【徹底解説】可換な合成写像に共通な固有ベクトル

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

可換な合成写像に共通な固有ベクトル

$F,G$を$n$次元複素内積空間$V$の線型変換とし,$\dim V\geq 1$とする。もし,$FG=GF$ならば,$V$の中に$F,G$に共通した固有ベクトルが存在する。

テプリッツの定理の証明に利用される定理です。

証明

複素ベクトル空間では任意の線型変換は固有値をもつので,$F$の一つの固有値を$\alpha$とし,それに対する$F$の固有空間を$W$とします。$FG=GF$であるとき,$v\in W$に対して

\begin{alignat}{3}
F(G(v)) &= G(F(v)) &&= G(\alpha v) &&= \alpha G(v)
\end{alignat}

が成り立ちます。$W$が$F$の固有空間であることに注意すると,$G(v)\in W$となることが分かります。すなわち,$v\in W$に対して$G(v)\in W$が成り立つので,$W$は$G$に関して不変です。ゆえに,$G$の$W$への縮小が考えられ,かつ固有空間の定義より$W$は$\{0\}$ではありませんので,$W$の中に固有ベクトル$w_{0}$が存在します。$F$の固有空間が$W$であることから,$W$の固有ベクトルは$F$にも属します。したがって,$FG=GF$ならば,$V$の中に$F,G$に共通した固有ベクトル$w_{0}$が存在することが示されました。

シェアはこちらからお願いします!

コメント

コメントする

※ Please enter your comments in Japanese to distinguish from spam.

目次