はじめに
本稿では,LPIC-3 300合格を最短最速で目指すための方法をお伝えします。
LPICについて
LPICはLinux Professional Institute Certificationの略称で,LPIと呼ばれる非営利団体が主催しているLinuxのグローバルスタンダードな認定試験です。Linuxはオープンソースであるという特性から特定のベンダーが恣意的な認定資格を作ってしまうフォースが働いてしまいますが,LPICはあくまでも中立的な立場を貫いているため,Linuxに関する公平公正な知識・技能を評価することができます。
Linuxの認定試験としてはLinuCも有名であり,LinuC公式ページではLPICとの関係性を「LinuCはクラウド時代の即戦力であることを証明できる認定資格として新しく生まれ変わりました」と説明しています。LPICの主催団体はLPI,LPICの主催団体はLPI日本支部という違いがあり,評価できる知識・技能には多少の差はあるものの大きな違いは現時点ではないため,グローバルスタンダードなLPICが今でも選ばれ続けている印象があります。
LPICについては下記の公式ページをご参照ください。
位置付け
LPIC認定資格には以下の種類があります。
- Essentials
- Linux Professional
- Open Technology
LPICはこのうち「Linux Professional」に該当し,Linuxシステム管理者の知識と技能を評価するために設計されています。LPICにはさらに以下の種類があります。
- LPIC-1 Exam 101
- LPIC-1 Exam 102
- LPIC-2 Exam 201
- LPIC-2 Exam 202
- LPIC-3 Exam 300
- LPIC-3 Exam 303
- LPIC-3 Exam 305
- LPIC-3 Exam 306
LPICでは上位レベルの認定には下位レベルの認定が必須条件となっています。すなわち,LPIC-1の受験資格はなく,LPIC-2の受験にはLPIC-1の合格が必須で,LPIC-3の受験にはLPIC-2の合格が必須となっています。LPIC-1は101と102の両方に合格すると認定され,LPIC-2も同じく101と102の両方に合格すると認定されます。一方,LPIC-3はいずれか一つだけに合格することで該当資格の認定を受けることができます。
試験範囲
進化する技術に対応するため,LPICの試験科目は平均3年ごとに更新されます。したがって,現行バージョンで出題される試験範囲は必ずおさえておきましょう。公式Youtubeでも名言されていますが,試験範囲の「総重量」を足し合わせると60になりますので,「総重量」は各分野で出題される問題数そのものを表します。「総重量」の大きい分野から順に勉強するとよいでしょう。
科目・合格基準・時間・形式・料金
項目 | 内容 |
---|---|
時間 | 90分 |
問題数 | 60問 |
形式 | 多肢選択式および穴埋め式 |
合格基準 | 公表なし(推定65%) |
料金 | 公式サイトの「国別コスト」参照 |
形式 | CBT |
有効期限 | 再受験またはより高いレベルに合格しない限り5年間 |
対策
資格対策書ではない一般書によりLinuxの概要を理解します
参考書・Youtube・Udemy・Webページから自分に合ったコンテンツを選びます
本番形式の演習問題を回します
間違えた問題のポイントをまとめて直前に暗記します
読み物で下地準備
LPIC-3 300はLPIC-1とLPIC-2に合格していないと認定を受けられない資格ですから,Linuxについてある程度の下地が整っている状態で受験することになるでしょう。下地準備は必要に応じて実施する程度で十分です。仮に実施する場合は,LPIC-1合格へのロードマップやLPIC-2合格へのロードマップでも紹介した下記の書籍がおすすめです。いわゆる試験対策を始める前に軽く一通り斜め読みしておくことで知識の定着度が非常に高まります。
知識定着の下地を整える書籍
知識インプット
自分にあったインプットコンテンツとしては以下が挙げられます。
- 参考書
- Youtube
- Udemy
- Webページ
それぞれのコンテンツについて管理人のおすすめを紹介します。
参考書
LPICの対策本としては「あずき本」と「スピマス」が有名ですが,残念ながら現行バージョンの3.0に対応した書籍は発売されていません。そこで,LPIC-3 300では試験範囲で紹介されているコマンドを生成AIに投げて覚えていくスタイルをおすすめします。
Youtube
下記の公式Youtubeが参考になります。試験範囲を網羅的に把握することができます。
- 今秋登場 LPIC 3 version 3.0でここが変わった
- 今秋登場「LPIC 3 300 ver 3.0」の変更点と学習のポイント〜新トピック FreeIPAによる認証基盤〜
- LPIC-3(300 ver3.0 混在環境)プロの講師が新バージョンを先取り解説!
- LPIC-3(300 ver3.0 混在環境)プロの講師がFreeIPA詳細解説!
- LPIC-3(300 ver3.0 混在環境)旧バージョンからの変更点について
Udemy
Udemyでは「LPIC向け対策講座」を受講するよりも,ポイントでLinuxで理解に苦しむポイントについて参考にするとよいでしょう。管理人はLPIC-1〜LPIC-2を通して以下の講座を利用しましたが,LPIC-3にはあまり効果はありませんでした。
- もう怖くないLinuxコマンド。手を動かしながらLinuxコマンドラインを5日間で身に付けよう
- もう絶対に忘れないLinuxコマンド【Linux 100本ノック+名前の由来+丁寧な解説で長期記憶に焼き付けろ!】
- 【5日でできる】はじめての Linux 入門(LPIC Level1対応)
Webページ
Linux学習のコツは「由来から覚えること」です。オプションをそのまま覚えようとしても全く頭に残らないため,可能な限り生成AIを用いて由来を理解するようにしましょう。時々全く由来のないオプションなども出てきますが,たいていの場合は由来とセットで覚えると理解が促進されるものがほとんどです。Web上のコンテンツとしては,LinuC向けではありますがLinuCイージスが利用できるでしょう。CCNAイージスと同様に古めかしいUIではありますが非常に良質なコンテンツです。
演習問題回し
LPIC-3 300対策で一番困るのは演習問題が不足していることです。試験範囲で紹介されているコマンドを全て覚えたとしても,問題演習が足りていなければLPICの点数も伸び悩むでしょう。現時点では,学易という有料学習サイトで現行バージョンの3.0に対応した演習問題が販売されています。
最終チェック
演習問題を2周できる方は,2周目は間違えた問題のポイントをまとめるようにしてください。1周しかできない方は1周目で間違えた問題だけ見直す方針でもOKです。管理人は以下のようなポイント集を作って直前に見直していました。
管理人は間違いだけでなく理解したいポイントも併せて言語化するようにしています。まとめる媒体としてはNotionでも紙のノートでも何でも構いません。
おわりに
LPICはグローバルスタンダードなLinux認定資格であることから,資格を取ることによりプレゼンスを上げることが目的である方がほとんどでしょう。しかし,Linuxはエンジニアとして理解が必須である共通言語であるともいえます。時代の流れが早いIT系の中でオープンソースのOSとして長い間確固たる地位を保持し続けてきたLinuxはOS界の王様ともいえ,レガシーシステムからクラウドシステムまで今でも幅広く利用されている技術です。安直な言葉を使えば,Linuxを学ぶことでエンジニアの素養を身に付けることができます。この素養は,例えばAWSでEC2やAuroraなどのマネージドサービスを扱う場合にも理解が必須である内容であるだけでなく,gitを使った日々の作業でも大活躍する知識になります。ぜひ資格取得という目的を超え,たまには寄り道をしながらLinuxの本質的な理解を目指して勉強してみてください。
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