【数検1級対策】対角化の総まとめ

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

対角化の総まとめ

$n$次正方行列$A$に対し,固有値$\lambda_{i}$の重複度を$m_{i}$とおき,固有値$\lambda_{i}$に属する固有空間を$W(\lambda_{i})$とおく。$A$の対角化には,次のパターンを使い分ける。

STEP
$n$個の相違なる固有値を持つとき

最もシンプルな対角化を行うことができる

STEP
$\dim W(\lambda_{i}) = m_{i}$のとき

結果としてシンプルな対角化を行うことができる。

STEP
$\dim W(\lambda_{i})\neq m_{i}$のとき

直交行列を用いた再帰的な手続きにより上三角化できる

STEP
$\dim W(\lambda_{i})\neq m_{i}$で上三角行列よりも対角行列に近づけたいとき

ジョルダン細胞の個数が$n{-}\mathrm{rank}(A{-}\lambda E)$となるジョルダン標準形に変形できる。

STEP 1〜STEP 4の順番で思考を巡らせます。ジョルダン標準形があるため実質上三角化は不要ですが,数検1級対策の文脈では再帰的な手続きにより上三角化できることを把握しておきましょう。また,ジョルダン標準形に変形できることは割り切って覚えてしまった方が楽です。

具体例とその解答

1.について

下記の行列を対角化せよ。

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 2 & -3\\
-1 & 0 & 1\\
-1 & 2 & -1
\end{pmatrix}
\end{align}

固有多項式を計算すると

\begin{align}
\begin{vmatrix}
1-\lambda & 2 & -3\\
-1 & -\lambda & 1\\
-1 & 2 & -1-\lambda
\end{vmatrix}
&= -\lambda(\lambda-2)(\lambda+2) = 0
\end{align}

となるため,$\lambda=0,\pm 2$となります。$3$次正方行列に対して$3$個の相違なる固有値が存在するため,この行列は対角化可能です。実際,各固有値に対応する固有ベクトルを定義から求めると,

\begin{align}
(1,1,1)^{T},\quad (1,-1,-1)^{T},\quad (1,0,1)^{T}
\end{align}

と線形独立な$3$つのベクトルとなるため,

\begin{align}
P &=
\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1\\
1 & -1 & 0\\
1 & -1 & 1
\end{pmatrix},\quad
\Lambda =
\begin{pmatrix}
0 & 0 & 0\\
0 & 2 & 0\\
0 & 0 & -2
\end{pmatrix}
\end{align}

とおけば$P^{-1}AP=\Lambda$となり,対角化することができます。

2.について

下記の行列を対角化せよ。

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 2\\
1 & 2 & -1\\
3 & -3 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}

固有多項式を計算すると

\begin{align}
\begin{vmatrix}
1-\lambda & 2 & 2\\
1 & 2-\lambda & -1\\
3 & -3 & 0-\lambda
\end{vmatrix}
&= -(\lambda+3)(\lambda-3)^{2} = 0
\end{align}

となるため,$\lambda=-3,3$ (二重解)となります。まず$\lambda=-3$に対応する固有ベクトルを定義から求めると,

\begin{align}
(-2,1,3)^{T}
\end{align}

が得られます。次に$\lambda=3$に属する固有空間の次元を求めるため,$\lambda=3$に対応する固有ベクトルを求めます。

\begin{align}
A-3E
&=
\begin{pmatrix}
-2 & 2 & 2\\
1 & -1 & -1\\
3 & -3 & -3
\end{pmatrix}
\end{align}

より,固有ベクトルを$\vx=(x,y,z)$とおいたときに$y=s$および$z=t$とおくと

\begin{align}
\vx &= s(1,1,0)^{T}+t(1,0,1)^{T}
\end{align}

と表され,$(1,1,0)^{T}$と$(1,0,1)^{T}$が線形独立であることから$\lambda=3$に属する固有空間の次元は$2$となります。ただし,固有ベクトルは$\vzero$ではないため,$s\neq 0$かつ$t\neq 0$とします。以上より,$\lambda=-3,3$の重複度とそれぞれの固有空間の次元が等しいため,この行列は対角化可能です。実際,

\begin{align}
P &=
\begin{pmatrix}
-2 & 1 & 1\\
1 & 1 & 0\\
3 & 0 & 1
\end{pmatrix},\quad
\Lambda =
\begin{pmatrix}
-3 & 0 & 0\\
0 & 3 & 0\\
0 & 0 & 3
\end{pmatrix}
\end{align}

とおけば$P^{-1}AP=\Lambda$となり,対角化することができます。

3.について

下記の行列を対角化せよ。対角化できない場合は上三角化せよ。

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
3 & 2 & -1\\
-2 & -1 & 1\\
-1 & -1 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}

固有多項式を計算すると

\begin{align}
\begin{vmatrix}
3-\lambda & 2 & -1\\
-2 & -1-\lambda & 1\\
-1 & -1 & 2-\lambda
\end{vmatrix}
&= -(\lambda-1)^{2}(\lambda-2) = 0
\end{align}

となるため,$\lambda=2,1$ (二重解)となります。対角化可能性を調べるため,$\lambda=1$に対応する固有ベクトルを定義から求めます。

\begin{align}
A{-}E &=
\begin{pmatrix}
2 \!\!& 2 \!\!& -1\\
-2 \!\!& -2 \!\!& 1\\
-1 \!\!& -1 \!\!& 1
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
-1 \!\!& -1 \!\!& 1\\
2 \!\!& 2 \!\!& -1\\
0 \!\!& 0 \!\!& 0
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
-1 \!\!& -1 \!\!& 1\\
0 \!\!& 0 \!\!& 2\\
0 \!\!& 0 \!\!& 0
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 1 \!\!& -1\\
0 \!\!& 0 \!\!& 1\\
0 \!\!& 0 \!\!& 0
\end{pmatrix}
\end{align}

であり,$\dim W(1){=}3{-}\mathrm{rank}(A{-}E){=}3{-}2=1$は重複度$2$と等しくないため,この行列は対角化することはできません。そこで,正規直交基底の生成を再帰的に行う手続きにより上三角化を目指します。

固有ベクトル$\vx_{1}$は$s\neq 0$を用いて

\begin{align}
\vx_{1} &= s(1,-1,0)^{T}
\end{align}

と表されます。$\vx_{1}$を正規化すると$\vu_{1}=(1,-1,0)^{T}/\sqrt{2}$となります。上三角化では,この$\vu_{1}$以外の直交基底を固有値を無視して選びます。次の$\vx_{2}$は$(1,-1,0)^{T}$と直交しさえすればいいため,例えば$\vx_{2}=(1,1,0)^{T}$を選びます。$\vx_{2}$を正規化すると$\vu_{2}=(1,1,0)^{T}/\sqrt{2}$となり,$\vx_{3}$は$\vx_{1}$と$\vx_{2}$の外積から求められます。

\begin{align}
\vx_{3} &= \vx_{1}\times\vx_{2} = (0,0,1)^{T}
\end{align}

$\vx_{3}$を正規化すると$\vu_{3}=(0,0,1)^{T}$となります。ここで,

\begin{align}
U_{1} &= (\vu_{1},\vu_{2},\vu_{3}) =
\begin{pmatrix}
1/\sqrt{2} & 1/\sqrt{2} & 0\\
-1/\sqrt{2} & 1/\sqrt{2} & 0\\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}

は直交行列となり,直交行列の転置は逆行列と等しくなることから,

\begin{align}
A_{1} &= U_{1}^{-1}AU_{1} \\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
-1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
0 \!\!& 0 \!\!& 1
\end{pmatrix}^{T}
\begin{pmatrix}
3 \!\!& 2 \!\!& -1\\
-2 \!\!& -1 \!\!& 1\\
-1 \!\!& -1 \!\!& 2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
-1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
0 \!\!& 0 \!\!& 1
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
1/\sqrt{2} \!\!& -1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
0 \!\!& 0 \!\!& 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
3 \!\!& 2 \!\!& -1\\
-2 \!\!& -1 \!\!& 1\\
-1 \!\!& -1 \!\!& 2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
-1/\sqrt{2} \!\!& 1/\sqrt{2} \!\!& 0\\
0 \!\!& 0 \!\!& 1
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 4 \!\!& -\sqrt{2}\\
0 \!\!& 1 \!\!& 0\\
0 \!\!& -\sqrt{2} \!\!& 2
\end{pmatrix}
\end{align}

となります。第一列は固有値$1$に対応する固有ベクトルを配置したため$U_{1}^{-1}AU_{1}$の第一列は$(1,0,0)^{T}$となっていますが,第二列と第三列は適当なベクトルを用意したため固有値に対応していません。

このタイミングでたまたま$U_{1}^{-1}AU_{1}$が上三角行列となることもありますが,その場合はこれ以降の操作は不要です。

上三角化されなかった小行列

\begin{align}
\tilde{A}_{1} &=
\begin{pmatrix}
1 & 0\\
-\sqrt{2} & 2
\end{pmatrix}
\end{align}

に対し,先ほどまでの手続きを適用します。再度固有方程式を立ててもよいのですが,$\vu_{1}$は固有値$1$の重解の片方に対応する固有ベクトルでした。そこで,残りの固有値$1,2$のうち固有値$1$に対応する$A_{1}$の固有ベクトルを定義から求めます。

\begin{align}
\tilde{A}_{1} - E
&=
\begin{pmatrix}
0 & 0\\
-\sqrt{2} & 1
\end{pmatrix}
\end{align}

となることに注意すると,固有ベクトル$\vx_{1}$は$s\neq 0$を用いて

\begin{align}
\vx_{1} &= s(1,\sqrt{2})^{T}
\end{align}

と表されます。$\vx_{1}$を正規化すると$\vu_{1}=(1,\sqrt{2})^{T}/\sqrt{3}$となります。$\vx_{1}$と直交する適当なベクトルを選ぶと$\vx_{2}=(-\sqrt{2},1)$となり,$\vx_{2}$を正規化すると$\vu_{2}=(-\sqrt{2},1)^{T}/\sqrt{3}$となります。$\vu_{1},\vu_{2},\vu_{3}$を並べた行列を$\tilde{U}_{2}$,それを「拡張」した行列を$U_{2}$とおくと,

\begin{align}
U_{2} &=
\begin{pmatrix}
1 & O\\
O & \tilde{U}_{2}
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1/\sqrt{3} & -\sqrt{2}/\sqrt{3}\\
0 & \sqrt{2}/\sqrt{3} & 1/\sqrt{3}
\end{pmatrix}
\end{align}

となり,$U_{2}$は直交行列となります。直交行列の転置は逆行列と等しくなることから,

\begin{align}
A_{2} &= U_{2}^{-1}A_{1}U_{2}\\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 0\!\! & 0\\
0 \!\!& 1/\sqrt{3} \!\!& -\sqrt{2}/\sqrt{3}\\
0 \!\!& \sqrt{2}/\sqrt{3} \!\!& 1/\sqrt{3}
\end{pmatrix}^{T}
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 4 \!\!& -\sqrt{2}\\
0 \!\!& 1 \!\!& 0\\
0 \!\!& -\sqrt{2} \!\!& 2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 0 \!\!& 0\\
0 \!\!& 1/\sqrt{3} \!\!& \sqrt{2}/\sqrt{3}\\
0 \!\!& -\sqrt{2}/\sqrt{3} \!\!& 1/\sqrt{3}
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 0 \!\!& 0\\
0 \!\!& 1/\sqrt{3} \!\!& -\sqrt{2}/\sqrt{3}\\
0 \!\!& \sqrt{2}/\sqrt{3} \!\!& 1/\sqrt{3}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 4 \!\!& -\sqrt{2}\\
0 \!\!& 1 \!\!& 0\\
0 \!\!& -\sqrt{2} \!\!& 2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 0 \!\!& 0\\
0 \!\!& 1/\sqrt{3} \!\!& -\sqrt{2}/\sqrt{3}\\
0 \!\!& \sqrt{2}/\sqrt{3} \!\!& 1/\sqrt{3}
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
1 \!\!& 2/\sqrt{3} \!\!& -5\sqrt{6}/3\\
0 \!\!& 1 \!\!& \sqrt{2}\\
0 \!\!& 0 \!\!& 2
\end{pmatrix}
\end{align}

となり,上三角化が完了しました。このとき,上三角化された行列$A_{2}$は

\begin{align}
A_{2} &= U_{2}^{-1}A_{1}U_{2}
= U_{2}^{-1}U_{1}^{-1}AU_{1}U_{2}
= (U_{1}U_{2})^{-1}A(U_{1}U_{2})
\end{align}

となるため,$U=U_{1}U_{2}$とおけば$U^{-1}AU$が上三角行列となります。

4.について

下記の行列を対角化せよ。対角化できない場合はジョルダン標準形に変形せよ。

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
-1 & -1 & -2 & 1\\
5 & 4 & 4 & -1\\
1 & 0 & 2 & -1\\
-3 & -1 & -2 & 3
\end{pmatrix}
\end{align}

固有多項式を基本変形を用いて計算すると

\begin{align}
\begin{vmatrix}
-1-\lambda & -1 & -2 & 1\\
5 & 4-\lambda & 4 & -1\\
1 & 0 & 2-\lambda & -1\\
-3 & -1 & -2 & 3-\lambda
\end{vmatrix}
&= (\lambda-2)^{4} = 0
\end{align}

となるため,$\lambda=2$ (四重解)となります。対角化可能性を調べるため,$\lambda=2$に対応する固有ベクトルを定義から求めます。

\begin{align}
A - 2E &=
\begin{pmatrix}
-3 & -1 & -2 & 1\\
5 & 2 & 4 & -1\\
1 & 0 & 0 & -1\\
-3 & -1 & -2 & 1
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & -1\\
0 & 1 & 2 & 2\\
0 & 0 & 0 & 0\\
0 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\label{A-2E}
\end{align}

となり,$\dim W(2){=}4{-}\mathrm{rank}(A{-}2E){=}4{-}2=2$は重複度$4$と等しくないため,この行列は対角化することはできません。そこで,ジョルダン標準形$J$への変形を目指します。

$\dim W(2){=}2$より固有値$2$に属するジョルダン細胞の個数は$2$であるため,$J$の候補としては

\begin{align}
J_{1} &=
\left(
\begin{array}{cc:cc}
2 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 2 & 0 & 0 \\
\hdashline
0 & 0 & 2 & 1 \\
0 & 0 & 0 & 2
\end{array}
\right),\quad
J_{2} =
\left(
\begin{array}{c:ccc}
2 & 0 & 0 & 0 \\
\hdashline
0 & 2 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 2 & 1 \\
0 & 0 & 0 & 2
\end{array}
\right)
\end{align}

が考えられます。$J_{1}$と$J_{2}$について,対角化における正則な変換行列$P$が存在するかどうかを確認します。まず$J_{1}$について,変換行列を$P=(\vp_{1},\vp_{2},\vp_{3},\vp_{4})$に対し対角化の手続きに従えば$AP=PJ_{1}$が成り立つため,

\begin{align}
AP &= PJ_{1} = (2\vp_{1}, \vp_{1}+2\vp_{2}, 2\vp_{3}, \vp_{3}+2\vp_{4})
\end{align}

が得られます。これを整理すると

\begin{cases}
(A-2E)\vp_{1} = 0\\[0.7em]
(A-2E)\vp_{2} = \vp_{1}\\[0.7em]
(A-2E)\vp_{3} = 0\\[0.7em]
(A-2E)\vp_{4} = \vp_{3}
\end{cases}

となるため,$\vp_{1},\vp_{2},\vp_{3},\vp_{4}$が存在するためには

\begin{cases}
(A-2E)\vx = 0\\[0.7em]
(A-2E)\vy = \vx
\end{cases}

を満たす$\vx,\vy$が存在する必要があります。$(A-2E)\vx = 0$について,$\vx=(x_{1},x_{2},x_{3},x_{4})^{T}$に対して$x_{3}=t,x_{4}=s$とおくと,$A-2E$の基本変形の結果($\ref{A-2E}$)より,

\begin{align}
\vx &= (s, -2s-2t, t, s)^{T}\label{vx}
\end{align}

となります。続いて,得られた$\vx$を用いると$(A-2E)\vy=\vx$の拡大係数行列は

\begin{align}
\begin{pmatrix}
-3 & -1 & -2 & 1 & s\\
5 & 2 & 4 & -1 & -2s-2t\\
1 & 0 & 0 & -1 & t\\
-3 & -1 & -2 & 1 & s
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & -1 & t\\
0 & 1 & 2 & 2 & -s-3t\\
0 & 0 & 0 & 0 & -t\\
0 & 0 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\label{連立}
\end{align}

と基本変形できます。この連立方程式が解をもつならば$t=0$となりますが,$s=0$のときは

\begin{align}
\vx &=
\begin{pmatrix}
0\\
-t\\
0\\
0
\end{pmatrix}
=
t\begin{pmatrix}
0\\
-1\\
0\\
0
\end{pmatrix}
\end{align}

となり,$\vp_{1}$と$\vp_{3}$が線形従属となるため,$P$が正則ではなくなり不適です。同様に,$J_{2}$について,対角化の手続きに従えば$AP=PJ_{2}$が成り立つため,

\begin{align}
AP &= PJ_{2} = (2\vp_{1}, 2\vp_{2}, \vp_{2}+2\vp_{3}, \vp_{3}+2\vp_{4})
\end{align}

が得られます。これを整理すると

\begin{cases}
(A-2E)\vp_{1} = 0\\[0.7em]
(A-2E)\vp_{2} = 0\\[0.7em]
(A-2E)\vp_{3} = \vp_{2}\\[0.7em]
(A-2E)\vp_{4} = \vp_{3}
\end{cases}

となりますが,先ほどとは異なり$2$つの式にまとめることはできなさそうです。そこで,これらの式を満たすような$\vp_{1},\vp_{2},\vp_{3},\vp_{4}$を求めます。式($\ref{vx}$)が$(A-2E)\vx = 0$の解であること,および式($\ref{vx}$)が

\begin{align}
\vx &=
s
\begin{pmatrix}
1\\
-2\\
0\\
1
\end{pmatrix}
+ t
\begin{pmatrix}
0\\
-2\\
1\\
0
\end{pmatrix}
\end{align}

のように線形独立な$2$つのベクトルの和で表すことができる点に注意すると,$\vp_{1}$として$(s,t)=(1,0)$を代入して得られるベクトル,$\vp_{2}$として$(s,t)=(0,1)$を代入して得られるベクトルを選べばよく,

\begin{align}
\vp_{1} &=
\begin{pmatrix}
1\\
-2\\
0\\
1
\end{pmatrix},\quad
\vp_{2} =
\begin{pmatrix}
0\\
-2\\
1\\
0
\end{pmatrix}
\end{align}

となります。式($\ref{連立}$)の基本変形の結果は$(A-2E)\vy{=}\vx$の解であるため,$(s,t)=(0,1)$を代入すれば$\vx=\vp_{2}$となり,$\vy$として得られるベクトルが$\vp_{3}$となることが分かります。$(s,t)=(0,1)$を代入すると,

\begin{align}
\vp_{3} &=
\begin{pmatrix}
1\\
-1\\
-1\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}

が得られます。$(A-2E)\vp_{4}=\vp_{3}$で$\vp_{2}$に関しては基本変形の結果が得られていないため,愚直に計算するしかないです。拡大係数行列を基本変形すると

\begin{align}
&\begin{pmatrix}
-3 & -1 & -2 & 1 & 1\\
5 & 2 & 4 & -1 & -1\\
1 & 0 & 0 & -1 & -1\\
-3 & -1 & -2 & 1 & 1
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & -1 & -2 & -3 & -3\\
5 & 2 & 4 & -1 & -1\\
1 & 0 & 0 & -1 & -1\\
-3 & -1 & -2 & 1 & 1
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&\rarr
\begin{pmatrix}
1 & -1 & -2 & -3 & -3\\
0 & 7 & 14 & 14 & 14\\
0 & 1 & 2 & 2 & 2\\
0 & -4 & -8 & -8 & -8
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & -1 & -2 & -3 & -3\\
0 & 1 & 2 & 2 & 2\\
0 & 0 & 0 & 0 & 0\\
0 & 0 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & -1 & -1\\
0 & 1 & 2 & 2 & 2\\
0 & 0 & 0 & 0 & 0\\
0 & 0 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}

となるため,$\vp_{4}=(p_{1},p_{2},p_{3},p_{4})$とおくと

\begin{cases}
p_{1}-p_{4} = -1\\[0.7em]
p_{2}+2p_{3}+2p_{4} = 2
\end{cases}

が得られます。これを満たす$\vp_{4}$を適当に探すと

\begin{align}
\vp_{4} &=
\begin{pmatrix}
0\\
2\\
-1\\
1
\end{pmatrix}
\end{align}

となります。以上より,求める答えは

\begin{align}
P &= (\vp_{1},\vp_{2},\vp_{3},\vp_{4}) =
\begin{pmatrix}
0 & 1 & 1 & 0\\
-2 & -2 & -1 & 2\\
1 & 0 & -1 & -1\\
0 & 1 & 1 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}

となります。

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