【徹底解説】絶対値の性質

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

絶対値

任意の$a,b\in\mR$に対して,絶対値は以下の性質をみたす。

\begin{align}
|-a| &= |a| \label{1}\\[0.7em]
-|a| &\leq a \leq |a|\label{2}\\[0.7em]
|ab| &= |a||b|\label{3}\\[0.7em]
\left|\frac{a}{b}\right| &= \frac{|a|}{|b|}\label{4}\\[0.7em]
|a+b| &\leq |a| + |b|\label{5}\\[0.7em]
|a|-|b| &\leq |a+b|\label{6}
\end{align}

ただし,式($\ref{4}$)では$b\neq 0$とする。また,$|a|\geq 0$であり等号は$a=0$のときのみである。

絶対値の定義から明らかですので証明が行われない場合もあります。

証明

合わせて六つの性質に関してそれぞれ証明していきます。

(1)

絶対値の定義より$|a|=\max(a,-a)$ですので,$|-a|=\max(-a,a)=|a|$となります。

(2)

絶対値の定義より$|a|=\max(a,-a)$ですので,$-a=\min(a,-a)$となり,$-|a|\leq a\leq |a|$が成り立ちます。

(3)

絶対値の定義に注意して,つぎの四つの場合分けを行います。

  • $a\geq0,b\geq0$のとき$ab\geq0$だから$|ab|=ab=|a||b|$
  • $a\geq0,b\leq0$のとき$ab\leq0$だから$|ab|=a(-b)=|a||b|$
  • $a\leq0,b\geq0$のとき$ab\leq0$だから$|ab|=(-a)b=|a||b|$
  • $a\leq0,b\leq0$のとき$ab\geq0$だから$|ab|=(-a)(-b)=|a||b|$

(4)

絶対値の定義に注意して,つぎの四つの場合分けを行います。

  • $a\geq0,b\geq0$のとき$ab\geq0$だから$|a/b|=a/b=|a|/|b|$
  • $a\geq0,b\leq0$のとき$ab\leq0$だから$|a/b|=a/(-b)=|a|/|b|$
  • $a\leq0,b\geq0$のとき$ab\leq0$だから$|a/b|=(-a)/b=|a|/|b|$
  • $a\leq0,b\leq0$のとき$ab\geq0$だから$|a/b|=(-a)/(-b)=|a|/|b|$

(5)

式($\ref{2}$)より$-|a|\leq a\leq |a|,-|b|\leq b\leq |b|$となることから,

\begin{align}
-(|a|+|b|) &\leq a+b \leq |a|+|b|
\end{align}

が成り立ちます。一方,左の不等式に$-1$をかけることで

\begin{align}
-(a+b) &\leq |a|+|b|
\end{align}

が得られます。これらと絶対値の定義より,つぎが得られます。

\begin{align}
|a|+|b| &\geq \max\{a+b,-(a+b)\} = |a+b|
\end{align}

(6)

$a=(a+b)+(-b)$に注意すると,式($\ref{1}$)と式($\ref{5}$)より

\begin{align}
|a| &= |(a+b)+(-b)| \leq |a+b|+|-b| =|a+b|+|b|
\end{align}

が得られますので,整理することにより式($\ref{6}$)が示されます。

(7)

絶対値の定義より$|a|\geq0$であり,$|0|=0$も分かります。逆に,$|a|=0$ならば式($\ref{2}$)より$a=0$となります。

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