【読書記録】世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方

目次

はじめに

私が読書を始めたキッカケや他に読んだ書籍については,以下のページにまとめています。

基本情報

タイトル世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方
著者八木 仁平
出版社KADOKAWA
発売日2020年05月28日
ページ数224ページ

概要と感想

本書籍は,やりたいことが見つからずにモヤモヤしている社会人に向けて,やりたいことを見つける独自のフレームワークを紹介するものである。『WILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方』『「何者でもない自分」から抜け出すキャリア戦略』といった類書と比較しても,フレームワーク自体が非常にロジカルかつシンプルであり,説得力の高い内容であった。管理人としては,Will(やりたいこと)発掘のための手法として,本書籍が最も効果的で納得感のあるものだと考えている。

著者は,「やりたいこと」という二度とブレない自分軸を持つことにより,日々のエネルギーを一点に集中させることができ,その結果として成長し続ける「無限ループ」に入ることができると主張している。この「やりたいこと」を見つけ出すためには深い自己理解が不可欠であり,そのための具体的なメソッドが本書で紹介されている。特に,上司や親といった「社会的な役割」に引きずられることなく,外部から要請される「やるべきこと」ではなく,内発的な「やりたいこと」を見出すことの大切さが強調されている。

筆者は「やりたいこと」探しを妨げる要因として,世間に蔓延している「5つの誤解」を挙げている。

1. 「一生続けられること」でなければならない

VUCA(Volatility:変動性・Uncertainty:不確実性・Complexity:複雑性・Ambiguity:曖昧性)の時代においては,「やりたいこと」を一生続けることはむしろリスクである。「今一番やりたいこと」に向き合い続けることが大切だ。

2. 「運命的な感覚」がある

「やりたいこと」が見つかったときには運命的な感覚がある訳ではなく,「やりたいこと」は試行錯誤しながら育てていくものである。

3. 「人のためになること」でなければならない

人のためありきの「やりたいこと」ではなく,自分の「やりたいこと」をし続けた結果として「人のためになっている」という構造が正しい。他人軸の活動を3年以上続けることは難しい。

4. 「たくさん行動」しなければ見つからない

大量に選択肢が溢れている現代社会において,これ以上選択肢を増やし続ける必要はない。大切なのは個人の選択基準を磨くことであり,そのためには自己理解を深める必要がある。

5. 「仕事」にすることはできない

「やりたいこと」を探す前に,実現可能性を考えてはならない。「やりたいこと」が見つかってから実現の方法を考えれば十分であり,無意識に可能性を潰してしまわないように注意が必要。実現手段は常に社会の中に溢れている。

最も危険なのは,「どの道に進むのが一番メリットがあるだろうか」と頭で考えて判断しようとする行動だという。これは「どうすべきか」という外的な損得勘定に基づく判断基準である。しかし,上述の通り現代社会の変化は激しいため,判断した時点でのメリットはすぐに陳腐化してしまう可能性がある。

だからこそ,自分自身の「やりたいこと」を明確に言語化しておく必要がある。そうすることで,時代の流れに左右されない根本的な「どうしたいか」という内発的な判断基準を持つことができるからだ。それは,無数に存在する選択肢を自分専用の「フィルター」に通すようなものであり,それだけで進むべき道が自然と絞り込まれていくような感覚であるという。


多くの人が「やりたいこと」を見つけられない理由は,論理的な思考ではなく,直感に頼って「やりたいこと」を探してしまっているからである。

本書では,直感に頼らないロジカルなアプローチとして,「好きなこと」と「得意なこと」の共通部分を「やりたいこと」と定義し,さらにその「やりたいこと」と「大事なこと」が重なる中心部分こそが「本当にやりたいこと」であるというフレームワークを提示している。この3つの円が重なる一点を導き出すプロセスこそが,納得感のあるキャリアを築くための鍵となるのである。

それぞれの定義は以下の通りである。

  • 好きなこと:自分の情熱がある分野で,ずっと成長し続けていること(情熱・What)
  • 得意なこと:自然と人よりも上手くできて,やっていて苦なく心地よいこと(才能・How)
  • 大事なこと:何のために生きるかという人生の目的(価値観・Why)

なお,以下の理由から「なりたいもの」を考えるのは避けた方がよいとのことだ。

  • 仕事のイメージに左右されてしまう(実際にやることは興味がない可能性がある)
  • 実現手段が限定されてしまう(自分が知っている手段にとらわれてしまう)

「大事なこと」とは自分の価値観そのものであるが,本書ではこの価値観を「内側の価値観(人生の目的)」と「外側の価値観(仕事の目的)」の二層に分けて捉えている。このうち,特に「外向きの価値観」を正しく理解し,自覚することによって,自分が持っている「好きなこと」や「得意なこと」を社会の中で初めて有効に活かせるようになるのだ。

また,「やりたいこと」が見つからない人の多くは,「自分にはできないかもしれない」という心理的なブレーキが自己理解を阻害している可能性が高い。そのため,まずは感情に左右されやすい「好きなこと」よりも先に,客観的な能力である「得意なこと」に焦点を当てる手法が推奨されている。自分の「できる」という確信を足場にすることで,心理的な障壁を乗り越え,より純粋な意欲へと繋げていくことができるからだ。


筆者は「価値観」と「目標」の違いについても明確に言及している。価値観とは人生において「進み続ける方向」を指し,目標はその途中に置かれた「チェックポイント」を指す。自分の価値観を理解できていない人は,人生の方向を定められないまま目先の目標だけを立ててしまい,結果として迷走し続けることになる。いわば,価値観は「方向」であり,目標は「距離」という概念的な違いがあるのだ。

本書では,リストアップやマインドマップ,ランキング,ジャーナリング,そして「5つの質問」などの手法を用いて価値観を言語化していく。その過程で重要なのは,「他人軸」の価値観を「自分軸」へと変換することである。他人軸とは,自分ではコントロールできない要素を指す。そのような要素を価値観に据えてしまうと,自分の幸福や充足感が相手の反応次第で決まってしまうからである。

また,著者は「自分を変える努力ではなく,自分を活かす努力をすべきだ」と主張している。弱みを埋めることに汲々とするのではなく,強みを最大化することにエネルギーを注ぐべきだということだ。これは『心理学的経営』でも説かれている「個を活かすマネジメント」に通じる考え方だが,個人レベルのWill発掘においても同様のことが言及されている点には驚かされた。経営学者のピーター・ドラッカーも,「強みのみが成果を生む。弱みはたかだか頭痛を生むくらいのものである。しかも弱みをなくしたからといって何も生まれはしない。強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない。」と述べているという。

「好きなこと」をWillの要素に含めているのは,そこには自然とモチベーションが湧いてくる源泉があるからだ。好きなことを軸に仕事を選べば,義務感で働く人よりも高い継続性を発揮でき,結果として大きな成果を上げられるはずである。ただし,この「好きなこと」を扱う際には,以下の観点に注意する必要がある。

「好きな分野」という解像度で選ばない

例えば「野球が好き」だからといって,必ずしも野球用具メーカーの販売職が適しているとは限らない。重要なのは,野球の「どのような側面」に惹かれているのかを深掘りすることである。

もしその理由が「チームプレイ」や「コツコツと個人の能力を高めること」,あるいは「勝利のための戦略を練ること」にあるのだとすれば,必ずしも野球そのものに固執する必要はない。「チームで目標に取り組み,専門的な技術を磨きながら戦略的に思考できる仕事」という具合に,真に自分を活かせるフィールドを広げることが可能になるのである。

「役に立つから好き」という理由で選ばない

注意すべき点として,もし「好きな理由」が「役に立つから」という外的なメリットに基づいている場合は,それをWillの要素に据えるのは不適切であるという。なぜなら,この場合は「期待した結果」が得られない限り,自分の「好き」という感情が満たされないからである。

本来の「好きなこと」とは,結果の如何にかかわらず,作業に取り組んでいる「その瞬間」が楽しいと感じられるものであるべきだ。「役に立つから好き」という打算的な動機ではなく,純粋に「興味があるから好き」と言える対象を仕事に選ぶこと。この内発的な興味こそが,困難に直面しても折れないキャリアの支柱となるのである。

「大事なこと」のうち,「外向きの価値観」は「仕事の目的」に相当する。この「仕事の目的」こそが,数ある「やりたいこと」の中から,単なる趣味に留めるべきものと,仕事として取り組むべき「本当にやりたいこと」とを分ける分水嶺になる。自身の活動が顧客の「ありがとう」を引き出し,社会的な価値(外向きの価値観)に直結するかどうか。この視点を持てるかどうかが,その「やりたいこと」を仕事にするかどうかの判断基準となるのである。

本書籍は最後に,「やりたいこと」を定めれば,その実現手段は自然と見つかるものであると説いている。一見すると抽象的な主張に聞こえるが,実際には真理を突いているのだろう。これはWill発掘のフレームワークにおいて説明が難しいポイントでもある。なぜなら,実現手段は導き出された「やりたいこと」の内容によって千差万別であり,フレーム自体の解説の中で具体的な手法を網羅することは不可能に近いからである。

しかし,昨今のブロガーやYouTuberの台頭に見られるように,個人が「やりたいこと」を実現するためのプラットフォームや手段は,今や世の中に溢れるほど存在している。最も大切なのは,手段の有無を憂うことではなく,まず最初に純粋な「やりたいこと」を見つけ出し,「自分らしく」人生を謳歌しようとする意志を持つことなのだ。

参考文献

KADOKAWA
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