本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
二項定理と微分積分
二項定理
\begin{align}
(1+x)^{n} &= \sum_{k=1}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k}
\end{align}
(1+x)^{n} &= \sum_{k=1}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k}
\end{align}
において,両辺を微分もしくは積分することにより与えられた式と同じ形を作る。
例題1
次の値を$n$を用いて表しなさい。
\begin{align}
\sum_{k=0}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k}
\end{align}
\sum_{k=0}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k}
\end{align}
二項定理より
\begin{align}
(1+x)^{n} &= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k}\label{二項定理}\\[0.7em]
&= {}_{n}C_{0} + {}_{n}C_{1}x + {}_{n}C_{2}x^{2} + \sum_{k=3}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k-3}
\end{align}
(1+x)^{n} &= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k}\label{二項定理}\\[0.7em]
&= {}_{n}C_{0} + {}_{n}C_{1}x + {}_{n}C_{2}x^{2} + \sum_{k=3}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k-3}
\end{align}
が成り立ちます。両辺を$x$で$3$階微分することにより,
\begin{align}
n(n-1)(n-2)(1+x)^{n-3} &= \sum_{k=3}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k}x^{k-3}\\[0.7em]
&= \sum_{k=0}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k}x^{k-3}
\end{align}
n(n-1)(n-2)(1+x)^{n-3} &= \sum_{k=3}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k}x^{k-3}\\[0.7em]
&= \sum_{k=0}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k}x^{k-3}
\end{align}
が得られます。したがって,$x=1$を代入することにより,
\begin{align}
\sum_{k=0}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k} &= n(n-1)(n-2)2^{n-3}
\end{align}
\sum_{k=0}^{n}k(k-1)(k-2){}_{n}C_{k} &= n(n-1)(n-2)2^{n-3}
\end{align}
が得られます。
例題2
次の値を$n$を用いて表しなさい。
\begin{align}
\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k+2}{}_{n}C_{k}(-1)^{k+2}
\end{align}
\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k+2}{}_{n}C_{k}(-1)^{k+2}
\end{align}
式($\ref{二項定理}$)の両辺に$x$をかけると
\begin{align}
x(1+x)^{n} &= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k+1}
\end{align}
x(1+x)^{n} &= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k+1}
\end{align}
が成り立ちます。左辺を区間$[-1,0]$で定積分すると
\begin{align}
\int_{-1}^{0}x(1+x)^{n}dx
&= \int_{0}^{1}(u-1)u^{n}dx
= \int_{0}^{1}u^{n+1}du-\int_{0}^{1}u^{n}du\\[0.7em]
&= \frac{1}{n+2}-\frac{1}{n+1} = \frac{-1}{(n+1)(n+2)}
\end{align}
\int_{-1}^{0}x(1+x)^{n}dx
&= \int_{0}^{1}(u-1)u^{n}dx
= \int_{0}^{1}u^{n+1}du-\int_{0}^{1}u^{n}du\\[0.7em]
&= \frac{1}{n+2}-\frac{1}{n+1} = \frac{-1}{(n+1)(n+2)}
\end{align}
となります。
ベータ関数とガンマ関数の関係,およびガンマ関数の階乗としての性質を組み合わせても計算できます。
右辺を区間$[-1,0]$で定積分すると
\begin{align}
\int_{-1}^{0}\sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k+1}dx
&= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}\int_{-1}^{0}x^{k+1}dx\\[0.7em]
&= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}\frac{1}{k+2}\left[x^{k+2}\right]_{-1}^{0}\\[0.7em]
&= \sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k+2}{}_{n}C_{k}(-1)^{k+3}
\end{align}
\int_{-1}^{0}\sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}x^{k+1}dx
&= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}\int_{-1}^{0}x^{k+1}dx\\[0.7em]
&= \sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}\frac{1}{k+2}\left[x^{k+2}\right]_{-1}^{0}\\[0.7em]
&= \sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k+2}{}_{n}C_{k}(-1)^{k+3}
\end{align}
となります。ただし,有限和と積分は交換可能であることを利用しました。
無限和の場合は一様収束等による議論が必要です。また,区間が$[-1,0]$は一旦両辺を区間$[a,b]$で定積分してみて$(-1)^{k+2}$の形が出てくるような$a,b$を探して用意しました。
これらより,
\begin{align}
\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k+2}{}_{n}C_{k}(-1)^{k+2}
&= (-1)\cdot\frac{-1}{(n+1)(n+2)} = \frac{1}{(n+1)(n+2)}
\end{align}
\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k+2}{}_{n}C_{k}(-1)^{k+2}
&= (-1)\cdot\frac{-1}{(n+1)(n+2)} = \frac{1}{(n+1)(n+2)}
\end{align}
が得られます。
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