本稿では,法律および不動産については門外漢である管理人が,宅地建物取引士資格試験に最速最短で合格するための知識を整理してまとめていきます。巷に溢れる語呂合わせについても,本当に必要と考えられる内容に絞ってまとめていきます。
管理人は法学の素人であるため,ロジックの正確性・正当性は無視します。また,暗記を最小限に抑えるため「以上・以下」「未満・より」といった端点の場合分けは無視します。
管理人の引っかかりポイント
- 詐術(ウソ)は救わない。行為能力者であっても取り消せなくなる。
- 「贈与の申し出を拒否」は大損の可能性アリと捉えられるため保佐人の同意が必要。
- お金を貸しただけの人は第三者ではない。
- 制限行為能力者でも代理人となれる。
- 賃借権は時効取得できる。所有権は時効取得できない。
- 詐害行為とは,債務者が債権者を害することを知りながら,自己の財産を減少させる行為や不当に処分したり譲渡したりする行為のこと。
- 相続の権利は知ったときから5年行使しない,または相続開始から20年経った場合に消滅する
- 相続人は遺留分を相続開始前でも放棄できる。相続は放棄できないため注意。
- 債権の譲渡通知は口頭でOK。第三者に対抗するためには確定日付のある証書が必要。
- 債権の譲受人は将来発生する債権を当然に取得する。
- 表題部の変更は基本1月以内に変更申請。ただし表題部所有者の住所変更はそもそも申請不要。
- 表題登記と保存登記を混同しない。表題部が元からない場合はまず表題登記。
- 「単独で登記できるか」は所有権の移転の登記有無がポイント。移転されていたら単独登記できない。
- 表示に関する登記の場合は登記原因の提供は不要。
- 登記法上の代理権は本人の死亡により消滅しない。
- 所有権保存登記は権利部に初めて所有権を登記すること。表題部所有者と確定判決で定められた者しかできない。それくらい「保存登記」には敏感になること。
- 「2分の1」と「過半数」のひっかけに注意。区分所有法の過半数を2分の1とするひっかけがある。
- 公正証書による規約の設定は最初に建物の専有部分を全部所有する者しかできない。途中で専有部分をすべて所有することになった者は設定できない。
- 集会の招集通知は1週間と2月の二種類。前者は伸縮でき,後者は建替決議を目的とした者で伸長のみ可能。
- 賃料には物上代位が可能。転貸賃料には物上代位はできない。
- 被担保債権の範囲を変更する場合,後順位抵当権等の利害関係者の承諾は不要。
- 元本確定前の根抵当権には随伴性がない。債権だけが移譲されて根抵当権はそのままという形。
- 利息が最後の2年間しか優先弁済が受けられないのは抵当権。根抵当権は極度額の範囲内なら何年分でもOK。
- 債務者の意思に反しても弁済できるのは正当な利益を有する第三者。
- 債務不履行による解除でも売買契約では代金の返還と目的物の返還は同時履行の関係となる。
- 売買契約では代金の支払いと所有権移転登記に協力する債務は同時履行の関係となる。
- 連帯債務では他の債務者の債権で相殺することはできないが,拒むことはできる。
- 抵当権は賃借権に設定できない。
- 借地の場合は引き渡しは対抗要件にならない。
- ゴルフ場経営目的の土地賃貸借契約には借地借家法は適用されない。あくまでも建物の所有目的がスコープ。
- 賃借人が転借人に説明しただけでは契約は終了しない。賃貸人から転借人への通知が必要。
制限行為能力者・意思表示
行為とは何か
法律行為の略称で契約のことを指す
法定代理人を分類せよ
親権者と未成年後見人
未成年者の行為の取消権は誰に属するか
本人と法定代理人
成年後見人の成年被後見人に対するアクションで第三者の許可を必要とするものはあるか
ある。
- 成年被後見人が住んでいる建物/敷地の
- 売却/賃貸借/抵当権の設定
を行うには,家庭裁判所の許可が必要である。
住居に関するアクションは流石に家庭裁判所の目を通そうというイメージです。
被保佐人が保佐人の同意を得ずにした契約で取り消せるケースのうち土地建物関連のものを挙げよ
- 土地建物の売買/建物の増改築等の発注
- 5年を超える土地の賃貸借
- 3年を超える建物の賃貸借
制限行為能力者の法定代理人への催告と答えがない場合の効果をまとめよ
契約の相手方 | 催告の相手方 | 効果 |
---|---|---|
未成年者 | 保護者 | 追認 |
成年被後見人 | ||
被保佐人 | ||
被保佐人 | 被保佐人本人 | 取り消し |
催告の答えがない場合の効果は,催告の相手方が「単独で追認できるか」に依存します。保護者のように単独で追認できるケースでは,追認できるのに返答しないということから追認したことになります。被保佐人本人のように単独で追認できないケースでは,そもそも追認できないのに返答しないということから取り消しとみなされます。
制限行為能力者が「自分は行為能力者です」と偽って結んだ契約の扱いを説明せよ
取り消すことができない。後に述べる第三者の善意無過失などとは全く関係なく取り消せなくなる。
制限行為能力者の契約はいつまで取り消せるか
- 行為能力者に戻ってから5年
- 契約を結んでから20年
を経過した場合
制限行為能力者が行為能力者に戻ってから「請求」「履行」「譲渡」を行った場合には,法定追認とみなされて契約を取り消すことができなくなります。
保佐人は法定代理人か
法定代理人ではない。あくまでも保佐人は被保佐人の行為のサポートを行う。ただし,上で述べたような重大な契約については取り消せるようになっている。保佐人に代理権はないということだ。
未成年者の法定代理人には同意権はあるか
ある。法定代理人は未成年の行為の同意をすることができるから,未成年は法定代理人の同意を得て結んだ契約は原則取り消せない。
成年被後見人の法定代理人には同意権はあるか
ない。法定代理人は成年被後見人の行為の同意をすることができないから,成年被後見人は法定代理人の同意を得て結んだ契約でも取り消せる。
日用品の購入等は別で取り消せないです。
保佐人には同意権はあるか
ある。保佐人は被保佐人の行為の同意をすることができるから,被保佐人は保佐人の同意を得て結んだ契約は原則取り消せない。かつ,保佐人はあくまでもサポート役であるから,被保佐人が保佐人の同意を得ずに結んだ契約でも大損する契約でないと取り消せない。
制限行為能力者の行為に対する取り消しは第三者に対しても対抗できるか
第三者が善意の場合はできる
制限行為能力者と同意を得た行為・同意を得ない行為の関係を示せ
取り消せる場合は○,取り消せない場合は×を入れます。
項目 | 未成年者 | 成年被後見人 | 被保佐人 |
---|---|---|---|
同意を得た行為 | × | ○ ※日用品の購入等以外 | × |
同意を得ない行為 | ○ ※権利を得る/義務を免れる以外 | ○ | ○ ※ 大損する契約のみ |
制限行為能力者に権利能力はあるか
ある。権利能力とは,権利や義務の主体となることができる資格のこと。
意思表示
抵当権と詐欺・虚偽表示の関係を説明せよ
利害関係をもったのが詐欺・虚偽表示の前であれば当事者となり,後であれば第三者となる。当事者は第三者とはならないため,意思表示は「詐欺・虚偽表示を一緒に行った」という扱いになる。例えば,Aの土地にBが一番抵当権を設定しており,Cが二番抵当権を有していたとする。しかし,AB間の契約が詐欺・虚偽表示により無効になった場合,Cは当事者に該当するため善意であっても第三者として保護される訳ではなく,二番抵当権のままになってしまう。
動機の錯誤を説明せよ
契約のモチベーションを表明していた場合の錯誤は取り消すことができるが,表明していなかった場合の錯誤は取り消すことができない。
債権者代位権とは何か
自分の債権を守るために債務者の権利を債務者に代わって行使できる権利。したがって,債権者ができることは債務者ができることと同一になる。
虚偽表示と第四者の善意・悪意の関係を説明せよ
第三者 | 第四者 | 当事者と第四者のどちらが勝つか |
---|---|---|
善意 | 善意 | 第四者 |
善意 | 悪意 | 第四者 |
悪意 | 善意 | 第四者 |
悪意 | 悪意 | 当事者 |
代理
制限行為能力者の取り消し主体と代理の取り消し主体の違いを説明せよ
- 制限行為能力者:本人と法定代理人(保佐人)
- 代理:本人のみ
代理の場合は契約の効力が本人に帰属するためです。
顕名しないと何が起きるか
相手方が善意無過失の場合には,代理人自身が契約したことになる
自己契約はなぜ禁止されているか
代理を依頼された者が不当に得をするような契約を結んでしまうため。1億円の家を勝手に1000万円で買ってしまってはいけない。ただし,許諾や追認があれば自己契約することができる。
双方代理はなぜ禁止されているか
代理依頼者両方の利益を求めることができないため。片方の利益を求めると,もう片方は損害を受けることになるため,双方代理は両方の許諾を受ける必要がある。
代理権はいつ消滅するか
本人もしくは代理人が死亡した場合は,問答無用で代理権は消滅する。本人の後見開始が決定した場合でも,代理人は問題なく代理行為を行うことができるため代理権は消滅しない。一方,代理人の後見開始が決定した場合は,代理人は代理行為を行うことができないため代理権は消滅する。破産の場合も同様だが,厄介なのが本人が破産した場合だ。本人が意図して代理権を与えたケース(委任契約による代理)の場合は,破産すると委任契約自体がポシャるため代理権は消滅する。本人が意図せず代理権を与えているケース(法定代理人)の場合は,破産しても代理権は生き続ける。
事由 | 本人(代理権を与える者) | 代理人 |
---|---|---|
死亡 | ○ | ○ |
破産 | ×※ | ○ |
後見開始の決定 | × | ○ |
※について,委任契約による代理の場合は,本人が破産したら委任契約自体がポシャるため代理権は消滅します。ただし,委任による登記申請の代理権は消滅しません。
復代理人を一言で説明せよ
代理人のスペアキー。例えば,代理人が破産手続きの開始を受けると代理人の代理権(マスタキー)は消滅するため,復代理人の代理権(スペアキー)は消滅する。
代理人はいつでも自由に復代理人を選ぶことができるか
委任による代理人の場合は本人の許諾かやむを得ない理由が必要となるが,法定代理人の場合はいつでも自由に選ぶことができる。ただし,法定代理人が復代理人を選んだ場合は法定代理人が原則全責任を負うことになる。
無権代理への追認は無権代理人と相手方のどちらに対して行うか
原則相手方だが,無権代理人に対して追認した後に相手方がその事実を知った場合でも追認の効果が生じる。とにかく相手方が追認を知ることが大切だ。
無権代理人と契約した相手方の保護方法を三つ述べ,相手方の条件をまとめよ
善意無過失 | 善意有過失 | 悪意 | |
---|---|---|---|
催告(返答なければ追認拒絶) | ○ | ○ | ○ |
追認前の取り消し | ○ | ○ | × |
追認前の履行請求/損害賠償請求 | ○ | ×※ | × |
※について,相手方が善意有過失の場合は原則履行請求/損害賠償請求はできませんが,無権代理人が自分に代理権がないことを知っていた場合は,相手方が善意有過失であっても履行請求/損害賠償請求することができます。
表見代理とは何か
本当は代理権がないのに代理権があると相手方に誤解させること。
- 代理権限外の契約をする
- 代理権消滅後に契約する
- 代理権が与えられる前に契約する
の組み合わせにより表見代理となる。いずれの単独および組み合わせのケースにおいても,相手方が善意無過失の場合は契約が有効に成立する。表見代理により契約を余儀なくされた相手方の保護のためである。
表見代理と無権代理の関係を述べよ
表見代理は本質的には無権代理の一種。ゆえに,表見代理により契約を余儀なくされた相手方は,催告・追認前の取り消し・追認前の履行請求/損害賠償請求を行うことができる。この場合の相手方の場合分けは上でみた表の通りである。例えば,代理権消滅後に契約を結んでしまった相手方は,追認前かつ善意無過失であれば履行請求/損害賠償請求を行うことができる。
時効
取得時効の期間を述べよ
- 占有開始時に善意無過失の場合:10年間
- それ以外:20年間
時効と譲渡の関係を説明せよ
- 譲渡が時効完成の前:時効完成した者が勝つ
- 譲渡が時効完成の後:先に登記を得た者が勝つ
時効が完成する前に譲渡していた場合は,時効が完成しさえすれば時効取得者が勝ち,登記の有無は関係ない。譲渡される側にとっては「取得時効が完成してしまった」となる。時効が完成した後に譲渡する場合は,登記がなされていない土地は「誰のものか分からない宙ぶらりんな状態」となっているため,先に登記を得た者が勝つ。
賃借人は所有の意思を表明すれば時効取得できるが,その相続人は時効取得できるか
同じく所有の意思を表明すると同時に事実上の支配を行うことにより,時効取得を完成させることができる
債権の消滅時効の期間を述べよ
- 権利を行使できると知ったときから5年間
- 権利を行使できるときから10年間
債権以外に時効消滅するものはあるか
債権と所有権以外の財産権(地上権・地役権・抵当権など)は時効消滅する。ただし,「権利を行使できると知ったときから5年間」の条件は適用できず,「権利を行使できるときから10年間」のみが適用される。
所有権は時効消滅しないため要注意です。
生命身体の損害による損害賠償請求権の時効消滅を説明せよ
大事な債権であることから,時効消滅の期間は「権利を行使できるときから20年間」という例外が適用される
時効の援用とは何か
事項の利益を受けることを主張すること。「時効完成したので借金チャラにします」と主張すること。
債権者側の口頭催促で時効の更新はできるか
できない。ただし,初回の口頭催告のみ時効の完成は6ヶ月猶予される。
時効の更新には裁判所で勝訴する必要があります。第三者を介さないと時効は更新できないと理解しましょう。
口頭で時効の更新はできないのか
債務者側が承認すれば,たとえ口頭催促であっても時効は更新される
時効が完成した後に債務者が承認しても時効は更新されてしまいます。
相続
相続の原則となるルールを述べよ
- 直系卑属:1/2(→配偶者は1/2)
- 直系尊属:1/3(→配偶者は2/3)
- 兄弟姉妹:1/4(→配偶者は3/4)
遺留分の原則となるルールを述べよ
- 兄弟姉妹:なし
- 直系尊属だけが相続人:1/3
- それ以外:1/2
「それ以外」とは,例えば配偶者と子二人の場合は3人で1/2をシェアする形になる。具体的には,配偶者に1/4,子に1/8ずつ遺留分が発生します。
代襲相続となる理由を三つ挙げよ
- 死亡
- 欠格
- 廃除
相続を放棄すると代襲相続できない点に注意。相続を放棄した場合は「その者はいなかった」とみなされるため,放棄した者の子もいなかったとみなされ,代襲相続することができない。
遺産分割協議とは何か
誰が何をもらうかを決める相続人同士の話し合い。決定は相続人全員の同意が必要だが,結論が出なければ家庭裁判所に分割の決定を任せることができる。
代襲相続が可能なケースを説明せよ
- 直系卑属はいくらでも可能
- 兄弟姉妹の子は可能だが,孫から下は不可能
親は自由に相続の廃除を行うことができるか
虐待等の理由がないと廃除できない。つまり勝手に「遺産は長男だけに相続する」という指定はできないということ。
相続の限定承認とは何か
被相続人が残した借金は遺産だけから返済し,遺産では返済し切れない部分については返済しない相続方法のこと
限定承認は相続人全員の承認が必要となります。
相続の承認に期限はあるか
相続開始を知ってから3ヶ月以内
3ヶ月を過ぎると単純承認とみなされます。
被相続人は遺産分割の禁止を行うことができるか
5年間以内であれば遺産分割を禁止できる
未成年者は遺言できるか
15歳以上であれば,法定代理人の同意なしに遺言できる
成年被後見人は遺言できるか
判断力が回復し,医師二人以上の立会いがあれば,成年後見人の同意なしに遺言できる
自筆証書遺言はプリントアウトできるか
できない。自書でなければならない。ただし,財産目録であればプリントアウトした上で全てのページに署名押印すれば有効になる。
自筆証書遺言の検認を怠ると何が起きるか
特に何も起きない。遺言の効力は発生する。
被相続人の生前に相続人は相続を放棄することはできるか。
放棄できない
被相続人の生前に相続人は遺留分を放棄することはできるか。
家庭裁判所の許可が下りれば可能
物権の変動・危険負担・債権譲渡
所有権が移転する条件を述べよ
口約束の意思表示さえあればよい
ただし登記は共同で行います。したがって,BがAの土地を勝手にCに打った場合,Bは「Aから土地の所有権を取得してBに登記を移転させる義務」が発生し,この義務を果たさない場合は債務不履行となります。
物権と債権の法学的な違いを述べよ
- 物権:法律で定められている
- 債権:当事者の意思で自由に定められる
第三者の自己名義による登記を黙認していた場合,何が起きるか
虚偽表示とみなされる
AのBに対する債権をCに譲渡する場合,債権者・譲渡人・債務者・譲受人は誰か
- 債権者/譲渡人:A
- 債務者:B
- 譲受人:C
AのBに対する債権をCに譲渡する場合,CがBに譲渡を対抗する条件を述べよ
- AからBに通知した
- BからAに承諾した
- BからCに承諾した
通知や承諾は口頭でもよい。
AのBに対する債権をCに譲渡する場合,譲渡を禁止する特約が無効になる条件を述べよ
Cが譲渡制限の特約について悪意,もしくは重過失である場合は,BはCからの支払い要求を拒否することができる。
二重譲渡で対抗要件を備えるための判断条件を述べよ
確定日付のある証書が到達した日時
同時であれば二人の譲受人はいずれも対抗要件を備えます。債務者側がどちらに弁済すればよいか決めるのです。
不動産登記法
表題部の地目・地積に変更があった場合はいつまでに変更を申請する必要があるか
1ヶ月以内
新築時の初回表題登記も1ヶ月以内,滅失時の申請も1ヶ月以内です。
建物の床面積は中心線と内側線のどちらが用いられるか
中心線
合筆ができない条件を述べよ
- 所有権の登記がある土地とない土地の合筆
- 地目が異なる土地の合筆
抵当権は同一であれば合併(合筆)できる。
物権の変動時は登記をいつまでにしなければならないか
原則申請義務はない。ただし,相続の場合は所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記の申請を行う必要がある。
1ヶ月以内は表題部の話。今回は権利部の話。表題部のみの登記記録も多数存在するということです。
確定判決と給付判決の違いを説明せよ
- 確定判決:所有権が所属先を決定する判決
- 給付判決:登記手続きを命じる判決
所有権保存登記を行うことができる者を述べよ
所有権保存登記は初めて所有権の登記を行うこと。したがって,単独での登記を考える。その上で,
- 表題部所有者
- 確定判決 or 給付判決で認められた者
AがBにA所有の新築建物を売買した場合,B名義の所有権保存登記を行えるのは表題部所有者のAであり,仮にBが確定判決で認められていた場合はBも所有権保存登記を行える。Aが死亡してCに相続された場合でも,Bが確定判決で認められていなければ,CしかB名義の所有権保存登記は行えない。Cの承諾を得てもダメ。
売買契約等に基づく登記の場合は,確定判決だけでは単独で登記することはできない点に注意しましょう。AからBへの売買契約でAが登記を渋っている場合に,Aに給付判決が出た場合はBは単独で登記することができます。
表題部と権利部を職権で登記できるケースとできないケースを説明せよ
表題部は原則職権で登記でき,権利部は原則職権で登記できない。表題部は公的な情報であり,権利部は私的な情報であるから。ただし,表題部でも建物の分割・合併は登記できず,権利部でも操作ミスの場合は登記できることになっている。
前者は「表題部でも建物の話は私的である」というイメージ,後者は「さすがにミスの例外は修正できるようにしておく」というイメージで覚えましょう。
登記申請の主体者の原則を述べよ
当事者双方が共同して行う必要がある
登記は口頭で行うことができるか
絶対できない
登記識別情報とは何か
登記を行う際のID。申請者の認証に利用する。
登記識別情報は必ず通知されるか
申請者が通知を希望しない場合は通知されない。ただし,その場合は登記義務者に事前通知を行って登記の正当性を確認する。特に所有権の登記については,登記義務者が住所変更登記をしている場合には,前の住所にも事前通知を行う。
共有・区分所有法
共有物への行為の種別とその行為を行うための条件を述べよ
- 保存行為(雨漏り修正等):単独でできる
- 管理行為(管理者の選任等):持分(≠頭数)の過半数が必要
- 変更行為(増改築等):全員の同意が必要
持分を頭数と誤解しないように注意してください。お金をたくさん出している人が重み付けされて偉くなる世界です。
不分割特約を説明せよ
共有物の分割を禁ずる特約であり,有効期間は最長5年間である
遺産分割禁止特約と不分割特約を比較せよ
いずれも有効期間は最長5年間であるが,不分割特約は更新可能
遺産の放棄と共有持分の放棄を比較せよ
遺産の場合は相続人や特別縁故者が不在の場合は金庫に帰属するが,共有持分の場合は他の共有者に帰属する
区分所有法が適用される使用目的を述べよ
使用目的によらず適用される
占有部分の床面積は中心線と内側線のどちらで測定されるか
内側線
壁心を思い出すとよいでしょう。壁心は中心線をもとに算出する床面積のことを指しているため,ポータルサイト等で壁芯と書かれていると「登記よりも多く見積もられているな」と警戒しなくてはならなかったです。この感覚を思い出すと,占有部分の床面積は壁を除いて算出するために内側線を基準にすると理解したいです。区分所有建物以外の建物は中心線を基準とします。
規約共用部分と法定共有部分の登記における違いを説明せよ
- 規約共用部分:表題部に登記する
- 法定共有部分:登記できない
管理人室を登記するのは自然ですが,階段やエレベータを登記するのは意味不明ですね。
敷地利用権とは何か
敷地における占有部分の所有権・地上権・賃借権など
敷地利用権と敷地権の違いを説明せよ
登記された敷地利用権を敷地権という。敷地権は
- 所有権
- 地上権
- 賃借権
の種類を押さえておけばよいでしょう。
権利部で「この土地は敷地権の目的となりました」という旨の登記を行うことで,占有部分と敷地権が一心同体となります。戸建てとは異なり,マンションの場合は土地と建物がセットで取引されるということです。
区分所有建物に対する行為とその閾値をまとめよ
閾値 | 規約による頭数の変更 | 規約による議決権の変更 | |
---|---|---|---|
集会の招集 | 1/5以上 | ○ | ○ |
重大な変更 | 3/4以上 | ○ ※1/2まで減らせる | × |
規約の設定/変更/廃止 違反者への措置(後述) 管理組合の法人化 大規模滅失の復旧 | 3/4以上 | × | × |
建替え | 4/5以上 | × | × |
「議決権」は床面積に応じたパワーバランスのことを指します。また,小規模な変更であれば過半数でよく,「違反者への措置」を行うには別途裁判が必要になります。
「違反者への措置」のうち単独でできるもの,過半数を必要とするもの,3/4を必要とする物を述べよ
- 単独:停止請求(楽器の音がうるさいから控えてくれとお願いすること)
- 過半数:停止訴求訴訟(裁判を起こすこと)
- 3/4以上:使用禁止・競売・引き渡し請求訴訟
「区分所有者の定数」とは何を指すか
頭数のことを指す。議決権ではないため注意。
集会招集通知はいつまでに出す必要があるか
- 通常:集会の日の1週間前
- 建替え決議が目的:集会の日の2ヶ月前
規約で延長も短縮も可能。区分所有者全員の同意があるときは通知せずに集会を開くことができる。
期日 | 規約による延長 | 規約による短縮 | |
---|---|---|---|
通常 | 集会の日の1週間前 | ○ | ○ |
建替え決議が目的 | 集会の日の2ヶ月前 | ○ | × |
表題部の所有者から所有権を取得したものは自己名義で所有権保存登記できるか
区分所有建物の場合に,敷地権の登録名義人の許諾を得れば登記できる。つまりマンション購入者は自己名義で所有権保存登記できるということ。
区分所有建物でない場合はできないはずです。
抵当権
抵当権の設定はどのように行えばよいか
口約束だけで成立する
土地と建物以外に抵当権を設定できる対象を述べよ
- 地上権
- 永小作権(他人の土地で耕作または牧畜をすることができるという権利)
賃借権には設定できない点に注意してください。
抵当権の利息を説明せよ
- 他の債権者がいる場合:最後の2年分のみ弁済を受けられる
- 他の債権者がいない場合:利息全額の弁済を受けられる
抵当権設定者と転抵当権者を説明せよ
- 抵当権設定者:借金をする主体。財産を差し出す者
- 転抵当権者:抵当権者のうち順位を変更しようとしている者
抵当権の順位変更において,抵当権設定者と転抵当権者の許諾は必要か
- 抵当権設定者:利害関係者ではないため不要
- 転抵当権者:利害関係者のため必要
法定地上権とは何か
土地と建物を持つ者が土地だけに抵当権を設定し土地が競売で売買された場合に,土地の上の建物に対して自動的に取得できる地上権のこと。仮に自動的に取得できなければ,建物を壊せと競売で土地を買った者から主張されてしまう。
法定地上権の条件を述べよ
- 抵当権設定時に土地の上に建物が存在していたこと
- 抵当権設定時に土地と建物が同一人物により所有されていたこと
登記の有無は関係ありません。
債務不履行・損害賠償・解除
履行遅滞中の不可抗力の扱いを説明せよ
履行不能とみなされる。なお,履行不能とは「履行できないから仕方ないよね」ではなく「履行者に帰責事由があるものとみなされる」ことに注意する。タバコの火の不始末と同罪だ。
債務者に帰責事由がない場合の債務不履行の場合は契約の解除はできるか
できる
損害賠償請求はできません。
金銭債務の特徴を挙げよ
- 履行不能がない
- 不可抗力による遅滞がない(たとえ銀行がメンテナンスしていても)
- 実害にかかわらず最大年3%の利率で損害賠償請求ができる
「履行しないなら自動解除」や「この条件が満たされれば自動解除」という催告は有効か
有効
買主が二人共同の場合,片方が解除権を放棄すると何が起きるか
もう片方の買主からも解除権が放棄される
手付放棄と手付倍返しが有効になるタイミングを説明せよ
- 手付放棄:口頭でOK
- 手付倍返し:現実(実際のお金)の提供が必要
手付金を返すのは基本できるはずで,倍額の場合はできない可能性もあるためと理解しましょう。
買主が中間金を支払った場合,買主側と売主側の手付金による解除はどうなるか
- 買主:売主がまだ履行していない場合は手付放棄により解除可能
- 売主:中間金の支払いが履行の着手に相当するため手付倍返しをしても解除できない
「いつでもXX」という問題が出題されやすいです。相手方が履行着手している場合は解除できないため「いつでもXX」は誤っています。
契約不適合の場合の売主の担保責任
契約不適合の場合に売主の担保責任を追求する際,催告は必要か
代金減額請求の場合は必要
契約不適合の場合に売主の担保責任を追求する際,期間制限はあるか
種類または品質に関する不適合である場合,買主が不適合を知ったときから1年以内に売主に通知しないと担保責任を追求することはできない
数量と権利については期間制限はありません。数量の不適合はすぐにでも検知できるはずで,1年という期間を定める必要がありません。逆に,権利の不適合は発見が容易ではないため契約ごとに柔軟な対応を求めています。
売主側の担保責任を負わない特例は有効か
有効
ただし,売主が知りながら告げなかった事実については売主は責任を逃れることはできません。これは通知についても同じ考えができます。種類または品質に不適合があったことを知っていたケース,および重大な過失により知らなかったケースは通知をしなかった場合でも,責任の追求が可能になります。
連帯債務・保証債務
連帯債務者の一人による相殺を説明せよ
ABCの三人が連帯してDに9000円の連帯債務を有しているとする。AがDに対して9000円の債権を有している場合,AはDへの債務と相殺することができ,BとCに3000円ずつ求償することができる。一方,Aが自主的に相殺しない場合は,BとCはDに対して「Aの負担部分以外の債務」を有することになる。具体的には,BとCはDに対して6000円だけ支払えばOKで,Aの負担部分である3000円の支払いは拒否することができる。これはAが相殺しようと思えば相殺できるDへの債権を有しているからである。
連帯債務者の一人に対する免除を説明せよ
ABCの三人が連帯してDに9000円の連帯債務を有しているとする。DがAの債務を免除した場合,残りのBとCで9000円の連帯責務を有することになる。6000円ではなく免除されたAの尻拭い分である3000円も加算される点がポイントだ。
これは一人に対する時効・無効・取り消しについても同様です。仮に6000円のままだとすると,免除・時効・無効・取り消しの効果がBとCに及んでいるとみなされるためです。
保証人になる契約(保証契約)はどのように行われるか
書面または電磁的記録で行われる。口頭はダメ。
保証契約の後に債務額が増えた場合,保証人が返済すべき額はどのようになるか
変わらない
保証人は「まず主たる債務者を取り立ててくれ」と抗弁することはできるか
できる。執行(返済のために売却すること)の容易な財産や債権がある場合には,保証人は抗弁することができる。
執行の容易な財産の中には不動産は含まれません。
保証人に対する時効請求や保証人からの時効承認は有効か
有効ではない。あくまでも債務者に対する請求や債務者からの更新が有効であり,その効果が保証人に及ぶという構造である。
債権者が債権を譲渡するときには誰に何を行う必要があるか
- 債権者(譲渡人)から主たる債務者に通知
- 主たる債務者から債権者(譲渡人)に承諾した
- 主たる債務者から譲受人に承諾した
を行う必要があり,口頭でもOK。これは債権譲渡の条件と同一だ。
保証人が行為能力を失った場合どうなるか
債権者は変更請求できない
債権者は保証人を変更することはできるか
債権者が保証人を指定した場合はできないが,債権者は指定せずに債務者が指定した場合は弁済資力を失った場合に限り変更請求可能となる
債権者からすると行為能力を失ったとしても払ってもらうのは当然です。ただし弁済能力がなくなった場合には,すぐにでも別の保証人を立てて欲しいと思うのも当然です。
保証人と第三取得者で抵当権の扱いを説明せよ
保証人の方が抵当権が付いた土地の第三取得者よりも強い。具体的には,保証人が債権者に返済すると抵当権を第三取得者に対して実行(抵当権付きの土地を買ったのだから義務は果たしてもらうこと)できるが,第三取得者は抵当権を消滅させたとしても保証人に対して請求(抵当権消滅分の弁済をお願い)することはできない。
保証人と連帯保証人の主な違いは何か
- 催告の抗弁権(まず債務者を取り立てろ)と検索の抗弁権(これ売れば返済できるだろ)がない
- 分別の利益(複数の保証人で等しく折半すること)がない
連帯保証人の一人に対する時効の請求や承認の効果は他の連帯保証人に及ぶか
及ばない
通常の保証と同様に主たる債務者への請求や主たる債務者の承認は連帯保証人にも効果が及びます。
賃貸借
有益費とは何か
- 賃借人が建物を改良し
- 建物の便利さと価値を客観的に高めるために支出され
- 改良された結果,建物と一体化して取り外しがきかない
ものを指す。壁紙が汚れてきたときに張り替える費用などが該当する。
民法における賃貸借の期間上限は何年か
最大50年
民法において解約の申入れと賃貸借の終了時期を説明せよ
- 土地:解約申入れ後,1年経過すると終了
- 建物:解約申入れ後,3ヶ月経過すると終了
貸主が借主に損害賠償請求する際の期限はあるか
賃貸借契約終了時から1年以内
借地借家法
民法と借地借家法の違いを説明せよ
- 民法:貸主と借主は対等
- 借地借家法:徹底的に借主を保護する
借地借家法はいつ施行されたか
平成4年8月1日
以前は借地法と借家法は別々の法律でした
借地権の存続期間は何年か
最低30年
民法では賃借権の存続期間は最大50年であったことも併せて押さえましょう
借地権の更新では存続期間はどの程度延長されるか
- 第一回目:更新の日から20年
- 第二回目:更新の日から10年
「地主は立退料さえ支払えば更新を阻止できる」という特約は有効か
無効。借地借家法は徹底的に借主を保護するため,借主の一方的な請求更新やいすわり更新がまかり通ることになっている。地主が反抗するためには「正当事由」に基づいて遅滞なく意義を述べる必要がある。正当事由の正当さは総合的に判断されるが,その要素の一つに立退料の支払いがある。ただし,立退料はあくまでも正当事由の一つの要素でしかないため,立退料を支払ったからといって地主が借主を追い払うことができるとは限らない点に注意する。
いすわり更新の阻止について民法と借地借家法の違いを述べよ
- 民法:建物がない場合に適用される。正当事由は不要。
- 借地借家法:建物がある場合に適用される。正当事由が必要。
民法は貸主と借主を対等に扱うため相対的に貸主に対してゆるく,借地借家法は徹底的に借主を保護します
借地権の存続期間満了前に建物を再築(≠増築)すると,借地権の存続期間はどうなるか
借地権の存続期間を超えて存続するような建物を再築する場合,
- 地主の承諾日
- 建物の再築日
のどちらか早い方から20年間存続する(借主を保護するため最低でも20年間は住まわせてあげる)
建物を一方的に再築して地主に通知し,2ヶ月以内に異義が述べられないと地主が許諾したものとみなすことができます。借主保護を徹底していますね。
借地権の更新後の期間に建物を再築(≠増築)すると,借地権は消滅させられるか
無断で建物を再築した場合は,地主側から借地権消滅の申入れができる。更新後だけ可能な点に注意。
借地権の更新方法と存続期間をまとめよ
存続期間 | |
---|---|
合意更新 | 1回目は20年,2回目以降は10年 ※当事者によりもっと長い期間を定められる |
請求更新 | 1回目は20年,2回目以降は10年 |
いすわり更新 | 1回目は20年,2回目以降は10年 |
建て替え更新 | 20年 |
建物が滅失した場合における借地権の消滅方法を述べよ
借地権更新前に建物が滅失した場合は借地権は消滅させられない。借地権更新後に建物が滅失した場合は,借地権者側から一方的に借地権の消滅を申入れることができ,3ヶ月経過すると借地権は消滅する。
賃料の増額・減額の裁判中に賃料にかかる利息はどの程度か
年10%
建物買取請求権と裁判所申立てを説明せよ
いずれも借地権の譲渡・転貸の話であり,借地権のうち
- 借地上の建物を譲渡する場合
- 借地権自体を譲渡転貸する場合
に関係する権利である。これらのケースでは地主の承諾が必要だが,地主が承諾しない場合に
- 地主に対して建物を無理やり買い取らせる(=建物買取請求権)
- 裁判所経由で地主に承諾させる(=裁判所申立て)
を行うことができる。
借地権上の建物を賃貸する場合は地主の許可は不要ですし,そもそも借地権が地上権(物権)の場合も地主の許可は不要です。また,建物買取請求権は借地権更新の際に地主から遅滞なく異議が述べられた場合に行使することもできます。「更新してくれないなら建物買ってくれ」がまかり通るのです。
借地権更新についてあまりにも借主が優遇され過ぎているが,貸主を保護する仕組みはないのか
ある。そもそも更新させない借地権が三種類存在する。
存続期間 | 居住用/非居住用 | 契約媒体 | |
---|---|---|---|
事業用定期借地権 | 10年〜50年 | 非居住用 | 公正証書 |
定期借地権 | 50年〜 | 居住用/非居住用 | 書面/電磁的記録 |
建物譲渡特約付借地権 | 30年〜 | 居住用/非居住用 | 口頭でOK |
通常の借地権 | 30年〜 | 居住用/非居住用 | 口頭でOK |
建物賃貸借の存続期間を述べよ
デフォルトでは期間の定めはなく,契約で定めることになる。ただし,1年未満の期間が指定された場合はデフォルトの「定めのない期間」となる。
建物賃貸借を更新する際のデフォルトの挙動を説明せよ
自動更新され,更新後の期間は「定めのない期間」となる
賃貸人と賃借人の解約時の制約についてまとめよ
いつまでに通知して | いつ解約できる | 正当事由 | |
---|---|---|---|
賃貸人 | 1年前〜6ヶ月前 | 申入れ後6ヶ月経過後 | 必要 |
賃借人 | 1年前〜6ヶ月前 | 申入れ後3ヶ月経過後 | 不要 |
債務不履行の場合には立退までに猶予は与えられるか
与えられない
転貸について借地と借家で違いはあるか
ある。借家では裁判所に申し立てたとしても無理やり転貸することはできない。
借地権の満了時は借地権上の建物の賃借人に対し何らかの猶予は与えられるか
最高で1年まで明渡しを裁判所から猶予してもらえる
愛人が事実上の同居者が死亡して相続人がいない場合に借地権を引き継ぎたくない場合はどうすればよいか
賃借人の死亡を知ってから1ヶ月以内に引き継ぎを拒否すればよい
「愛人に賃借権は承継できない」という特約は有効か
有効。借地借家法はあくまでも借主を保護するものであり,借主の愛人はスコープ外である。
「造作物を貸主に買い取らせることはできない」という特約は有効か
有効。この特約が無効になる場合,貸主が造作物の作成に同意しなくなる可能性が高くなり,結果として借主に悪影響を及ぼす可能性が高いからだ。
建物買取請求権と造作買取請求権の主な違いを説明せよ
- 建物買取請求権:貸主が代金を支払うまで,建物の明渡しを拒否することができる
- 造作買取請求権:貸主が代金を支払わない場合でも,建物の明渡しは拒否できない
上で見た通り,造作買取請求権は「造作物を貸主に買い取らせることはできない」という貸主に不利な特約であっても有効になるという違いもあります。
定期借家の契約媒体を述べよ
定期借地権と同様に書面/電磁的記録となる
定期借家で書面を交付して説明しなかった場合,何が起きるか
「更新がない」という特約は無効になり,通常の借家契約とみなされる。
定期借家の終了方法を説明せよ
貸主側は期間満了の1年前〜6ヶ月前までに借主に期間満了の通知を行う必要がある。
1年前〜6ヶ月前を過ぎてしまった場合でも,通知の日から6ヶ月経過後であれば契約を終了できます。
借主は定期借家を解約できないのか
- 居住用
- 床面積が200㎡未満
- 転勤等のやむを得ない事情
の全てを満たす場合に解約を申入れられ,申入れ後1ヶ月を経過すると解約が終了する。
定期借家で貸主に不利な特約を有効にする例外はあるか
ある。「賃料の減額請求はできない」という特約が有効になる。
問題演習で引っかかったポイント
地上権・地役権・借地権・賃借権をそれぞれ簡単に説明せよ
- 地上権:他人の土地を利用して建物などを所有する権利
- 地役権:自分の土地の利便性を向上させるために他人の土地を利用する権利
- 借地権:地主の承諾を得て間接的に土地を支配する権利
- 賃借権:借地権のうち建物を所有することを目的とする権利
地上権と借地権の違いを簡単に説明せよ
- 地上権:物権。全ての人に対して権利を主張できる。
- 借地権:債権。特定の手続きをしないと権利を主張できない。
地役権は物権,賃借権は債権となります。
借地権を大きく二つに分類せよ
- 建物を所有するという目的+地上権(物権)
- 建物を所有するという目的+土地賃借権(債権)
地上権と賃借権で抵当権・譲渡・登記の違いをまとめよ
地上権 | 賃借権 | |
---|---|---|
抵当権設定 | ○ | × |
地主承諾なしの譲渡 | ○ | × |
登記 | ○ | ○ |
土地と建物を有する者が土地に抵当権を設定した場合,両方を一括して競売できるか
できない。両方を一括して競売できるのは,更地に抵当権を設定した後に建物を建てた場合のみ。
抵当権が設定された建物を賃借した人は競売されると直ちに建物を明け渡す必要があるか
6ヶ月間猶予してもらえる
土地の場合は猶予してもらえないため注意しましょう。別に住んでいる訳ではないため。
抵当権消滅請求とは何か
抵当権が設定された土地建物を取得する者が,抵当権者に対してお金を払う代わりに抵当権の消滅をお願いできる権利。抵当権者は提示金額が安いと思えば2ヶ月以内に競売にかけることができる。
2ヶ月を超えてしまうと許諾したものとみなされてしまいます。
代価弁済とは何か
抵当権消滅請求をされるくらいなら,土地建物の売買代金を抵当権者に払ってもらえれば残りの借金については無担保債権としてしまえばよいという仕組み。
抵当権の時効消滅は誰でも主張できるか
第三取得者と後順位抵当権者のみ主張できる。債務者や抵当権設定者まで主張を許していたら甘やかしすぎ。
物上代位の注意点を述べよ
物上代位を及ばせるお金のやり取りが完了する前に差し押さえる必要がある
根抵当権の元本確定期日の変更には後順位抵当権者など利害関係者の許諾は必要か
必要ない
他にも被担保債権の範囲(範囲が正式名称ですが種類のイメージでOK)の変更や債務者の変更にも利害関係者の許諾は不要です。とにかく利害関係者は極度額だけに興味があります。
根抵当権の極度額を変更するには後順位抵当権者など利害関係者の許諾は必要か
必要
とにかく利害関係者は極度額だけに興味があります。
根抵当権の元本確定後に極度額は変更できるか
できる
自己振出の小切手と銀行振出の小切手の違いを説明せよ
自己振り出しは信頼度が低く,銀行振り出しは信頼度が高い。したがって,当然だが債務履行時には自己振り出しの小切手は無効となる。ただし,銀行振り出しの小切手は有効だ。
相殺に期限や条件を付けることはできるか
できない。相殺適状(どちらからでも相殺できる状態)に遡って相殺の効力が生じるため。
不正行為による損害賠償の請求権は時効によって消滅するか
損害と加害者を知ったときから
- デフォルトで3年間
- 生命または身体を害する不法行為の場合は5年間
行使しないとき,または不法行為のときから20年間経過すると時効消滅する
債権者代位権は債務者の一部の権利を行使できる仕組みだが,誰名義で行使するのか
債権者名義。あくまでも「代位」であるため,代理人とは別の扱いとなる。
空き家等の特例を適用できる物件の金額条件を述べよ
400万円以下の物件であること
保証委任契約とは何か
銀行等の金融機関が手付金等保全措置を行ってくれる形式のこと
保証保険契約とは何か
保険事業者が手付金等保全措置を行ってくれる形式のこと
手付金等寄託契約とは何か
指定保管機関が手付金等保全措置を行ってくれる形式のこと
保全措置が必要となる金額を超えているのに保全措置が不要となるケースを述べよ
買主が登記したケース
割賦販売で業者が素人から受け取れる代金と障害賠償および違約金の上限をそれぞれ説明せよ
- 割賦販売:代金の30%
- 障害賠償および違約金:代金の20%
業者間の取引には適用されません
手付金の分割払いは適法か
違法。業者から素人に手付金を貸し付けることに相当するため。
相手が業者の場合は重要事項交付は必要か
必要。説明が不要なだけ。
定めがない場合でも「なし」と記載する必要がある37条書面の項目を一つ述べよ
移転登記の申請時期
聴聞と弁明の違いを説明せよ
- 聴聞:言い分や反論を口頭で伝えるための手続き
- 弁明:聴聞を簡略化させた書面による手続き
例えば免許権者が業者に監督処分をしようとするときは,公開の場で聴聞する必要があります。弁明では足りません。他にも,国土交通大臣が業者に対して監督処分するときは,内閣総理大臣と協議する必要があります。通知では足りません。
業者と宅建士に対する監督処分と公示の必要性をまとめよ
処分種別 | 公示 | |
---|---|---|
業者 | 指示処分 | × |
業務停止処分 | ○ | |
免許取消し処分 | ○ | |
宅建士 | 指示処分 | × |
業務停止処分 | × | |
免許取消し処分 | × |
懲役が課される可能性のある行為を列挙せよ
- 手付貸与
- 誇大広告
- 営業保証金の未供託
- 登記・引き渡し・代金の不当遅延
逆に言うとこれら以外は罰金だけで済むものが多いです。
住宅販売瑕疵担保保証金の額を定める合計個数の算定時に2戸を1戸と数えられる床面積の閾値を述べよ
55㎡
住宅販売瑕疵担保保証金の額はいくらか
最初の1戸は2000万円,それ以降のロジックは覚えなくてもよい。
住宅販売瑕疵担保保証金で免許権者に供託状況を届け出る必要がある期間を述べよ
基準日(3月31日)から3週間
住宅販売瑕疵担保保証金を供託する代わりに入る保険の条件を述べよ
- 保険金額が2000万円以上であること
- 保険期間が10年以上であること
住宅販売瑕疵担保保証金で住宅を販売できなくなる条件を述べよ
- 保証金を供託しない
- 保険に入らない
- 基準日(3月31日)から3週間以内に免許権者への供託の届出をしない
のいずれかで,基準日(3月31日)から50日経過した場合
被保佐人が保佐人の同意なしに結んだ賃貸借契約を取り消せる条件を述べよ
- 3年を超える建物の賃貸借契約であること
- 5年を超える土地の賃貸借契約であること
被補助人を簡単に説明せよ
家庭裁判所の裁判によって決められた一定の法律行為を行うときだけ補助人の同意が必要となる制限行為能力者。非制限行為能力者に一番近い制限行為能力者のイメージ。
後順位抵当権者は先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用することはできるか
できない。「先順位抵当権者の時効くらい援用させてくれよ」という直感と反するが,それだけ抵当権は先に設定した者が偉いという世界観なのだろう。
地役権は時効取得できるか
できる
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分はどの程度か
父母の双方を同じくする兄弟姉妹の1/2。例えば,3000万円の財産を有する相続人の両親も配偶者も死亡している場合,相続人の兄弟姉妹のうち父母の双方を同じくする者の相続分が2000万円,一方のみを同じくする者の相続分が1000万円となる。
共同相続人のうち誰かが相続を放棄すると限定承認することはできないか
できる。放棄した者以外の共同相続人全員で限定承認できる。
兄弟姉妹に遺留分はあるか
ない
賃料や地代は登記事項となるか
賃借権の賃料や地上権の地代は登記事項となるが,地役権の地代は登記事項とならない
抵当権設定には登記は必要か
必要ない。意思表示(口約束)だけで設定できる。ただし,抵当権を第三者に主張するためには登記が必要。
抵当権の効力が及ばない対象の例を挙げよ
抵当権設定後に備えられた従物(畳など)
「物上代位性は抵当権・先取特権・質権にはあるが留置権にはない」と併せて押さえましょう。
手付金による解除の場合,中間金は返ってくるか
返ってくる
「一定の条件を満たしたら契約が解除される」という特約は有効か
有効
借地権と借家権で譲渡および転貸について裁判所から承諾に代わる許可をもらえるのはどちらか
借地権。借家権の場合は裁判所に泣きつくことはできない。
借地権者の請求更新といすわり更新はどのような場合に有効か
建物がある場合
建物賃貸借で明示的な更新を行わなかった場合の更新後の契約期間はどうなるか
期間の定めのない賃貸借となる。賃料などと混同して期間も同一となると誤解しないように。
定期建物賃貸借契約の契約期間は通常の契約書の中に記載すればよいか
別個独立の書面である必要がある
袋地の所有者は公道に至るための通行権を合意なく持つことができるか
できる。明らかに「そこを通らなきゃ公道に出られないよね」という状況であれば,たとえ登記がなくとも自動的に袋地の所有者に通行権が付与される。通行地役権の場合は合意が必要なので「なぜわざわざ通行地役権という仕組みが存在するのか」と疑問に思うが,「そこを通らなきゃ公道に出られないよね」が明らかでないケースなど柔軟性の高い権利を定義しておいた方がよいという思想なのだろう。
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