【数検1級対策】3次方程式の解法(カルダノの公式)

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

3次方程式の解法(カルダノの公式)

両辺を$x^{3}$の係数$a_{0}\neq 0$で割ることで,$3$次方程式は

\begin{align}
x^{3}+ax^{2}+bx+c &= 0
\end{align}

という形になる。$x=y-a/3$とおくと$x^{2}$の項を消去することができ,

\begin{align}
y^{3}+py+q &= 0
\end{align}

という形に帰着する。$y=u+v$とおくと,

\begin{align}
u^{3}+v^{3}+q+3(u+v)\left(uv+\frac{p}{3}\right) &= 0\label{変数追加後}
\end{align}

という形に帰着するが,仮にこのとき

\begin{cases}
u^{3}+v^{3} + q = 0\\[0.7em]
\displaystyle
uv+\frac{p}{3} = 0\label{十分条件}
\end{cases}

を満たす$(u,v)$が見つかれば,手続きを逆に辿ることにより$x$を定めることができる。しかしながら,式($\ref{十分条件}$)は式($\ref{変数追加後}$)の十分条件でしかない。$(u,v)$が$3$通り存在すれば必要性が担保できるが,解と係数の関係より式($\ref{十分条件}$)は解をもち,かつ代数学の基本定理より$3$次方程式($\ref{十分条件}$)は重複も含めて$3$つの複素数解をもつため,式($\ref{十分条件}$)は式($\ref{変数追加後}$)の必要十分条件となる。$r{=}q^{2}/4{+}p^{3}/27$とおいて式($\ref{十分条件}$)を整理すると,

\begin{align}
u^{3} = -\frac{q}{2}+\sqrt{r},\quad
v^{3} = -\frac{q}{2}-\sqrt{r}
\end{align}

が得られる。ここで,

\begin{align}
\omega &= \frac{-1+\sqrt{3}}{2}
\end{align}

とおくと,$\omega$は$2\pi/3$回転を表す複素数であり,例えば$a$の三乗根は$\sqrt[3]{a}$だけでなく$\omega\sqrt[3]{a}$と$\omega^{2}\sqrt[3]{a}$も存在することになる。式($\ref{十分条件}$)で$uv$の値が定められていることに注意すると,$u$と$v$の積には$\omega$が残ってはならないため,$(u,v)$の組としては

\begin{cases}
\displaystyle
u = \sqrt[3]{-\frac{q}{2}+\sqrt{r}},
&\displaystyle
v = \sqrt[3]{-\frac{q}{2}-\sqrt{r}}\\[0.7em]
\displaystyle
u = \omega\sqrt[3]{-\frac{q}{2}+\sqrt{r}},
&\displaystyle
v = \omega^{2}\sqrt[3]{-\frac{q}{2}-\sqrt{r}}\\[0.7em]
\displaystyle
u = \omega^{2}\sqrt[3]{-\frac{q}{2}+\sqrt{r}},
&\displaystyle
v = \omega\sqrt[3]{-\frac{q}{2}-\sqrt{r}}\\[0.7em]
\end{cases}

が得られる。これより$y$が得られ,結果として$x$が得られる。

具体例を通して理解しましょう。

具体例

下記の$3$次方程式を解け。

\begin{align}
x^{3} + 3x^{2} - 3 &= 0
\end{align}

解答

$x^{2}$の項を消すために$x=y-1$とおくと,

\begin{align}
(y-1)^{3}+3(y-1)^{2}-3
&= (y^{3}-3y^{2}+3y-1)+(3y^{2}-6y+3)-3\\[0.7em]
&= y^{3}-3y-1 = 0
\end{align}

となります。ここで,$y=u+v$とおくと

\begin{align}
(u+v)^{3}-3(u+v)-1
&= (u^{3}+3u^{2}v+3uv^{2}+v^{3})-3(u+v)-1\\[0.7em]
&= u^{3}+v^{3}-1+3(u+v)(uv-1) = 0
\end{align}

となります。次の連立方程式

\begin{cases}
u^{3} + v^{3} -1 = 0\\[0.7em]
uv - 1 = 0\label{十分条件_例}
\end{cases}

を満たす$(u,v)$は求める条件の十分条件ですが,解と係数の関係より$(u^{3},v^{3})$は

\begin{align}
t^{2} - t + 1 &= 0\label{解と係数の関係}
\end{align}

の解となり,代数学の基本定理より連立方程式からは$3$次方程式には重複も含めて$3$組の複素数解が存在するため,式($\ref{十分条件_例}$)は必要十分条件となります。式($\ref{解と係数の関係}$)を解いてオイラーの公式により変形すると,

\begin{align}
t
&= \frac{1\pm\sqrt{3}i}{2} = \cos\left(\pm\frac{\pi}{3}\right)+i\sin\left(\pm\frac{\pi}{3}\right)
= e^{\pm i\pi/3}
\end{align}

となります。$u,v$は勝手に定めた変数であることに注意すると$(u^{3},v^{3})$の組はどちらでもよく,

\begin{align}
u^{3} = e^{i\pi/3},\quad
v^{3} = e^{-i\pi/3}\label{u_v_3乗}
\end{align}

とおくと,これを満たす$1$組の$(u,v)$は

\begin{align}
u_{1} = e^{i\pi/9},\quad
v_{1} = e^{-i\pi/9}\label{u_0_v_0}
\end{align}

となります。

$3$回転して$\pi/3$となる弧度は複数存在する点に注意です。

ここで,$1$の三乗根を$\omega$とおくと$\omega=e^{i(2\pi/3)}$と表され,$z=\alpha^{3}$の$3$つの解は$\sqrt[3]{\alpha},\omega\sqrt[3]{\alpha},\omega^{2}\sqrt[3]{\alpha}$となること,および$uv=1$であることに注意すると,式($\ref{u_v_3乗}$)を満たす$3$組の$(u,v)$は

\begin{align}
(u,v) =
(u_{1}, v_{1}),~
(\omega u_{1}, \omega^{2} v_{1}),~
(\omega^{2} u_{1}, \omega v_{1})
\end{align}

となります。$y_{1}=u_{1}+v_{1}$とおくと,

\begin{align}
y_{1} &= 2\cos\frac{\pi}{9}
\end{align}

となります。ただし,

\begin{align}
\cos\theta &= \frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}
\end{align}

を利用しました。このとき,$\omega$が$2\pi/3$回転を表す複素数であることに注意すると

\begin{align}
y_{2}
&= e^{i(2\pi/3)}u_{1} + e^{i(4\pi/3)}v_{1} = e^{i(2\pi/3)}e^{i\pi/9} + e^{i(-2\pi/3)}e^{-i\pi/9}\\[0.7em]
&= e^{i(7\pi/9)}+e^{-i(7\pi/9)} = 2\cos\frac{7\pi}{9}
\end{align}

および

\begin{align}
y_{3}
&= e^{i(4\pi/3)}u_{1} + e^{i(2\pi/3)}v_{1} = e^{i(4\pi/3)}e^{i\pi/9} + e^{i(-4\pi/3)}e^{-i\pi/9}\\[0.7em]
&= e^{i(13\pi/9)}+e^{-i(13\pi/9)} = 2\cos\frac{13\pi}{9}
\end{align}

が得られるため,$x=y-1$より,

\begin{cases}
\displaystyle
x_{1} = y_{1}-1 = 2\cos\frac{\pi}{9} - 1\\[0.7em]
\displaystyle
x_{2} = y_{2}-1 = 2\cos\frac{7\pi}{9} - 1\\[0.7em]
\displaystyle
x_{3} = y_{3}-1 = 2\cos\frac{13\pi}{9} - 1
\end{cases}

となります。

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