【数検1級対策】ロピタルの定理の活用

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

ロピタルの定理の活用

関数$f,g$は$a$を含む区間で微分可能で,$a$の近傍で$g^{\prime}(a)\neq 0$とする。さらに,

\begin{align}
\lim_{x\rarr a}f(x) = \lim_{x\rarr a}g(x) = 0~\text{または}~\lim_{x\rarr a}f(x) = \lim_{x\rarr a}g(x) = \pm\infty
\end{align}

のときに$\lim_{x\rarr a}f^{\prime}(x)/g^{\prime}(x)$が存在するならば,

\begin{align}
\lim_{x\rarr a}\frac{f(x)}{g(x)}
&= \lim_{x\rarr a}\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}
\end{align}

が成り立つ。

証明は割愛します。

具体例

下記の関数の極限を求めよ。

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{e^{x}-1}{x},\quad
\lim_{x\rarr 0}\frac{a^{x}-b^{x}}{x}~(a>0,~b>0)
\end{align}

解答

$f(x)=e^{x}-1$および$g(x)=x$は$0$を含む区間で微分可能で,$0$の近傍で$g^{\prime}(x)=1\neq 0$を満たします。さらに,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}f(x) = \lim_{x\rarr 0}g(x) = 0
\end{align}

であり,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}
&= \lim_{x\rarr 0}\frac{e^{x}}{1} = 1
\end{align}

が存在するため,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{e^{x}-1}{x} &= 1
\end{align}

が得られました。同様に,$f(x)=a^{x}-b^{x}$および$g(x)=x$は$0$を含む区間で微分可能で,$0$の近傍で$g^{\prime}(x)=1\neq 0$を満たします。さらに,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}f(x) = \lim_{x\rarr 0}g(x) = 0
\end{align}

であり,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}
&= \lim_{x\rarr 0}\frac{a^{x}\log a-b^{x}\log b}{1} = \log\frac{a}{b}
\end{align}

が存在するため,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{e^{x}-1}{x} &= \log\frac{a}{b}
\end{align}

が得られました。

ロピタルの定理が成り立たない例

ロピタルの定理では,下記の前提条件がありました。

  • $g^{\prime}(a)\neq0$であること
  • 不定形であること
  • $\lim_{x\rarr a}f^{\prime}(x)/g^{\prime}(x)$が存在すること

これらの条件が成り立たない場合は,ロピタルの定理も成り立ちません。

$g^{\prime}(a)=0$の場合

\begin{cases}
\displaystyle
f(x) = \frac{x}{2}+\frac{\sin(2x)}{4}\\[0.7em]
g(x) = f(x)e^{\sin x}
\end{cases}

$f,g$の微分は

\begin{cases}
\displaystyle
f^{\prime}(x) = \frac{1}{2}+\frac{\cos(2x)}{2} = \cos^{2}x\\[0.7em]
\displaystyle
g^{\prime}(x) = \cos x\left\{e^{\sin x}\cos x+g(x)\right\}
\end{cases}

であるため,$g^{\prime}(x)$は$x=\pi/2+n\pi$のときに$0$となります。しかし,

\begin{align}
\lim_{x\rarr\infty}\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}
&= \lim_{x\rarr\infty}\frac{\cos^{2}x}{\cos x\left\{e^{\sin x}\cos x+g(x)\right\}}
= \lim_{x\rarr\infty}\frac{\cos x}{e^{\sin x}\cos x+g(x)}\\[0.7em]
&\leq \lim_{x\rarr\infty}\frac{1}{e^{-1}+g(x)} = 0
\end{align}

である一方で,

\begin{align}
\lim_{x\rarr\infty}\frac{f(x)}{g(x)}
&= \lim_{x\rarr\infty}\frac{f(x)}{f(x)e^{\sin x}}
= \lim_{x\rarr\infty}e^{-\sin x}
\end{align}

となり振動するため,この$f,g$に対してはロピタルの定理が成り立たないことが示されました。

不定形でない場合

\begin{cases}
\displaystyle
f(x) = \cos x\\[0.7em]
g(x) = x
\end{cases}

$\lim_{x\rarr 0}f(x)/g(x)$は不定形ではありません。このとき,

\begin{align}
\lim_{x\rarr0}\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}
&= \lim_{x\rarr0}(-\sin x) = 0
\end{align}

である一方で,

\begin{align}
\lim_{x\rarr0}\frac{f(x)}{g(x)}
&= \lim_{x\rarr0}\frac{\cos x}{x} = \infty
\end{align}

となるため,この$f,g$に対してはロピタルの定理が成り立たないことが示されました。

$\lim_{x\rarr a}f^{\prime}(x)/g^{\prime}(x)$が存在しない場合

\begin{cases}
\displaystyle
f(x) = x^{2}\sin\frac{1}{x}\\[0.7em]
g(x) = x
\end{cases}

$f,g$の微分は

\begin{cases}
\displaystyle
f^{\prime}(x) = 2x\sin\frac{1}{x}-\cos\frac{1}{x}\\[0.7em]
\displaystyle
g^{\prime}(x) = 1
\end{cases}

であるため,$g^{\prime}(1)\neq 0$となります。しかし,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{f^{\prime}(x)}{g^{\prime}(x)}
&= \lim_{x\rarr 0}2x\sin\frac{1}{x}-\cos\frac{1}{x}
\end{align}

は振動する一方で,

\begin{align}
\lim_{x\rarr 0}\frac{f(x)}{g(x)}
&= \lim_{x\rarr 0}\frac{x^{2}\sin(1/x)}{x}
= \lim_{x\rarr 0}x\sin(1/x) = 0
\end{align}

となるため,この$f,g$に対してはロピタルの定理が成り立たないことが示されました。

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