本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
次元定理と像・核
線形写像$f:~V\rarr W$の次元について,次の関係が成り立つ。
\begin{align}
\dim V &= \dim(\Im f) + \dim(\Ker f)
\end{align}
\dim V &= \dim(\Im f) + \dim(\Ker f)
\end{align}
この関係を次元定理と呼びます。$\dim$は行列の階数を表します。
具体例
線形写像$f:~\mR^{3}\longrarr\mR^{2}$を表す行列が
\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
2 & -1 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
2 & -1 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}
のとき,像$\Im f$と核$\Ker f$の次元および$1$組の基底を求めよ。
解答
$A$を行基本変形すると,
\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
2 & -1 & 0
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
0 & -1 & -2
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
0 & 1 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
2 & -1 & 0
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
0 & -1 & -2
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 1\\
0 & 1 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
となり,$\dim(\Im f)=2$が得られ,次元定理により$\dim(\Ker f)=3-2=1$となります。また,$A$の行基本変形の過程から,$\Im f$の基底として$\left<(1,2),(0,-1)\right>$が得られます。
$\Ker f$の基底として$\left<(1,2)\right>$としないように注意してください。$\Ker f$は$A\vx=\vzero$を解きます。
$\vx=(x_{1},x_{2},x_{3})$とおくと,$A\vx=\vzero$は
\begin{cases}
x_{1}+x_{3} = 0\\[0.7em]
x_{2}+2x_{3} = 0
\end{cases}
となるため,$x_{3}=t$とおくと
\begin{align}
\begin{pmatrix}
x_{1}\\
x_{2}\\
x_{3}
\end{pmatrix}
&= t
\begin{pmatrix}
-1\\
-2\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}
\begin{pmatrix}
x_{1}\\
x_{2}\\
x_{3}
\end{pmatrix}
&= t
\begin{pmatrix}
-1\\
-2\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}
が得られます。したがって,
\begin{align}
\Ker f &=
\left\{
t(-1,-2,1)^{T}|t\in\mR
\right\}
\end{align}
\Ker f &=
\left\{
t(-1,-2,1)^{T}|t\in\mR
\right\}
\end{align}
となり,$\Ker f$の基底として$\left<(-1,-2,1)\right>$が得られます。
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