【初学者向け】完全微分方程式

本稿では,代表的な微分方程式の解法をお伝えします。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

完全微分方程式

次の形をした微分方程式を,完全微分方程式と呼びます。

\begin{align}
F_x(x, y) dx + F_y(x, y)dy &= P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0
\end{align}

左辺は関数$F(x, y)$の全微分と呼ばれています。 関数$F(x, y)$の全微分は関数$F(x, y)$の一次近似を意味しており,特に二変数関数の全微分は接平面を表しています。

解法

完全微分方程式は,次のように解くことができます。

  • $I = \int P(x, y)dx$と$J = \int Q(x, y)dy$を計算する
  • 以下のいずれかを計算する
    • $J$の項のうち$y$のみを含む項を$I$に加えたものが全微分$F(x, y)$
    • $I$の項のうち$x$のみを含む項を$J$に加えたものが全微分$F(x, y)$
  • 一般解は$F(x, y)=C$になる

上記解法を導きます。全微分は関数$F(x, y)$の微小変化量を表していますので,

\begin{align}
dF(x, y)
&= F_x(x, y) dx + F_y(x, y)dy
= 0
\end{align}

と書けます。$F$を微分して$0$になるということは,$F$は定数でなくてはいけません。したがって,一般解は以下のような形になります。

\begin{align}
F(x, y) &= C
\end{align}

大切なのは,与えらえた微分方程式が完全微分方程式であるかどうかの判定です。完全微分方程式でない場合には,ある工夫をして完全微分方程式に変換させる必要があります。まずは前者,つまり与えられた微分方程式が完全微分方程式であるかどうかの判断方法をお伝えします。$y$の一階微分に関して,次の関係式が得られたとします。

\begin{align}
\frac{dy}{dx} &= -\frac{P(x, y)}{Q(x, y)}
\end{align}

このような形にならない微分方程式は完全微分方程式の範疇ではありません。

少し変形してみましょう。

\begin{align}
P(x, y)dx + Q(x, y)dy &= 0
\end{align}

もしこの方程式が完全微分方程式(完全系)であるかを判定します。完全系の定義は次の通りです。

$P(x, y)dx + Q(x, y)dy = 0$が完全形というのは,

$F_x(x, y)=P(x, y)$かつ$F_y(x, y)=Q(x, y)$となる$F(x, y)$が存在すること ($\ast$)

として定義される。

さて,条件($\ast$)を満たすような$F(x, y)$の存在判定はどのように行えばよいのでしょうか。少し天下り的ですが,以下の定理が非常に便利です。

$P(x, y)dx + Q(x, y)dy = 0$が完全形となる$F(x, y)$が存在するための必要十分条件は,

\begin{align}
P_y(x, y) &= Q_x(x, y)\label{完全系の必要十分条件}
\end{align}

が成り立つことである。

この定理の証明は難しくないのですが,今回は厳密な証明は行わず,条件($\ast$)を満たす$F$を探す道中で自然に式(\ref{完全系の必要十分条件})が出てくることを確認します。条件($\ast$)の前半部分

\begin{align}
F_x(x, y) &= P(x, y)
\end{align}

の両辺を$x$で積分すると,

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y)
\end{align}

となります。私たちの目的は$F(x, y)$を求めることでしたので,上の式から$G(y)$を求めることができれば$F(x, y)$も計算できることが分かります。まだ使っていない条件($\ast$)の後半部分$F_y=Q$に代入すると,

\begin{align}
\frac{dG(y)}{dy} &= Q(x, y) - \frac{\partial}{\partial y} \int P(x, y) dx\\[0.7em]
G(y) &= \int \left\{ Q(x, y) - \frac{\partial}{\partial y}\int P(x, y)dx \right\}dy\label{G(y)}
\end{align}

となります。$G(y)$は$y$だけの関数として導入したものですので,右辺の被積分関数には$x$が含まれてはなりません。この条件こそが,先ほどの必要十分条件式($\ref{完全系の必要十分条件}$)に相当します。被積分関数に$x$が含まれないという条件を「$x$で偏微分して$0$になる」と言い換えると,

\begin{align}
\frac{\partial}{\partial x} \left\{ Q(x, y) - \frac{\partial}{\partial y}\int P(x, y)dx \right\}
&= \frac{\partial}{\partial x} \left\{ Q(x, y) - \int \frac{\partial}{\partial y} P(x, y)dx \right\} \\[0.7em]
&= \frac{\partial}{\partial x} \left\{ Q(x, y) - \int P_y(x, y)dx \right\} \\[0.7em]
&= Q_x(x, y) - P_y(x, y)
= 0
\end{align}

のように必要十分条件式($\ref{完全系の必要十分条件}$)が導出されました。

途中で積分と偏微分$\partial /\partial y$の順序交換をしましたが,これは$P(x, y)$が$x$と$y$に関して連続で$y$について微分可能という前提がないと許されない式変形です。$P(x, y)$があまりにも特殊な関数の場合は今回の議論を適用できないのですが,私たちが問題で解く微分方程式としては$P(x, y)$が$x$と$y$に関して連続で$y$について微分可能である場合がほとんどです。

式($\ref{G(y)}$)の被積分関数に$x$が含まれないということは,$Q(x, y)$のうち$x$を含む項は$\partial\int P(x, y)dx/\partial y$の$x$を含む項によって相殺されてしまうということなのです。式($\ref{G(y)}$)を変形すると

\begin{align}
G(y) &= \int Q(x, y) dy - \int P(x, y)dx
\end{align}

となることに注意すると,$\int P(x, y)dx$には$x$を含む項しか存在しないため,結局$G(y)$は$\int Q(x, y)dy$のうち$y$のみを含む項とすることができます。

完全微分方程式の解き方を再掲しておきます。

  • $I = \int P(x, y)dx$と$J = \int Q(x, y)dy$を計算する
  • 以下のいずれかを計算する
    • $J$の項のうち$y$のみを含む項を$I$に加えたものが全微分$F(x, y)$
    • $I$の項のうち$x$のみを含む項を$J$に加えたものが全微分$F(x, y)$
  • 一般解は$F(x, y)=C$になる

「$y$のみを含む」と「$x$のみを含む」が$I,J$どちらなのかという部分がややこしいです。ここまでの議論を遡れば分かる話ですが,毎回導出するのは骨が折れます。そこで,次のように覚えておくと便利かもしれません。

  • 与えられた微分方程式が完全形かどうかを判別する必要十分条件はクロス
  • $F(x, y)$の求め方はそのまま

「クロス」というのは「$P$は$y$で微分して$Q$は$x$で微分する」ことを意味しています。「そのまま」というのは「$P$を$x$で積分したものに$Q$を$y$で積分したもののうち$y$のみを含む項を加える」ことを意味しています。$F$の求め方に関しては,

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y) \\[0.7em]
F(x, y) &= \int Q(x, y)dy + H(x)
\end{align}

を$2$つとも計算し,その結果を比較して$G(y)$と$H(x)$を求める方法でも解くことができます。ただし,$\int P dx$や$\int Q dy$を計算する際は積分定数はなくてもよいです。これらの式は,微分方程式が完全形のときは「$P(x, y)$が$F_x$,$Q(x, y)$が$F_y$を表していること」を思い出せば自然と出てくる式です。

ここで「そもそも与えられた式が完全形でなかったらどうするのだ」と疑問に思う方もおられるでしょう。その場合は積分因子と呼ばれる関数$\lambda(x, y)$を両辺に掛けることで無理矢理にでも完全形にします。ただし,一般の積分因子を求めるのは困難なので,ほとんどの場合$\lambda(x, y)$を見つけやすいような$P(x, y)$,$Q(x, y)$が与えられています。

与えられた式が完全形でない場合を考えます。両辺に$\lambda(x, y)$を掛けます。

\begin{align}
P(x, y)\lambda(x, y)dx + Q(x, y)\lambda(x, y) dy &= 0
\end{align}

この微分方程式が完全形である必要十分条件は以下の通りです。

\begin{align}
\frac{\partial}{\partial y}\left\{ P(x, y)\lambda(x, y) \right\} &= \frac{\partial}{\partial x}\left\{ Q(x, y)\lambda(x, y) \right\} \\[0.7em]
P_y\lambda + P\lambda_y &= Q_x\lambda + Q\lambda_x \label{積分因子の条件}
\end{align}

式($\ref{積分因子の条件}$)を満たす$\lambda(x, y)$を見つけ出すのは大変です。しかし,ほとんどの場合はこの式($\ref{積分因子の条件}$)を満たす$\lambda(x, y)$が簡単に見つかります。というのも,以下の2パターンが出題されることが多いからです。

  • $\lambda_x = 0$かつ$(Q_x - P_y) / P = G(y)$のケース
  • $\lambda_y = 0$かつ$(P_y - Q_x) / Q = H(x)$のケース

この2つのケースは覚える必要はありません。積分因子を一般的に求めることが難しいとなったときに「$\lambda_x{=}0$か$\lambda_y{=}0$だったら嬉しい」と思い付くことが重要です。それぞれを適用し,前者は$(Q_x{-}P_y)/P{=}G(y)$で後者は$(P_y{-}Q_x)/Q{=}H(x)$を計算する点がポイントです。

$\lambda_x{=}0$かつ$(Q_x{-}P_y) / P{=}G(y)$のケースでは,式($\ref{積分因子の条件}$)は以下のようになります。

\begin{align}
P_y\lambda + P\lambda_y &= Q_x\lambda \\[0.7em]
\frac{d\lambda}{dy} &= \frac{Q_x - P_y}{P}\lambda \\[0.7em]
\frac{d\lambda}{dy} &= G(y)\lambda \\[0.7em]
\int \frac{1}{\lambda} d\lambda &= \int G(y) dy \\[0.7em]
\log |\lambda| &= \int G(y) dy \\[0.7em]
\lambda &= e^{\int G(y)dy}
\end{align}

変数分離形の微分方程式に帰着しました。ただし,$\int G(y)dy$を計算する場合に積分定数は必要ないことも把握しておきましょう。$\lambda_y{=}0$かつ$(P_y{-}Q_x)/Q{=}H(x)$のケースでは,同様に式($\ref{積分因子の条件}$)は以下のようになります。

\begin{align}
P_y\lambda &= Q_x\lambda + Q\lambda_x \\[0.7em]
\lambda &= e^{\int H(x)dx}
\end{align}

変数分離形の微分方程式に帰着しました。ただし,$\int H(x)dx$を計算する場合に積分定数は必要ないことも把握しておきましょう。このような特別な場合に限り,積分因子が簡単に求められるのです。

与えられた微分方程式が完全形でない場合,どちらのケースで解くことを求められているのを意識しましょう。数検1級の範疇では完全形でなく,かつどちらのケースでもない問題はほぼ出題されないでしょう。

例題

以下では,$2$つのパターンの例題を通して完全微分方程式の解法を確認します。

パターン1

次の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため定数項はそのまま残してよいです。

\begin{align}
(3x^2 + \cos y) dx &= (-2y+x\sin y) dy
\end{align}

$(3x^2 + \cos y)_{y}=(2y-x\sin y)_{x}=-\sin y$が成り立つため,与えられた微分方程式は完全形となります。今回は$F(x, y)$の候補を$2$つとも計算して,その結果を比較して$G(y)$と$H(x)$を求める方法で解きます。

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y)
= x^3 + x\cos y + G(y) \\[0.7em]
F(x, y) &= \int Q(x, y)dy + H(x)
=y^2 + x\cos y + H(x)
\end{align}

ただし,積分定数は省略できることを利用しています。二つの式の比較により,

\begin{align}
G(y) &= y^{2},\quad H(x) = x^{3}
\end{align}

が分かります。したがって,求める解は

\begin{align}
F(x, y) &= x^3 + x\cos y + y^2 = C
\end{align}

となります。

パターン2

次の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため適切な定数項を設定します。

\begin{align}
(y + \log x)dx + x\log x dy &= 0
\end{align}

$(y + \log x)_y \neq (x\log x)_x$より,当たられた微分方程式は完全形ではありません。そこで,積分因子を掛けて完全形に変形することを考えます。成り立つと嬉しい仮定として$\lambda_{x}=0$と$\lambda_{y}=0$がありました。それぞれの仮定で$P(x, y)$と$Q(x, y)$が満たしていて欲しい条件が変わってきますから,まずはそれを思い出します。$\lambda_x=0$のときは,完全形の必要十分条件より

\begin{align}
P_y\lambda + P\lambda_y &= Q_x \lambda \\[0.7em]
\lambda_y &= \frac{Q_x - P_y}{P} \lambda
\end{align}

となり,$(Q_x - P_y) / P$が$y$だけの関数になってくれていれば変数分離形として積分因子を求めることができます。実際に確認してみましょう。

\begin{align}
\frac{Q_x - P_y}{P} &= \frac{(\log x + 1) - 1}{y + \log x}
\end{align}

これは,残念ながら$x$の項が残ってしまいました。それでは,$\lambda_y=0$のケースを考えてみましょう。

\begin{align}
P_y\lambda &= Q_x\lambda + Q\lambda_x \\[0.7em]
\lambda_x &= \frac{P_y - Q_x}{Q}\lambda
\end{align}

$(P_y - Q_x) / Q$が$x$だけの関数になっていれば変数分離形として積分因子を求めることができます。こちらも確認してみましょう。

\begin{align}
\frac{P_y - Q_x}{Q} &= \frac{1 - (1 + \log x)}{x\log x}
= -\frac{1}{x}
\end{align}

無事,$x$だけの関数になりました。したがって,積分因子は以下の通りになります。

\begin{align}
\lambda_x &= -\frac{1}{x}\lambda \\[0.7em]
\int \frac{1}{\lambda} d\lambda &= -\int \frac{1}{x} dx \\[0.7em]
\log |\lambda| &= -\log |x| \\[0.7em]
\lambda &= \frac{1}{x}
\end{align}

ただし,積分定数は省略できることを利用しました。したがって,与えられた微分方程式は次のような形になります。

\begin{align}
\frac{y + \log x}{x}dx + \log x dy &= 0
\end{align}

先ほどと同様に,$F(x, y)$の候補を$2$つとも計算して$G(y)$と$H(x)$を求めます。

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y)
= y\log x + \frac{1}{2}\left(\log x\right)^2 + G(y) \\[0.7em]
F(x, y) &= \int Q(x, y) dy + H(x)
= y\log x + H(x)
\end{align}

ただし,積分定数は省略できることを利用しました。先ほどと同様に$2$つの式を比較すると,求める解は

\begin{align}
F(x, y) &= y\log x + \frac{1}{2}\left(\log x\right)^2
= C
\end{align}

となります。

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • 見当違いであれば失礼なのですが、質問させていただきます。

    パターン1の場合、左辺=右辺の形になっており、移項をしない状態の符号のまま完全形かどうかを判定しておりますが、(与式)=0の形にして判定する必要はないのでしょうか?

    • tomi様

      ご質問ありがとうございます!そしてご返信遅れてしまい大変失礼しました。こちら確認後返信差し上げますので,少々お待ちください。

    • tomi 様

      ご返信が遅れまして,大変失礼しました。仰る通りですので,問題を修正致しました。ご指摘誠にありがとうございました。

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