本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
図形に対する線形変換
線形変換$f$を定める行列$A$の像を求めることを考える。
- 逆行列が存在する場合:そのまま逆行列を利用する
- 逆行列が存在しない場合:媒介変数を経由する
逆行列が存在しない場合の像の求め方に注意です。
具体例
例1
A &=
\begin{pmatrix}
4 & 1\\
2 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
によって定められる線形変換$f$により,次の図形はどのような図形に移されるか。
- $3x+2y-4=0$
- $x^{2}+y^{2}=1$
例2
A &=
\begin{pmatrix}
2 & 1\\
4 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
によって定められる線形変換$f$により,次の図形はどのような図形に移されるか。
- $xy$平面
- $2x+y-3=0$
- $y=x^{2}$
- $x^{2}+y^{2}=1$
解答
例1の逆行列は
\begin{pmatrix}
4 & 1\\
2 & 1
\end{pmatrix}^{-1}
&= \frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
1 & -1\\
-2 & 4
\end{pmatrix}
\end{align}
となり,例2の逆行列は存在しないことに注意します。特に,例1では
\begin{pmatrix}
x\\
y
\end{pmatrix}
&= A^{-1}
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
= \frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
1 & -1\\
-2 & 4
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
\end{align}
より,
\begin{cases}
\displaystyle
x = \frac{x^{\prime}-y^{\prime}}{2}\\[0.7em]
y = -x^{\prime}+2y^{\prime}\label{逆変換}
\end{cases}
が得られることを前提とします。
媒介変数を用いる方法では,取り得る値の範囲を必ず確認してください。
例1-1
A &=
\begin{pmatrix}
4 & 1\\
2 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
により,$3x+2y-4=0$はどのような図形に移されるか。
式($\ref{逆変換}$)を方程式に代入すると,
3\cdot \frac{x^{\prime}-y^{\prime}}{2}
+ 2\cdot (-x^{\prime}+2y^{\prime}) - 4
&= 0
\end{align}
となるため,これを整理してダッシュ記号を外すと$x-5y+8$が得られます。
例1-2
A &=
\begin{pmatrix}
4 & 1\\
2 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
により,$x^{2}+y^{2}=1$はどのような図形に移されるか。
式($\ref{逆変換}$)を方程式に代入すると,
\left(\frac{x^{\prime}-y^{\prime}}{2}\right)^{2}
+ \left(-x^{\prime}+2y^{\prime}\right)^{2}
&= 1
\end{align}
となるため,これを整理してダッシュ記号を外すと$5x^{2}-18xy+17y^{2}=4$が得られます。
例2-1
A &=
\begin{pmatrix}
2 & 1\\
4 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
により,$xy$平面はどのような図形に移されるか。
$xy$平面上の任意の点は,$x,y$を任意の実数として
\begin{pmatrix}
x\\
y
\end{pmatrix}
&= x
\begin{pmatrix}
1\\
0
\end{pmatrix}
+ y
\begin{pmatrix}
0\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}
と表されるため,
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
&= xA
\begin{pmatrix}
1\\
0
\end{pmatrix}
+ yA
\begin{pmatrix}
0\\
1
\end{pmatrix}
= x
\begin{pmatrix}
2\\
4
\end{pmatrix}
+ y
\begin{pmatrix}
1\\
2
\end{pmatrix}
=
(2x+y)
\begin{pmatrix}
1\\
2
\end{pmatrix}
\end{align}
となります。$x$座標と$y$座標を比べると$y=2x$となりますが,係数の取り得る値の範囲を確認する必要があります。$x,y$は任意の実数であることから$2x+y$も任意の実数を動くため,求める答えは$y=2x$となります。
例2-2
A &=
\begin{pmatrix}
2 & 1\\
4 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
により,$2x+y-3=0$はどのような図形に移されるか。
$2x+y-3=0$を直線$l$とおきます。$l$は$(1,1)$を通り方向ベクトルが$(1/2,-1)\propto (1,-2)$の直線であることから,$l$上の任意の点は$t$を任意の実数として
\begin{pmatrix}
x\\
y
\end{pmatrix}
&=
\begin{pmatrix}
1\\
1
\end{pmatrix}
+ t
\begin{pmatrix}
1\\
-2
\end{pmatrix}
\end{align}
と表されるため,
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
&= A
\begin{pmatrix}
1\\
1
\end{pmatrix}
+ tA
\begin{pmatrix}
1\\
-2
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3\\
6
\end{pmatrix}
+ t
\begin{pmatrix}
0\\
0
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3\\
6
\end{pmatrix}
\end{align}
となります。したがって,求める答えは点$(3,6)$となります。
別解
$l$上の任意の点は,$t$を任意の実数として$(t,-2t+3)^{T}$とおけるため,
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
&= A
\begin{pmatrix}
t\\
-2t+3
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3\\
6
\end{pmatrix}
\end{align}
となります。したがって,求める答えは点$(3,6)$となります。
例2-3
A &=
\begin{pmatrix}
2 & 1\\
4 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
により,$y=x^{2}$はどのような図形に移されるか。
$y=x^{2}$上の任意の点は,$t$を任意の実数として$(t,t^{2})^{T}$とおけるため,
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
&= A
\begin{pmatrix}
t\\
t^{2}
\end{pmatrix}
= (t^{2}+2t)
\begin{pmatrix}
1\\
2
\end{pmatrix}
\end{align}
となります。ここで,$t^{2}+2t=(t+1)^{2}-1\geq -1$となることを利用すると,求める答えは半直線
y &= 2x\quad(x\geq -1)
\end{align}
となります。
例2-4
A &=
\begin{pmatrix}
2 & 1\\
4 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
により,$x^{2}+y^{2}=1$はどのような図形に移されるか。
$x^{2}+y^{2}=1$上の任意の点は,$0\leq\theta<2\pi$を用いて$(\cos\theta, \sin\theta)$とおけるため,
\begin{pmatrix}
x^{\prime}\\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
&= A
\begin{pmatrix}
\cos\theta\\
\sin\theta
\end{pmatrix}
= (\sin\theta+2\cos\theta)
\begin{pmatrix}
1\\
2
\end{pmatrix}
\end{align}
となります。ここで,三角関数の合成より
\sin\theta+2\cos\theta &= \sqrt{5}\sin(\theta+\alpha)
\end{align}
となることを利用すると,求める答えは線分
y &= 2x\quad(|x|\leq \sqrt{5})
\end{align}
となります。ただし,$\alpha$は
\sin\alpha = \frac{2}{\sqrt{5}},\quad
\cos\alpha = \frac{1}{\sqrt{5}}
\end{align}
を満たします。
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