AWS認定試験の合格に必要な知識を確認します。
前提
下図の通り,ソリューションアーキテクトにはアソシエイトレベルとプロフェッショナルレベルの二種類があります。本稿では,プロフェッショナルレベルのソリューションアーキテクト(SAP)に関して,C01バージョンの試験とC02バージョンの試験の違いを確認します。旧試験と新試験の違いを把握することで,現在実施されているバージョンの試験でよく狙われる範囲を把握することができます。
背景
従来,SAPはC01バージョンの試験が実施されていましたが,公式ブログでアナウンスされている通り,2022年11月15日からC02バージョンの試験が実施されています。C01とC02の試験ガイドは下記のURLから確認できます。
本稿では,上記試験ガイドを比較して,SAPにおけるC01とC02の違いをまとめていきます。
結論
C02はC01と比べて大きな変更点はありません。対象サービスが明記されるようになりましたので,幅広いサービスが満遍なく問われやすいSAPにおいては,新しいサービスの活用方法をおさえておく必要があります。
詳細
以下では,試験ガイドの見出しに沿って,それぞれでC01とC02の違いを洗い出していきます。
評価する能力
C01では「分散アプリケーションおよびシステムの設計における高度な技術スキルと経験を認定する」という記述があり,C02では「Well-Architected Frameworkに基づいてAWSソリューションを設計し,最適化することを課題とする高度な技術スキルと経験を検証する」という記載があります。
C02の記述は,C01と日本語が対応するように筆者が意訳しています。
C01では「Well-Architected Framework」という言葉は用いられておらず,代わりに「分散アプリケーション」という言葉が用いられています。C02では「AWSソリューション・課題・最適化」という言葉が用いられるようになっており,C01に比べて「顧客の課題を最適に解決するための手法」を導き出すことができる能力を評価するようになっていると考えられます。
C01 | C02 |
---|---|
・動的なスケーラビリティ ・高可用性 ・フォールトトレランス ・信頼性 を備えたアプリケーションの設計およびデプロイ | Well-Architected Framework |
要件に基づくサービス選定 | 複雑な組織に対応する設計 |
複雑な多層アプリケーションの移行 | ワークロードの移行とモダナイゼーションの加速 |
スケーラブルな運用の設計・デプロイ | 新しいソリューションのための設計 既存ソリューションの継続的な改善 |
コストコントロール | - |
C01ではコストコントロールが明記されていましたが,C02ではコストに関する言及がなくなりました。そのため,「C02ではコストが試験範囲外になった」と書かれているサイトもありますが,それは間違いです。C02の試験ガイドの試験内容の章で,全分野の対象知識と対照スキルでコストに関する内容が明記されていますので,コストは試験範囲内です。
受験対象者について
C01では前提条件は明記されていませんが,C02では「AWSのサービスを使用してクラウドソリューションを設計し,実装した経験が2年以上ある人」と明記されるようになりました。ただし,C01の推奨されるAWSの知識では2年以上の実践経験について言及されていました。
推奨されるAWSの知識
C01では箇条書きで推奨されるAWSの知識が列挙されていましたが,C02では「推奨されるAWSの知識」の章自体が削除されました。
試験準備
C01では公式トレーニングやホワイトペーパーの記載がありましたが,C02では試験準備の項目自体が削除されました。これは,SAPの公式ページにも同等の内容が記載されているためだと思われます。
試験内容
試験の概要は,以下の通り変更はありません。
項目 | C01 | C02 |
---|---|---|
最低合格スコア | 750/1000 点 | 750/1000 点 |
スコアのスケール | $\cm$ | $\cm$ |
問題数 | 75 問 | 75 問 |
C02では,「スコアに影響しない採点対象外の設問が10問含まれる」と明記されています。これは,受験者の成績を収集し,今後採点対象の設問として使用できるかどうかを評価するためのダミー問題で,受験者にはどの設問が採点対象外かは知らされません。
対象分野の差分は,C01から「コスト管理」がなくなり,C02では「モダナイゼーションの加速」が追加されました。ただし,上でも述べた通りコスト管理の分野自体が試験範囲外になったのではなく,C02における全ての分野にコストの内容がマージされました。
C01 | 比重 | C02 | 比重 |
---|---|---|---|
組織の複雑さに対応する設計 | 12.5% | 複雑な組織に対応するソリューションの設計 | 26% |
新しいソリューションの設計 | 31% | 新しいソリューションのための設計 | 29% |
移行の計画 | 15% | ワークロードの移行とモダナイゼーションの加速 | 20% |
コスト管理 | 12.5% | - | - |
既存のソリューションの継続的な改善 | 29% | 既存のソリューションの継続的な改善 | 25% |
新旧の分野を比較したとき,「組織の複雑さに対応する設計」と「コスト管理」が他の分野にマージされたことを踏まえると,大きな変更があった訳ではないことが分かります。
分野ごとの詳細に関しては,C01では抽象的な記述のみであったものが,C02では全面的に具体的に記述されるようになりました。それゆえ,C01とC02の差分が大量に出てしまうため,本稿では分野ごとの差分はスコープアウトすることにします。
試験範囲内のサービス
C02にて,試験範囲内のサービスが明記されるようになりました。稀にサービスの概要だけを問う問題が出題されますので,試験前に全てのサービスの概要をおさえておき,「名前を聞いたことがないサービスがない」状態にしておきたいです。
試験範囲内のサービス
分類 | サービス名 |
---|---|
分析 | Amazon Athena AWS Data Exchange AWS Data Pipeline Amazon EMR AWS Glue Amazon Kinesis Data Analytics Amazon Kinesis Data Firehose Amazon Kinesis Data Streams AWS Lake Formation Amazon Managed Streaming for Apache Kafka (Amazon MSK) Amazon OpenSearch Service Amazon QuickSight |
アプリケーション統合 | Amazon AppFlow AWS AppSync Amazon EventBridge (Amazon CloudWatch Events) Amazon MQ Amazon Simple Notification Service (Amazon SNS) Amazon Simple Queue Service (Amazon SQS) AWS Step Functions |
ビジネスアプリケーション | Alexa for Business Amazon Simple Email Service (Amazon SES) |
ブロックチェーン | Amazon Managed Blockchain |
クラウド財務管理 | AWS Budgets AWS Cost and Usage Report AWS Cost Explorer Savings Plans |
コンピューティング | AWS App Runner AWS Auto Scaling AWS Batch Amazon EC2 Amazon EC2 Auto Scaling AWS Elastic Beanstalk Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) Elastic Load Balancing AWS Fargate AWS Lambda Amazon Lightsail AWS Outposts AWS Wavelength |
コンテナ | Amazon Elastic Container Registry (Amazon ECR) Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) Amazon ECS Anywhere Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) Amazon EKS Anywhere Amazon EKS Distro |
データベース | Amazon Aurora Amazon Aurora Serverless Amazon DocumentDB (MongoDB 互換) Amazon DynamoDB Amazon ElastiCache Amazon Keyspaces (for Apache Cassandra) Amazon Neptune Amazon RDS Amazon Redshift Amazon Timestream |
デベロッパーツール | AWS Cloud9 AWS CodeArtifact AWS CodeBuild AWS CodeCommit AWS CodeDeploy Amazon CodeGuru AWS CodePipeline AWS CodeStar AWS X-Ray |
エンドユーザーコンピューティング | Amazon AppStream 2.0 Amazon WorkSpaces |
フロントエンドのウェブとモバイル | AWS Amplify Amazon API Gateway AWS Device Farm Amazon Pinpoint |
IoT | AWS IoT Analytics AWS IoT Core AWS IoT Device Defender AWS IoT Device Management AWS IoT Events AWS IoT Greengrass AWS IoT SiteWise AWS IoT Things Graph AWS IoT 1-Click |
機械学習 | Amazon Comprehend Amazon Forecast Amazon Fraud Detector Amazon Kendra Amazon Lex Amazon Personalize Amazon Polly Amazon Rekognition Amazon SageMaker Amazon Textract Amazon Transcribe Amazon Translate |
マネジメントとガバナンス | AWS CloudFormation AWS CloudTrail Amazon CloudWatch Amazon CloudWatch Logs AWS Command Line Interface (AWS CLI) AWS Compute Optimizer AWS Config AWS Control Tower AWS License Manager Amazon Managed Grafana Amazon Managed Service for Prometheus AWS Management Console AWS Organizations AWS Personal Health Dashboard AWS Proton AWS Service Catalog Service Quotas AWS Systems Manager AWS Trusted Advisor AWS Well-Architected Tool |
メディアサービス | Amazon Elastic Transcoder Amazon Kinesis Video Streams |
移行と転送 | AWS Application Discovery Service AWS Application Migration Service (CloudEndure Migration) AWS Database Migration Service (AWS DMS) AWS DataSync AWS Migration Hub AWS Schema Conversion Tool (AWS SCT) AWS Snow ファミリー AWS Transfer Family |
ネットワークとコンテンツ配信 | Amazon CloudFront AWS Direct Connect Elastic Load Balancing (ELB) AWS Global Accelerator AWS PrivateLink Amazon Route 53 AWS Transit Gateway Amazon VPC AWS VPN |
セキュリティ アイデンティティ コンプライアンス | AWS Artifact AWS Audit Manager AWS Certificate Manager (ACM) AWS CloudHSM Amazon Cognito Amazon Detective AWS Directory Service AWS Firewall Manager Amazon GuardDuty AWS Identity and Access Management (IAM) Amazon Inspector AWS Key Management Service (AWS KMS) Amazon Macie AWS Network Firewall AWS Resource Access Manager (AWS RAM) AWS Secrets Manager AWS Security Hub AWS Security Token Service (AWS STS) AWS Shield AWS Single Sign-On AWS WAF |
ストレージ | AWS Backup Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) AWS Elastic Disaster Recovery (CloudEndure Disaster Recovery) Amazon Elastic File System (Amazon EFS) Amazon FSx (すべてのタイプに対応) Amazon S3 Amazon S3 Glacier AWS Storage Gateway |
試験範囲外のサービス
C02にて,試験範囲外のサービスが明記されるようになりました。
試験範囲外のサービス
分類 | サービス名 |
---|---|
- | Amazon GameLift モバイルアプリケーションのフロントエンド開発 Twelve-Factor App 方法論 オペレーティングシステムに関する詳細な知識 |
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