本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
対角化可能と固有ベクトル
$V$を$\mK$上の$n$次元ベクトル空間とし,$F$を$V$の線型変換とする。ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表す。$V$の適当な基底$\beta=\{v_{1},\ldots,v_{n}\}$に関して,$F$が対角化可能であることと次の条件は同等である。
- $v_{1},\ldots,v_{n}$はすべて$F$の固有ベクトルである
対角化可能性は行列の標準化に関する非常に重要なトピックです。
証明
$F$の表現行列が対角行列,すなわち
\begin{align}
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\\
&\ddots&\\
&&\alpha_{n}
\end{bmatrix}\label{表現行列}
\end{align}
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\\
&\ddots&\\
&&\alpha_{n}
\end{bmatrix}\label{表現行列}
\end{align}
となるならば,表現行列の定義より
\begin{align}
F(v_{1})=\alpha_{1}v_{1},\quad\ldots,\quad F(v_{n})=\alpha_{n}v_{n}
\end{align}
F(v_{1})=\alpha_{1}v_{1},\quad\ldots,\quad F(v_{n})=\alpha_{n}v_{n}
\end{align}
が成り立ちます。したがって,$v_{1},\ldots,v_{n}$はいずれも$F$の固有ベクトルであることが示されました。逆に,$v_{1},\ldots,v_{n}$がすべて$F$の固有ベクトルで,それぞれの固有値を$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}$とするならば,基底を$\beta=\{v_{1},\ldots,v_{n}\}$の順に並べることで,定義より表現行列は式($\ref{表現行列}$)で表されます。以上より,$F$が対角化可能であることと上の主張が同等であることが示されました。
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