本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
線形従属の条件と係数の求め方
が線型従属となる必要十分条件は,線型従属の定義を行列で表現することにより得ることができる。特に元の個数と元の次元数が等しい場合は,線型従属となる必要十分条件は元を並べた行列の行列式がとなることである。線形従属の係数は,連立一次方程式を解く際の手続きを利用できる。
行列形式の演算を覚えておくと楽です。
具体例
- においてがの張る空間に属するための必要十分条件を求めよ
- においてが線形従属となる必要十分条件を求めよ
- の元によって生成される部分空間の次元とその組の基底を求めよ
- の元によって生成される部分空間の次元とその組の基底を求めよ
解答
例1
においてがの張る空間に属するための必要十分条件を求めよ
線形従属の定義より,
を満たす実数が存在するための必要十分条件を求めます。とおくと,が解をもつための必要十分条件を考えればよく,とおくと,
が解をもつ必要十分条件はかつとなります。
例2
元の個数と元の次元数が等しいため,行列式による必要十分条件を利用できます。が線形従属となる必要十分条件はであるため,
より,求める答えはまたはとなります。
この因数分解は数検1級で頻出です。
例3
の元によって生成される部分空間の次元とその組の基底を求めよ
を行基本変形したときの階数が求める次元となります。
の階数はとなり,元の個数と次元が等しいためつの元は線型独立となります。したがって,
が組の基底となります。
例4
の元によって生成される部分空間の次元とその組の基底を求めよ
を行基本変形したときの階数が求める次元となります。
の階数はとなり,元の個数より次元の方が小さくなるためつの元は線型従属となります。実際,上の手続きで明らかになっている通り,
のように表されます。したがって,
が組の基底となります。
補足
式()から式()が導かれる理由を説明します。一般に,を変数とする組の連立方程式の解は
と行基本変形して得られるを用いてとなります。ただし,は行列です。式()は
という連立方程式を行列形式で解く表現そのものですので,の右側にをくっつけたの行基本変形を考えればよいです。左二列で変数の数を次元数とする単位行列を作り,そのときの一番右側の列ベクトルが求める係数となります。
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