【数検1級対策】最小多項式の導出

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

最小多項式の導出

任意の$n$次正方行列$A$は$f(A)=O$を満たす多項式$f(x)$を必ずもち,$f(x)$の中で字数が最小かつ最高次の係数が$1$となるものを行列$A$の最小多項式という。固有多項式$\varphi_{A}(x)$は最小多項式の必要条件であり,最小多項式の候補として次の$\mu_{A}(x)$が考えらる。

\begin{align}
\mu_{X}(A) &=
(x-\lambda_{1})^{k_{1}}\cdots(x-\lambda_{r})^{k_{r}}\quad(1\leq k_{i}\leq m_{i},~i=1,\ldots,r)
\end{align}

ただし,$\lambda_{i}$は$A$の固有値,$m_{i}$は$\lambda_{i}$の重複度を表す。$k_{i}$として取りうる値を低い方から順に当てはめていき,$f(A)=O$となる多項式が最小多項式である。

「必要条件」という言葉の使い方は正しくないですが,ニュアンスとして大切です。

具体例

次の行列$A$の最小多項式を求めよ。

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
5 & 2 & 2\\
-6 & -3 & -6\\
2 & 2 & 5
\end{pmatrix}
\end{align}

解答

固有多項式を計算すると,

\begin{align}
\begin{vmatrix}
5-\lambda & 2 & 2\\
-6 & -3-\lambda & -6\\
2 & 2 & 5-\lambda
\end{vmatrix}
&= -(x-1)(x-3)^{2}
\end{align}

となるため,最小多項式の候補は

\begin{align}
(x-1)(x-3),\quad (x-1)(x-3)^{2}
\end{align}

となります。次数の小さい方から$A$を代入して$O$となるかを確認します。$(x-1)(x-3)$について,

\begin{align}
(A-E)(A-3E) &=
\begin{vmatrix}
4 & 2 & 2\\
-6 & -4 & -6\\
2 & 2 & 4
\end{vmatrix}
\begin{vmatrix}
2 & 2 & 2\\
-6 & -6 & -6\\
2 & 2 & 2
\end{vmatrix} = O
\end{align}

となるため,最小多項式は$(x-1)(x-3)$となります。

仮に$(x-1)(x-3)\neq 0$であれば最小多項式は$(x-1)(x-3)^{2}$となります。

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