本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
連立方程式が解をもつための条件
行列の階数に基づく判定法は次の通りである。
- 係数行列と拡大係数行列の階数が等しい場合:解が存在する(不定形含む)
- 係数行列と拡大係数行列の階数が等しくない場合:解が存在しない
係数行列を$A$,定数ベクトルを$\vb$とするとき,行列式に基づく判定法は次の通りである。
- 定数項が全て$0$である連立方程式が「自明でない解」をもつ条件
-
$|A|=0$が必要十分条件である。
- 定数項が全て$0$でない連立方程式が「解」をもつ条件
-
$A$の右に$-\vb$を並べた行列の行列式が$0$であることが必要条件である。
- $m$次方程式$f(x)$と$n$次方程式$g(x)$が共通解をもつ条件
-
終結式が$0$となることが必要十分条件である。
必要十分条件と必要条件の違いに注意してください。
具体例とその解答
例1
次の連立一次方程式が自明でない解をもつように定数$\lambda$を定めよ。
\begin{cases}
(1-\lambda)x+2y+z = 0\\[0.7em]
-x+(4-\lambda)y+z = 0\\[0.7em]
2x-4y-\lambda z = 0
\end{cases}
行列式に基づく判定法を利用する。定数項が全て$0$である連立方程式が自明でない解をもつ必要十分条件より,
\begin{vmatrix}
1-\lambda & 2 & 1\\
-1 & 4-\lambda & 1\\
2 & -4 & -\lambda
\end{vmatrix}
&= \lambda^{3} - 5\lambda^{2} + 8\lambda - 4 = (\lambda - 1)(\lambda - 2)^{2} = 0
\end{align}
となるため,求める答えは$\lambda=1,2$となります。
例2
次の連立一次方程式が解をもつように定数$\lambda$を定めよ。
\begin{cases}
x + 2y = -1\\[0.7em]
3x + 2\lambda y = -5\\[0.7em]
\lambda x + 6y = -2
\end{cases}
行列式に基づく判定法を利用する。定数項が全て$0$でない連立方程式が解をもつ必要条件より,
\begin{vmatrix}
1 & 2 & 1\\
3 & 2\lambda & 5\\
\lambda & 6 & 2
\end{vmatrix}
&= \lambda^{2} - 7\lambda + 12 = (\lambda - 3)(\lambda - 4) = 0
\end{align}
となります。$\lambda=3$のとき,連立方程式は
\begin{cases}
x + 2y = -1\\[0.7em]
3x + 6y = -5\\[0.7em]
3x + 6y = -2
\end{cases}
となり,解は存在しません。$\lambda=4$のとき,連立方程式は
\begin{cases}
x + 2y = -1\\[0.7em]
3x + 8y = -5\\[0.7em]
2x + 3y = -1
\end{cases}
となり,$(x,y)=(1,-1)$が得られます。以上より,求める答えは$\lambda=4$です。
例3
連立方程式$x^{3}+mx-2=0$と$x^{2}-2x+m=0$が共通解をもつように$m$を定めよ。
行列式に基づく判定法を利用する。$m$次方程式$f(x)$と$n$次方程式$g(x)$が共通解をもつ必要十分条件より,
&\begin{vmatrix}
1 & 0 & m & -2 & 0\\
0 & 1 & 0 & m & -2\\
1 & -2 & m & 0 & 0\\
0 & 1 & -2 & m & 0\\
0 & 0 & 1 & -2 & m
\end{vmatrix}
=
\begin{vmatrix}
1 & 0 & m & -2 & 0\\
0 & 1 & 0 & m & -2\\
0 & -2 & 0 & 2 & 0\\
0 & 1 & -2 & m & 0\\
0 & 0 & 1 & -2 & m
\end{vmatrix}\\[0.7em]
&=
1\cdot (-1)^{1+1}
\begin{vmatrix}
1 & 0 & m & -2\\
-2 & 0 & 2 & 0\\
1 & -2 & m & 0\\
0 & 1 & -2 & m
\end{vmatrix}
=
\begin{vmatrix}
1 & 0 & m+1 & -2\\
-2 & 0 & 0 & 0\\
1 & -2 & m+1 & 0\\
0 & 1 & -2 & m
\end{vmatrix}\\[0.7em]
&=
(-2)\cdot(-1)^{2+1}
\begin{vmatrix}
0 & m+1 & -2\\
-2 & m+1 & 0\\
1 & -2 & m
\end{vmatrix}
= 2(2m^{2}+4m-6)=4(m+3)(m-1)
\end{align}
が得られます。したがって,求める答えは$m=-3, 1$です。
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