【読書記録】WILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方

目次

はじめに

私が読書を始めたキッカケや他に読んだ書籍については,以下のページにまとめています。

基本情報

タイトルWILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方
著者大川 陽介
出版社Discover 21
発売日2024年03月22日
ページ数256ページ

概要と感想

本書籍は,キャリアデザインの文脈でよく用いられる「Will(やりたいこと)・Can(できること)・Must(やるべきこと)」のフレームワークのうち,「Will」の見つけ方に焦点を当てた一冊である。管理人はこれまで『キャリア・スタディーズ』『キャリア教育がわかる』などの関連書を通じ,Willとは「自分が大切にしている価値観や軸」といった内向きな概念であると理解していたが,本書はその解像度を大きく引き上げてくれる内容であった。専門書ではないため,語り口は平易で登場人物の会話形式を中心に進むが,それゆえに抵抗なく読み進めることができる。

まず著者は,多くの人のWillが会社や組織のWillと同化してしまっている現状を指摘する。仮に会社という枠組みがなくなったとしても「自分が何をやりたいのか」を見出すことが重要であり,その発掘のためのフレームワークを提供してくれる点に本書の価値がある。私たちは日々の業務の中で組織から求められる「Must」や,それをこなす過程で身につく「Can」に目を奪われがちである。しかし,Willを言語化して内発的動機を明確にすることは,自身の行動指針を確立し,次に取るべき行動を自ら選択していくことにつながる。Willはまさに,VUCA(Volatility:変動性・Uncertainty:不確実性・Complexity:複雑性・Ambiguity:曖昧性)の時代における「羅針盤」のような存在なのである。

『心理学的経営』でも説かれているように,個を活かすことは組織のパフォーマンスを最大化することに直結する。さらにVUCAの時代においては,キャリアデザイン学の観点からも個人の自律が強く求められている。このような背景から,羅針盤としてのWillを言語化することは現代において必須の営みといえるだろう。リーダーシップのあり方も牽引型からサーバント型へと変遷する中で,リーダー自身の自分らしさとメンバーの自分らしさを共に引き出し,マネジメントに活かす「オーセンティック・リーダーシップ」が注目を集めている点も腑に落ちる。

本書で紹介されるWill発掘のワークは,いわゆる「人生曲線」を描き,その傾きが変化する局面からキーワードを発散的に収集し,抽象化・コンセプト化を通じて収束させていく手法である。これは管理人が学生時代に独学で取り組んでいた自己分析の手法と酷似しており,驚きを覚えた。当時の管理人は縦軸を「充実度」と定義したが,本書によればこの縦軸の定義は自由であり,むしろその定義にこそ個人の価値観が滲み出るのだという。価値観や軸の多くは幼少期からの原体験に根ざしているため,人生曲線をベースにキーワードを洗い出し,それらをグルーピングしていくプロセスはWillの特定において極めて有効なアプローチである。

VUCAの時代を生き抜くためには,他人にどう見られたいかという「YOU-mode」から,自分がどうしたいかという「I-mode」へ転換する必要がある。他者軸で生きることは,その軸が変動し不安定な状況下では,自分自身も容易にブレてしまうことを意味する。ハーバード大学のロバート・キーガン教授が「成人発達理論」で説くように,人間は自分軸と他者軸を行き来しながら成長していく。

特に「他者依存段階」から「自分主導段階」へと進むことは,成熟した人間となるための重要なポイントである。多くの人が他者依存段階に留まってしまうからこそ,Will発掘ワークを通じて「YOU-mode」から「I-mode」へと転換することが期待されているのだ。

また,管理人自身,これまではWillとは「自分が大切にしている価値観や軸」であり,あくまで自分の内側に向く概念であると捉えていた。しかし本書では,Willを「バリュー・ミッション・ビジョン」という3つの階層に分類している。この整理に触れたことで,Willは必ずしも内向きな概念に留まるものではないと理解を改めることができた。

Willの言語化においては

  • こんな価値観を持った私は(バリュー)
  • こんなことをやりたくて(ミッション)
  • その結果,こんな未来を見たいんです(ビジョン)

といったストーリーに仕立てると非常に分かりやすい。この仕立て方にも,バリュー優先型・ミッション優先型・ビジョン優先型といったパターンがあり,自分が最も納得感を得られる優先順位で言語化していくのが良さそうだ。

この言語化を行う上で何より重要なのは,「Willに正解はない」という点である。Willはあくまで自分自身の意思であり,正解・不正解など存在しない。ましてや他人と比較することにも意味はない。仮にWillに満たすべき要件があるとすれば,それは「具体的な行動につながる言語化であること」が望ましい,という程度のものであるという。

Willを言語化することで,日々の生活の中では見落としていた機会や縁に気づけるようになるという変化が訪れる。Willは受け身の生活から能動的な生活へとシフトするための「スイッチ」でもあるのだろう。また,仮に受け身の状況であっても,Willが羅針盤として機能することで,選択肢の取捨選択や意思決定を迷いなく行えるようになるはずだ。

参考文献

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