【初学者向け】完全微分方程式

zuka

こんにちは。
zuka(@beginaid)です。

本記事では,数学検定1級で頻出の微分方程式についてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

完全微分方程式

完全微分方程式は他の典型的な微分方程式とは少し毛色が異なり,以下のような形をしています。

\begin{align}
F_x(x, y) dx + F_y(x, y)dy &= 0
\end{align}

左辺は関数$F(x, y)$の全微分と呼ばれています。 関数$F(x, y)$の全微分というのは,関数$F(x, y)$の一次近似のことを表していて,特に二変数関数の全微分は接平面を表しています。

解法

完全微分方程式は,以下のように解くことができます。

  • $I = \int P(x, y)dx$と$J = \int Q(x, y)dy$を計算する
  • 以下のいずれかを計算する
    • $J$の項のうち$x$を含まない項を$I$に加えたものが全微分$F(x, y)$
    • $I$の項のうち$y$を含まない項を$J$に加えたものが全微分$F(x, y)$
  • 一般解は$F(x, y)=C$になる

上記結論を導いてみましょう。全微分は関数$F(x, y)$の微小変化量を表していますので,以下のようにかけます。

\begin{align}
dF(x, y) &= F_x(x, y) dx + F_y(x, y)dy \\[0.7em]
&= 0
\end{align}

$F$を微分して$0$になるということは,$F$は定数でなくてはいけません。したがって,一般解は以下のような形になります。

\begin{align}
F(x, y) &= C
\end{align}

問題となるのは,与えらえた微分方程式が完全微分方程式であるかどうかの判定です。もしくは,完全微分方程式でない場合にどのように完全微分方程式に変身させるのかです。まずは前者,つまり与えられた微分方程式が完全微分方程式であるかどうかの判断方法をお伝えしていきます。まず,$y$の一階微分に関して以下の関係式が得られたとします。

\begin{align}
\frac{dy}{dx} &= -\frac{P(x, y)}{Q(x, y)}
\end{align}

このような形にならない微分方程式は完全微分方程式の範疇ではありません。

少し変形してみましょう。

\begin{align}
P(x, y)dx + Q(x, y)dy &= 0
\end{align}

もしこの方程式が完全微分方程式,すなわち完全形であれば先ほどと同じ手続きで解くことができます。

$P(x, y)dx + Q(x, y)dy = 0$が完全形というのは,

$F_x(x, y)=P(x, y)$かつ$F_y(x, y)=Q(x, y)$となる$F(x, y)$が存在すること (*)

として定義される。

さて,条件(*)を満たすような$F(x, y)$の存在判定はどのように行えばよいのでしょうか。少し天下り的ですが,以下の定理が非常に便利です。

$P(x, y)dx + Q(x, y)dy = 0$が完全形となる$F(x, y)$が存在するための必要十分条件は

\begin{align}
P_y(x, y) &= Q_x(x, y)
\end{align}

が成り立つことである。

この定理の証明は難しくないのですが,今回は厳密な証明は行わず,実際に$P_y(x, y) = Q_x(x, y)$を満たす場合に$F(x, y)$が存在することを確認することで定理の有難さを実感するにとどめましょう。

まず,条件(*)から出発しましょう。繰り返しますが,私たちの目的は条件(*)を満たす$F$を探し出すことです。条件(*)自体を式変形していく中で,もし上記必要十分条件が成り立っているとすれば,うまく$F(x, y)$を見つけられることを確認します。条件(*)の前半部分$F_x=P$より

\begin{align}
F_x(x, y) &= P(x, y)
\end{align}

が得られます。両辺を$x$で積分すると,

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y)
\end{align}

となります。私たちの目的は,$F(x, y)$を求めることでしたので,上の式から$G(y)$を求めることができれば$F(x, y)$も計算できることが分かります。まだ使っていない条件(*)の後半部分$F_y=Q$に代入すると,

\begin{align}
\frac{dG(y)}{dy} &= Q(x, y) - \frac{\partial}{\partial y} \int P(x, y) dx\\[0.7em]
G(y) &= \int \left\{ Q(x, y) - \frac{\partial}{\partial y}\int P(x, y)dx \right\}dy
\end{align}

となります。さて,右辺の積分の中身に注目しましょう。先ほどの必要十分条件は,実はこの積分の中身で「$x$を含む項が消えるように」設定された条件なのです。実際に,積分の中身を$x$で偏微分してあげると,$0$になることが確認できます。

\begin{align}
\frac{\partial}{\partial x} \left\{ Q(x, y) - \frac{\partial}{\partial y}\int P(x, y)dx \right\}
&= \frac{\partial}{\partial x} \left\{ Q(x, y) - \int \frac{\partial}{\partial y} P(x, y)dx \right\} \\[0.7em]
&= \frac{\partial}{\partial x} \left\{ Q(x, y) - \int P_y(x, y)dx \right\} \\[0.7em]
&= Q_x(x, y) - P_y(x, y) \\[0.7em]
&= 0
\end{align}

なお,途中で積分と偏微分$\partial /\partial y$の順序交換をしましたが,これは$P(x, y)$が$x$と$y$に関して連続で$y$について微分可能という前提がないと許されない式変形です。ですので,$P(x, y)$があまりにも変な関数の場合は今回の議論を適用できないのですが,私たちが問題で解く微分方程式としては$P(x, y)$が$x$と$y$に関して連続で$y$について微分可能であるという仮定を置いても十分価値のある議論になります。

さて,話を元に戻します。$x$で偏微分して$0$になるということは,偏微分する前の関数には$x$が含まれていなかったということです。見方を変えると,$Q(x, y)$のうち$x$を含む項は$\partial\int P(x, y)dx/\partial y$から出てくる項によって相殺されてしまうということなのです。したがって,$G(y)$は$\int Q(x, y)dy$のうち$x$を含まない項とすることができます。

完全微分方程式の解き方を再掲しておきます。

  • $I = \int P(x, y)dx$と$J = \int Q(x, y)dy$を計算する
  • 以下のいずれかを計算する
    • $J$の項のうち$x$を含まない項を$I$に加えたものが全微分$F(x, y)$
    • $I$の項のうち$y$を含まない項を$J$に加えたものが全微分$F(x, y)$
  • 一般解は$F(x, y)=C$になる

解き方の中でややこしいのは,$x$を含まないのか$y$を含まないのかという部分ですよね。これは,先ほどの確認作業をもう一度追って見れば分かる話だと思うのですが,なかなか面倒くさいですよね。そこで,以下のようなイメージで対照的に覚えておくと便利かもしれません。

  • 与えられた微分方程式が完全形かどうかを判別する必要十分条件はクロス
    ($P$は$y$で微分して$Q$は$x$で微分する)
  • $F(x, y)$の求め方はそのまま
    ($P$を$x$で積分したものに$Q$を$y$で積分したもののうち$y$のみを含む項を加える)

もしくは,

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y) \\[0.7em]
F(x, y) &= \int Q(x, y)dy + H(x)
\end{align}

という$F(x, y)$の候補を2つとも計算して,その結果を比較して$G(y)$と$H(x)$を求める方法でも解くことができます。ただし,$\int P dx$や$\int Q dy$を計算する際は積分定数はなくてもよいです。これらの式は,微分方程式が完全形のときは「$P(x, y)$が$F_x$,$Q(x, y)$が$F_y$を表していること」を思い出せば自然と出てくる式です。

ここまできて疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そもそも与えられた式が完全形でなかったらどうするのだと。そのような場合は,積分因子と呼ばれる関数$\lambda(x, y)$を両辺に掛けることで無理矢理完全形にするのが定石です。ただし,そのような積分因子を一般的に求めるのは困難なので,ほとんどの場合$\lambda(x, y)$を見つけやすいような$P(x, y)$,$Q(x, y)$が与えられていることがほとんどです。

与えられた式が完全形でない場合を考えます。このとき,両辺に$\lambda(x, y)$を掛けます。

\begin{align}
P(x, y)\lambda(x, y)dx + Q(x, y)\lambda(x, y) dy &= 0
\end{align}

この微分方程式が完全形である必要十分条件は以下の通りです。

\begin{align}
\frac{\partial}{\partial y}\left\{ P(x, y)\lambda(x, y) \right\} &= \frac{\partial}{\partial y}\left\{ Q(x, y)\lambda(x, y) \right\} \\[0.7em]
P_y\lambda + P\lambda_y &= Q_x\lambda + Q\lambda_x \label{積分因子の条件}
\end{align}

この式($\ref{積分因子の条件}$)を満たす$\lambda(x, y)$を見つけ出すのは大変です。しかし,与えられた式($\ref{積分因子の条件}$)が完全形でない場合のほとんどはこの式を満たす$\lambda(x, y)$が簡単に見つかります。というのも,以下の2パターンが出題されることが多いからです。

  • $\lambda_x = 0$かつ$(Q_x - P_y) / P = G(y)$の(つまり$x$の項を含まない)ケース
  • $\lambda_y = 0$かつ$(P_y - Q_x) / Q = H(x)$の(つまり$y$の項を含まない)ケース

この2つのケースは覚える必要はありません。理解するべきは,積分因子を一般的に求めることが難しいとなったときに,真っ先に「$\lambda_x=0$か$\lambda_y=0$だったら嬉しいなあ」と思えるかということ,そしてそれぞれを適用した場合に追加で欲しい条件,つまり前者は$(Q_x - P_y) / P = G(y)$で後者は$(P_y - Q_x) / Q = H(x)$を計算できるかということに尽きます。

$\lambda_x = 0$かつ$(Q_x - P_y) / P = G(y)$のケースでは,式($\ref{積分因子の条件}$)は以下のようになります。

\begin{align}
P_y\lambda + P\lambda_y &= Q_x\lambda \\[0.7em]
\frac{d\lambda}{dy} &= \frac{Q_x - P_y}{P}\lambda \\[0.7em]
\frac{d\lambda}{dy} &= \frac{G(y)}{P}\lambda \\[0.7em]
\int \frac{1}{\lambda} d\lambda &= \int G(y) dy \\[0.7em]
\log |\lambda| &= \int G(y) dy \\[0.7em]
\lambda &= e^{\int G(y)dy}
\end{align}

結局,最後は変数分離形の微分方程式に帰着しました。ただし,実際に$\int G(y)dy$を計算する場合には積分定数は必要ないことも把握しておきましょう。$\lambda_y = 0$かつ$(P_y - Q_x) / Q = H(x)$のケースでは,同様に式($\ref{積分因子の条件}$)は以下のようになります。

\begin{align}
P_y\lambda &= Q_x\lambda + Q\lambda_x \\[0.7em]
\lambda &= e^{\int H(x)dx}
\end{align}

こちらも,最後は変数分離形の微分方程式に帰着しました。ただし,実際に$\int H(x)dx$を計算する場合には積分定数は必要ないことも把握しておきましょう。このような特別な場合に限り,積分因子が簡単に求められるんですね。

問題を解くうえで意識したいのは,与えられた微分方程式が完全形でない場合に,どちらのケースで解くことを求められているのかという部分です。数検1級の範疇では,(変数分離や同次形,非同次線形微分方程式で解けそうにないという前提の下で)完全形でなく,かつどちらのケースでもない問題はほぼ出題されないものと思われます。

例題

以下では,二つのパターンの例題を通して完全微分方程式の解法を確認します。

パターン1

以下の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため適切な定数項を設定します。

\begin{align}
(3x^2 + \cos y) dx &= (2y - x\sin y) dy
\end{align}

この微分方程式では,$(3x^2 + \cos y)_y = (2y - x\sin y)_x = -\sin y$という関係式が成り立っており,これは与えられた微分方程式が完全形であることの必要十分条件でした。今回は,$F(x, y)$の候補を2つとも計算して,その結果を比較して$G(y)$と$H(x)$を求める方法で解いていきたいと思います。

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y) \\[0.7em]
&= x^3 + x\cos y + G(y) \\[0.7em]
F(x, y) &= \int Q(x, y)dy + H(x) \\[0.7em]
&= y^2 + x\cos y + H(x)
\end{align}

ただし,積分定数は省略できることを利用しています。二つの式の比較により,

\begin{align}
G(y) &= y^2 \\[0.7em]
H(x) &= x^3
\end{align}

が分かります。したがって,求める解は以下です。

\begin{align}
F(x, y) &= x^3 + x\cos y + y^2 \notag \\[0.7em]
&= C
\end{align}

パターン2

以下の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため適切な定数項を設定します。

\begin{align}
(y + \log x)dx + x\log x dy &= 0
\end{align}

$(y + \log x)_y \neq (x\log x)_x$であることから,この方程式は完全形ではありません。そこで,積分因子を掛けることで完全形に無理矢理変形することを考えます。成り立っていてくれたら嬉しい2つの仮定として,$\lambda_x=0$と$\lambda_y=0$がありました。それぞれの仮定で$P(x, y)$と$Q(x, y)$が満たしていて欲しい条件が変わってきますから,まずはそれを思い出します。$\lambda_x=0$のときは,完全形の必要十分条件より

\begin{align}
P_y\lambda + P\lambda_y &= Q_x \lambda \\[0.7em]
\lambda_y &= \frac{Q_x - P_y}{P} \lambda
\end{align}

となり,$(Q_x - P_y) / P$が$y$だけの関数になってくれていれば変数分離形として積分因子を求めることができます。実際に確認してみましょう。

\begin{align}
\frac{Q_x - P_y}{P} &= \frac{(\log x + 1) - 1}{y + \log x}
\end{align}

これは,残念ながら$x$の項が残ってしまいました。それでは,$\lambda_y=0$のケースを考えてみましょう。

\begin{align}
P_y\lambda &= Q_x\lambda + Q\lambda_x \\[0.7em]
\lambda_x &= \frac{P_y - Q_x}{Q}\lambda
\end{align}

$(P_y - Q_x) / Q$が$x$だけの関数になっていれば変数分離形として積分因子を求めることができます。こちらも確認してみましょう。

\begin{align}
\frac{P_y - Q_x}{Q} &= \frac{1 - (1 + \log x)}{x\log x} \\[0.7em]
&= -\frac{1}{x}
\end{align}

無事,$x$だけの関数になりました。したがって,積分因子は以下の通りになります。

\begin{align}
\lambda_x &= -\frac{1}{x}\lambda \\[0.7em]
\int \frac{1}{\lambda} d\lambda &= -\int \frac{1}{x} dx \\[0.7em]
\log |\lambda| &= -\log |x| \\[0.7em]
\lambda &= \frac{1}{x}
\end{align}

ただし,積分定数は省略できることを利用しました。したがって,元の微分方程式は以下のような形になります。

\begin{align}
\frac{y + \log x}{x}dx + \log x dy &= 0
\end{align}

先ほどと同様に$F(x, y)$の候補を2つとも計算して,お互いを比較して$G(y)$と$H(x)$を求める方針でいきます。

\begin{align}
F(x, y) &= \int P(x, y)dx + G(y) \\[0.7em]
&= y\log x + \frac{1}{2}\left(\log x\right)^2 + G(y) \\[0.7em]
F(x, y) &= \int Q(x, y) dy + H(x) \\[0.7em]
&= y\log x + H(x)
\end{align}

ただし,積分定数は省略できることを利用しました。先ほどと同様に2つの式を比較すると,求める解は以下になります。

\begin{align}
F(x, y) &= y\log x + \frac{1}{2}\left(\log x\right)^2 \notag \\[0.7em]
&= C
\end{align}

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