【数検1級対策】逆行列の求め方の定石

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

逆行列の求め方の定石

逆行列は掃き出し法を用いて求めるのが基本。オプションとして余因子行列を用いる。

「逆行列は掃き出し法で求める」が基本的なスタンスです。

詳細

掃き出し法とは,$n$次元正方行列$A$が正則のときに$n\times 2n$行列$(A E)$に行基本変形を適用して$(E B)$に変形することにより,$B=A^{-1}$となることを利用する方法です。また,余因子行列を$\tilde{A}$とおくと,

\begin{align}
A^{-1} &= \frac{1}{|A|}\tilde{A}
\end{align}

となることを利用します。

$(A E)$には行基本変形のみが許されている点に注意してください。列基本変形は厳禁です。

具体例

下記の行列の逆行列を求めよ。

\begin{align}
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1\\
2 & 3 & 4\\
3 & 5 & 10
\end{pmatrix}
\end{align}

解答

掃き出し法を用いた場合

行列式の求め方の定石より$A$の行列式を求めると$3$となるため$A$は正則となります。よって掃き出し法を適用することができ,

\begin{align}
&\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 0\\
2 & 3 & 4 & 0 & 1 & 0\\
3 & 5 & 10 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 2 & -2 & 1 & 0\\
0 & 2 & 7 & -3 & 0 & 1
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -1 & 3 & -1 & 0\\
0 & 1 & 2 & -2 & 1 & 0\\
0 & 0 & 3 & 1 & -2 & 1
\end{pmatrix}
\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -1 & 3 & -1 & 0\\
0 & 1 & 2 & -2 & 1 & 0\\
0 & 0 & 1 & 1/3 & -2/3 & 1/3
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&\rarr
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 10/3 & -5/3 & 1/3\\
0 & 1 & 0 & -8/3 & 7/3 & -2/3\\
0 & 0 & 1 & 1/3 & -2/3 & 1/3
\end{pmatrix}
\end{align}

となります。したがって,

\begin{align}
A^{-1}
&= \frac{1}{3}
\begin{pmatrix}
10 & -5 & 1\\
-8 & 7 & -2\\
1 & -2 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}

が得られます。

行列式のノリで$1/3$を$3$列分 or $3$行分くくり出して$1/27$としないように注意してください。

余因子行列を用いた場合

行列式の求め方の定石より$A$の行列式を求めると$3$となるため$A$は正則となります。余因子行列の各要素は

\begin{align}
\tilde{a}_{11}=
\begin{vmatrix}
3 & 4\\
5 & 10
\end{vmatrix} = 10,\quad
\tilde{a}_{12}= -
\begin{vmatrix}
2 & 4\\
3 & 10
\end{vmatrix} = -8,\quad
\tilde{a}_{13}=
\begin{vmatrix}
2 & 3\\
3 & 5
\end{vmatrix} = 1,\\[0.7em]
\tilde{a}_{21}= -
\begin{vmatrix}
1 & 1\\
5 & 10
\end{vmatrix} = -5,\quad
\tilde{a}_{22}=
\begin{vmatrix}
1 & 1\\
3 & 10
\end{vmatrix} = 7,\quad
\tilde{a}_{23}= -
\begin{vmatrix}
1 & 1\\
3 & 5
\end{vmatrix} = -2,\\[0.7em]
\tilde{a}_{31}=
\begin{vmatrix}
1 & 1\\
3 & 4
\end{vmatrix} = 1,\quad
\tilde{a}_{32}= -
\begin{vmatrix}
1 & 1\\
2 & 4
\end{vmatrix} = -2,\quad
\tilde{a}_{33}=
\begin{vmatrix}
1 & 1\\
2 & 3
\end{vmatrix} = 1,\\[0.7em]
\end{align}

となるため,

\begin{align}
A^{-1}
&= \frac{1}{|A|}
\begin{pmatrix}
\tilde{a}_{11} & \tilde{a}_{21} & \tilde{a}_{31}\\
\tilde{a}_{12} & \tilde{a}_{22} & \tilde{a}_{32}\\
\tilde{a}_{13} & \tilde{a}_{23} & \tilde{a}_{33}
\end{pmatrix}
= \frac{1}{3}
\begin{pmatrix}
10 & -5 & 1\\
-8 & 7 & -2\\
1 & -2 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}

が得られます。

余因子行列の各要素は添え字は転置されていることに十分注意してください。

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