【数検1級対策】二次曲線と二次曲面

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

二次曲線と二次曲面

二次曲線

$\vx=(x,y)^{T}$,$\vb=(g,f)^{T}$および

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
a & h\\
h & b
\end{pmatrix}
\end{align}

に対し,$F(\vx)=\vx^{T}A\vx+2\vb^{T}\vx+c$で表される平面図形を二次曲線といい,

\begin{align}
\tilde{A} &=
\begin{pmatrix}
A & \vb\\
\vb^{T} & c
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & h & g\\
h & b & f\\
g & f & c
\end{pmatrix},\quad
\vu =
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}

とおくと,$F(\vx)=\vu^{T}\tilde{A}\vu$と表される。$F(\vx)=0$が点$\vx_{0}=(x_{0},y_{0})$に対して点対称なとき,$(x_{0},y_{0})$を$F=0$の中心という。二次曲線に中心が存在する必要十分条件は$A$が正則であることであり,中心の座標は$A\vx_{0}=-\vb/2$の解,すなわち

\begin{cases}
ax + hy + g = 0\\[0.7em]
hx + by + f = 0\label{連立1}
\end{cases}

の解となる。

二次曲面

$\vx=(x,y,z)^{T}$,$\vb=(l,m,n)^{T}$および

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
a & h & g\\
h & b & f\\
g & f & c
\end{pmatrix}
\end{align}

に対し,$F(\vx)=\vx^{T}A\vx+2\vb^{T}\vx+d$で表される平面図形を二次曲面といい,

\begin{align}
\tilde{A} &=
\begin{pmatrix}
A & \vb\\
\vb^{T} & d
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & h & g & l\\
h & b & f & m\\
g & f & c & n\\
l & m & n & d
\end{pmatrix},\quad
\vu =
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}

とおくと,$F(\vx)=\vu^{T}\tilde{A}\vu$と表される。$F(\vx)=0$が点$\vx_{0}=(x_{0},y_{0},z_{0})$に対して点対称なとき,$(x_{0},y_{0},z_{0})$を$F=0$の中心という。二次曲線に中心が存在する必要十分条件は$A$が正則であることであり,中心の座標は$A\vx_{0}=-\vb/2$の解,すなわち

\begin{cases}
ax + hy + gz + l = 0\\[0.7em]
hx + by + fz + m = 0\\[0.7em]
hx + by + fz + n = 0\label{連立2}
\end{cases}

の解となる。

中心の存在条件が正則であること,すなわち$|A|\neq 0$であること,および中心の座標の求め方についておさえておきましょう。二次形式的な表記方法を行うためには行列の末尾に$1$を付与した形になることは頭の片隅に入れておくと便利です。二次曲線や二次局面では中心が存在しないケースもありますが,数検1級の文脈では「中心が存在することを確認し,中心が原点となるように平行移動した上で二次形式を標準化する」という問題をおさえておけばよいでしょう。

補足

中心の座標が連立方程式($\ref{連立1}$)や($\ref{連立2}$)で求められることは,「$F(\vx_{0}{+}\vy){=}0$に対し$F(\vx_{0}{-}\vy){=}0$となるような$\vx_{0}$が一意に存在すること」という中心の定義から導かれます。この定義を変形して$A\vx_{0}{=}{-}\vb/2$を得て,この中心の存在はこの連立方程式が解をもつことですので$A$が正則であることが導かれます。

具体例

例1

次の二次曲線の標準形を求めよ。

\begin{align}
5x^{2}-8xy+5y^{2} = 9
\end{align}

例2

次の二次曲面の標準形を求めよ。

\begin{align}
x^{2}-y^{2}-z^{2}+2xy+2yz+2zx-4y-8z-18 &= 0
\end{align}

解答

例1について

次の二次曲線の標準形を求めよ。

\begin{align}
5x^{2}-8xy+5y^{2} = 9
\end{align}

与えられた二次曲線は,$\vx=(x,y)$および

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
5 & -4\\
-4 & 5
\end{pmatrix}
\end{align}

を用いて$F(\vx)=\vx^{T}A\vx+9$と表されます。$|A|\neq 0$より,この二次曲線には中心が存在し,その座標$(x_{0},y_{0})^{T}$は連立方程式

\begin{cases}
5x_{0}-4y_{0} = 0\\[0.7em]
-4x_{0}+5y_{0} = 0\\[0.7em]
\end{cases}

の解となるため,$(x_{0},y_{0})^{T}=(0,0)^{T}$となります。これより,$F$を平行移動する必要はありません。$A$の固有多項式を計算すると,

\begin{align}
\begin{vmatrix}
5-\lambda & -4\\
-4 & 5-\lambda
\end{vmatrix}
&= (\lambda-1)(\lambda-9)
\end{align}

となるため,固有値は$1,9$となります。それぞれの固有ベクトルを定義から求めると,

\begin{align}
\vp_{1} = \frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1\\
1
\end{pmatrix},\quad
\vp_{2} = \frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
-1\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}

となり,

\begin{align}
P = (\vp_{1},\vp_{2}) = \frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 & -1\\
1 & 1
\end{pmatrix},\quad
\Lambda =
\begin{pmatrix}
1 & 0\\
0 & 9
\end{pmatrix}
\end{align}

とおいて$P$が直交行列であることに注意すると$P^{T}AP=\Lambda$と対角化できます。したがって,変換後のベクトルを$\vy=(X,Y)$とおき,$\vx=P\vy$とすると,

\begin{align}
\vx^{T}A\vx &= \vy^{T}(P^{T}AP)\vy = \vy^{T}\Lambda\vy
\end{align}

と標準化できます。これを展開すると

\begin{align}
X^{2} + 9Y^{2} &= 9
\end{align}

が得られます。以上より,求める標準形は

\begin{align}
\frac{X^{2}}{3^{2}} + Y^{2} &= 1
\end{align}

となります。

例2について

次の二次曲面の標準形を求めよ。

\begin{align}
x^{2}-y^{2}-z^{2}+2xy+2yz+2zx-4y-8z-18 &= 0
\end{align}

与えられた二次曲線は,$\vx=(x,y,z)$,$\vb=(0,-2,-4)$および

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1\\
1 & -1 & 1\\
1 & 1 & -1
\end{pmatrix}
\end{align}

を用いて$F(\vx)=\vx^{T}A\vx+2\vb\vx-18$と表されます。$|A|\neq 0$より,この二次曲線には中心が存在し,その座標$(x_{0},y_{0},z_{0})^{T}$は連立方程式

\begin{cases}
x_{0} + y_{0} + z_{0} = 0\\[0.7em]
x_{0} + -y_{0} + z_{0} - 2 = 0\\[0.7em]
x_{0} + y_{0} + -z_{0} - 4 = 0\\[0.7em]
\end{cases}

の解となるため,$(x_{0},y_{0},z_{0})^{T}=(3,-1,-2)^{T}$となります。これより,中心が原点になるように$F$を平行移動するためには,

\begin{align}
\vx &= \vx^{\prime}+ (3,-1,-2)^{T}
\end{align}

とおけばよいです。ただし,$\vx^{\prime}=(x^{\prime}_{0},y^{\prime}_{0},z^{\prime}_{0})^{T}$を変換後の座標とします。これを$F$に代入して$\vx^{\prime}$を再度$\vx$に置き換えると,

\begin{align}
x^{2}-y^{2}-z^{2}+2xy+2yz+2zx-8 &= 0
\end{align}

が得られます。変換後の表現行列も変わらず$A$であるため,$A$の固有多項式を計算すると,

\begin{align}
\begin{vmatrix}
1-\lambda & 1 & 1\\
1 & -1-\lambda & 1\\
1 & 1 & -1-\lambda
\end{vmatrix}
&= -(\lambda+2)(\lambda+1)(\lambda-2)
\end{align}

となるため,固有値は$-2,-1,2$となります。それぞれの固有ベクトルを定義から求めると,

\begin{align}
\vp_{1} = \frac{1}{\sqrt{6}}
\begin{pmatrix}
2\\
1\\
1
\end{pmatrix},\quad
\vp_{2} = \frac{1}{\sqrt{3}}
\begin{pmatrix}
-1\\
1\\
1
\end{pmatrix},\quad
\vp_{3} = \frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
0\\
-1\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}

となり,

\begin{align}
P = (\vp_{1},\vp_{2},\vp_{3}) = \frac{1}{\sqrt{6}}
\begin{pmatrix}
2 & -\sqrt{2} & 0\\
1 & \sqrt{2} & -\sqrt{3}\\
1 & \sqrt{2} & \sqrt{3}
\end{pmatrix},\quad
\Lambda =
\begin{pmatrix}
2 & 0 & 0\\
0 & -1 & 0\\
0 & 0 & -2\\
\end{pmatrix}
\end{align}

とおいて$P$が直交行列であることに注意すると$P^{T}AP=\Lambda$と対角化できます。したがって,変換後のベクトルを$\vy=(X,Y,Z)$とおき,$\vx=P\vy$とすると,

\begin{align}
\vx^{T}A\vx &= \vy^{T}(P^{T}AP)\vy = \vy^{T}\Lambda\vy
\end{align}

と標準化できます。これを展開すると

\begin{align}
2X^{2} - Y^{2} - 2Z^{2} &= 8
\end{align}

が得られます。以上より,求める標準形は

\begin{align}
\frac{X^{2}}{2^{2}} - \frac{Y^{2}}{(2\sqrt{2})^{2}} - \frac{Z^{2}}{2^{2}} &= 1
\end{align}

となります。

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