【徹底解説】微分演算と期待値の順序交換

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目次

証明

微分演算d/dtと期待値E[]の順序がある条件下で交換できることを示します。微分演算と期待値の順序交換は多くの教科書では成り立つものと仮定しているために,議論されることが少ないように思えます。しかし,測度論では重要なトピックであるため,ここでも少し触れておこうと思います。厳密さを追求してしまうとキリがないため,ここではルベーグの収束定理が示されているものとして証明を進めていきます。

まず,平均値の定理より,数直線上の区間I上の可積分な連続関数f(x,t)に対して

(1)|f(x+h)f(x)h|=|ddxf(x+θh)|(2)g(x)

が成り立ちます。ただし,0<θ<1です。したがって,ルベーグの収束定理より,

(3)ddxIf(x)dx=limh0If(x+h)dxIf(x)dxh(4)=limh0If(x+h)f(x)hdx(積分の線形性)(5)=Ilimh0f(x+h)f(x)hdx(ルベーグの収束定理)(6)=Iddxf(x)dx

が成り立ちます。これは,微分操作と積分の順序交換ができることを示しています。fが二変数関数になったときも同様です。f(x,t)の順序交換はモーメント母関数などで活躍します。まずは,平均値の定理です。

(7)|f(t+h,x)f(t,x)h|=|ddxf(t+θh,x)|(8)g(x)

続いて,積分の線形性とルベーグの収束定理を利用します。

(9)ddtIf(t,x)dx=limh0If(t+h,x)dxIf(t,x)dxh(10)=limh0If(t+h,x)f(t,x)hdx(11)=Ilimh0f(t+h,x)f(t,x)hdx(12)=Itf(t,x)dx

さて,最後に微分操作と期待値の順序交換に関しても確認しておきましょう。積分と期待値はほとんど同じですので,直感的にも順序交換が可能であることがわかります。実際,以下のように先ほどと同様に証明することができます。I=(,)とします。

(13)ddtE[f(x,t)]=ddtIf(x,t)fX(x)dx(14)=limh0If(x,t+h)fX(x)dxIf(x,t)fX(x)dxh(15)=limh0If(x,t+h)fX(x)f(x,t)fX(x)hdx(積分の線形性)(16)=Ilimh0f(x,t+h)fX(x)f(x,t)fX(x)hdx(ルベーグの収束定理)(17)=Iddtf(x,t)fX(x)dx(18)=E[ddtf(x,t)]

この期待値と積分の順序交換は統計学では頻出の操作ですので,ぜひおさえておきたいところです。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 式(3)-(6)は、そもそも積分した後の値\int_I f(x)dxはx依存性がありませんので、x微分したら0かと思います。\int_I f(x)dxのxは単なるダミー変数で、どんな記号でも良いです。

    「微分演算と期待値が順序交換可能」という際に、式(13)-(16)でも用いているように、関数形f(x,t)だけが時間依存していて、確率密度f_X(x)[定義されていませんが、式の意味からxの確率密度だと推定]は定常であることが暗に仮定されています。xの確率密度が時間変化するような場合f_X(t,x)についても言及するか、せめて条件として明記した方が良いかと思います。

    もし勘違いのコメントでしたらすみませんが、少しでも記事の質の向上になれば幸いです。

    • 通りすがりの物理学者様

      ご指摘誠にありがとうございます。非常に勉強になります。こちらの記事は,自分が学部生の頃に執筆したものでして,今見返すと議論が乱暴すぎますね…。

      数学的な厳密性を追い求めるとキリがありませんが,間違った解釈を世に広めるのはよくないと思っています。ですので,ご指摘いただいた部分を含め解析学を今一度勉強し直し,改めて記事を推敲します。わざわざコメントをいただき本当にありがとうございます!

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