【読書記録】リクルートのDNA —— 起業家精神とは何か

目次

はじめに

管理人は社会人としてハード的なスキルを身につける自己研鑽はある程度完了したため,ソフト的なスタンスや思想哲学の裾野を広げたいと考えて「名著100本ノック」を開始しました。本書籍もその一環で読んだものになります。読書記録は下記のページでまとめています。

基本情報

タイトルリクルートのDNA —— 起業家精神とは何か
著者江副 浩正
出版社KADOKAWA
発売日2007年03月08日
ページ数224ページ

概要と感想

この書籍は,江副さんが「ニートやフリーターの中から何人かでも若き起業家が輩出されること」を願って書かれたものである。私も『江副浩正』という書籍を読むまで知らなかったが,江副さんは壮絶な幼少期を過ごしており,決して裕福な家庭に生まれたわけではなかった。そのような背景をもつ江副さん自身が,凡人として凡人を勇気づけるために記した書籍でもある。

本書の構成は,前半で江副さん自身の起業家精神に関する考えが述べられ,その後に偉大な先駆者たちの実例を挙げながら彼がそこから何を学んだのかが解説されている。そしてリクルートを創り上げてきた歴史が語られ,最後には新規事業の失敗談が赤裸々に記されている。

最も印象的なのは,第一章で語られる江副さんの起業家精神に対する哲学である。現場第一主義を掲げ,「社会への貢献・個人の尊重・商業的合理性の追求」を経営の三原則として提示している。また,易経から着想を得た「自ら機会を創り出し,機会によって自らを変えよ」という社訓も紹介されており,これらはいずれも現在のリクルートにも脈々と受け継がれている思想である。江副さんがこれらの理念をいかに深く刻み込んでいたのかが伝わってくる。

現場第一主義について,江副さんが具体的な方法論を示しているわけではないが,

トップに自分の名前と能力を知られ,期待されていると社員が感じれば,自ずと仕事へのモラール(やる気)は高まるのである

「リクルートのDNA —— 起業家精神とは何か」p.19より引用

と述べており,メンバーのエンゲージメントを高める思想であることがわかる。社員の名前を覚え,現場との対話を重ね,ニックネームで呼び合う関係性を築く。私自身もメンバーへの期待の伝え方が弱いと感じる部分があり,深く刺さる内容だった。

経営の三原則では,「どんなに儲かる事業でも社会に貢献できなければやらない」「個人の得意を伸ばして成果を上げる」「コストを犠牲にしてでも質とスピードにこだわる」と述べている。いまや大企業となったリクルートが,株主への責任と社会貢献を両立する難しさを抱える中で,この理念は「ロマンとそろばん」とも称されている。

さらに印象的なのは,江副さんが素直に自分の弱みと向き合う姿勢である。

私はよくこう言われた。

「人の話を最後まで聞かず途中で発言を遮る。聞いている間もほかのことを考えている」

「会議で決めたことをあとですぐ変更するから周りは混乱する。朝令暮改だ」

「人の言葉を借りて自分の意思を伝える。自分の言葉で意思を伝えるべきだ」

...

私は自らを変えなければならないと切実に感じ,みんなに書いてもらったアドバイスカードをいつも机の引き出しに入れて,「明日からの自分は,これまでの自分ではなようにしよう」と,RODのたびに心に誓った。

「リクルートのDNA —— 起業家精神とは何か」p.33-34より引用

このフィードバックは,上司向けの内省プログラム「ROD」の一環として受けたものだが,トップに対しても率直に意見を言える文化,そしてトップ自らがそれを受け止めて変わろうとする姿勢が強く心に残った。

参考書籍

日経BP (著: 馬場/土屋)
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