{i},\ldots,\va_{n})
\end{align}
f(\va_{1},\ldots,\va_{i}+\va_{i}^{\prime},\ldots,\va_{n})
&= f(\va_{1},\ldots,\va_{i},\ldots,\va_{n}) + f(\va_{1},\ldots,\va_{i}^{\prime},\ldots,\va_{n}) \\[0.7em]
f(\va_{1},\ldots,c\va_{i},\ldots,\va_{n}) &= cf(\va_{1},\ldots,\va_{i},\ldots,\va_{n})
\end{align}
が成り立つことを指します。$\det$が列について交代的であるというのは,$1\leq i\leq n$,$1\leq j\leq n$かつ$i\neq j$を満たすある$i,j$に対して,行列$A$の列のうちに$\va_{i}=\va_{j}$となる$i,j$が存在するならば,$\det (A)=0$となることを指します。
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