【数検1級対策】線形従属の条件と係数の求め方

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

線形従属の条件と係数の求め方

$\va_{1},\ldots,\va_{n}$が線型従属となる必要十分条件は,線型従属の定義を行列で表現することにより得ることができる。特に元の個数と元の次元数が等しい場合は,線型従属となる必要十分条件は元を並べた行列の行列式が$0$となることである。線形従属の係数は,連立一次方程式を解く際の手続きを利用できる。

行列形式の演算を覚えておくと楽です。

具体例

  1. $\mR^{4}$において$\vc=(a,b,c,d)$が$\va=(1,2,-1,1),\vb=(2,6,-1,4)$の張る空間に属するための必要十分条件を求めよ
  2. $\mR^{3}$において$\va=(a,b,c),\vb=(c,a,b),\vc=(b,c,a)$が線形従属となる必要十分条件を求めよ
  3. $\mR^{3}$の元$\va_{1}=(1,2,3),\va_{2}=(2,5,8),\va_{3}=(1,3,6)$によって生成される部分空間$W$の次元とその$1$組の基底を求めよ
  4. $\mR^{3}$の元$\va_{1}=(1,2,3),\va_{2}=(2,3,4),\va_{3}=(2,1,0)$によって生成される部分空間$W$の次元とその$1$組の基底を求めよ

解答

例1

$\mR^{4}$において$\vc=(a,b,c,d)$が$\va=(1,2,-1,1),\vb=(2,6,-1,4)$の張る空間に属するための必要十分条件を求めよ

線形従属の定義より,

\begin{align}
\vc &= x\va + y\vb
\end{align}

を満たす実数$(x,y)$が存在するための必要十分条件を求めます。$A=(\va~\vb)$とおくと,$(A~\vc)$が解をもつための必要十分条件を考えればよく,$\vc=(a,b,c,d)$とおくと,

\begin{align}
&\begin{pmatrix}
1 & 2 & a\\
2 & 6 & b\\
-1 & -1 & c\\
1 & 4 & d
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 2 & a\\
0 & 2 & -2a+b\\
0 & 1 & a+c\\
0 & 2 & -a+d
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -a-2c\\
0 & 0 & -4a+b-2c\\
0 & 1 & a+c\\
0 & 0 & -3a-2c+d
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -a-2c\\
0 & 1 & a+c\\
0 & 0 & -4a+b-2c\\
0 & 0 & -3a-2c+d
\end{pmatrix}
\end{align}

が解をもつ必要十分条件は$-4a+b-2c=0$かつ$-3a-2c+d=0$となります。

例2

$\mR^{3}$において$\va=(a,b,c),\vb=(c,a,b),\vc=(b,c,a)$が線形従属となる必要十分条件を求めよ

元の個数と元の次元数が等しいため,行列式による必要十分条件を利用できます。$\va,\vb,\vc$が線形従属となる必要十分条件は$\det|\va,\vb,\vc|=0$であるため,

\begin{align}
\begin{vmatrix}
a & c & b\\
b & a & c\\
c & b & a
\end{vmatrix}
&= a^{3} + b^{3} + c^{3} - 3abc
= (a+b+c)(a^{2}+b^{2}+c^{2}-ab-bc-ca)\\[0.7em]
&= \frac{1}{2}(a+b+c)\{(a-b)^{2}+(b-c)^{2}+(c-a)^{2}\} = 0
\end{align}

より,求める答えは$a+b+c=0$または$a=b=c$となります。

この因数分解は数検1級で頻出です。

例3

$\mR^{3}$の元$\va_{1}=(1,2,3),\va_{2}=(2,5,8),\va_{3}=(1,3,6)$によって生成される部分空間$W$の次元とその$1$組の基底を求めよ

$(\va_{1}~\va_{2}~\va_{3})$を行基本変形したときの階数が求める次元となります。

\begin{align}
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1\\
2 & 5 & 3\\
3 & 8 & 6
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1\\
0 & 1 & 1\\
0 & 2 & 3
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1\\
0 & 1 & 1\\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}

$(\va_{1}~\va_{2}~\va_{3})$の階数は$3$となり,元の個数と次元が等しいため$3$つの元は線型独立となります。

例4

$\mR^{3}$の元$\va_{1}=(1,2,3),\va_{2}=(2,3,4),\va_{3}=(2,1,0)$によって生成される部分空間$W$の次元とその$1$組の基底を求めよ

$(\va_{1}~\va_{2}~\va_{3})$を行基本変形したときの階数が求める次元となります。

\begin{align}
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 2\\
2 & 3 & 1\\
3 & 4 & 0
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 2\\
0 & -1 & -3\\
0 & -2 & -6
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 2\\
0 & -1 & -3\\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -4\\
0 & 1 & 3\\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\label{4-1}
\end{align}

$(\va_{1}~\va_{2}~\va_{3})$の階数は$2$となり,元の個数より次元の方が小さくなるため$3$つの元は線型従属となります。実際,上の手続きで明らかになっている通り,

\begin{align}
\va_{3} &= -4\va_{1}+3\va_{2}\label{4-2}
\end{align}

のように表される。

補足

式($\ref{4-1}$)から式($\ref{4-2}$)が導かれる理由を説明します。一般に,$x_{1},\ldots,x_{n}$を変数とする$n$組の連立方程式$A\vx = \vb$の解は

\begin{align}
(A~\vb)~\rarr~(E_{n}~\vd)
\end{align}

と行基本変形して得られる$\vd$を用いて$\vx=\vd$となります。ただし,$A$は$n\times n$行列です。式($\ref{4-1}$)は

\begin{align}
\begin{pmatrix}
\va_{1} & \va_{2}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_{1}\\
x_{2}
\end{pmatrix}
&= A\vx
= \va_{3}
\end{align}

という連立方程式を行列形式で解く表現そのものですので,$A$の右側に$\va_{3}$をくっつけた$(\va_{1}~\va_{2}~\va_{3})$の行基本変形を考えればよいです。左二列で変数の数を次元数とする単位行列$E_{2}$を作り,そのときの一番右側の列ベクトルが求める係数となります。

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