本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
正則行列の逆行列と転置
正則行列$A$に対し,次が成り立つ。
\begin{align}
\left(A^{T}\right)^{-1} &= \left(A^{-1}\right)^{T}\label{主題}
\end{align}
\left(A^{T}\right)^{-1} &= \left(A^{-1}\right)^{T}\label{主題}
\end{align}
逆行列の転置と転置の逆行列は等しくなります。
証明
行列積の転置において,$A$を$n$次元正則行列,$B=A^{-1}$とおくと,
\begin{align}
(AA^{-1})^{T} &= \left(A^{-1}\right)^{T}A^{T} = I_{n}\label{逆行列_1}
\end{align}
(AA^{-1})^{T} &= \left(A^{-1}\right)^{T}A^{T} = I_{n}\label{逆行列_1}
\end{align}
となります。ただし,$I_{n}$は$n$次元単位行列を表します。同様に,
\begin{align}
(A^{-1}A)^{T} &= A^{T}\left(A^{-1}\right)^{T} = I_{n}\label{逆行列_2}
\end{align}
(A^{-1}A)^{T} &= A^{T}\left(A^{-1}\right)^{T} = I_{n}\label{逆行列_2}
\end{align}
となります。式($\ref{逆行列_1}$)と式($\ref{逆行列_2}$)および逆行列の定義より,$A^{T}$の逆行列は$(A^{-1})^{T}$となります。すなわち,式($\ref{主題}$)が成り立ちます。
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