【徹底解説】部分空間の和と直和の定義

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

部分空間の和と直和

$V$を$\mK$上のベクトル空間,$U,W$を$V$の部分空間とする。このとき,集合

\begin{align}
U+W &= \left\{u+w\mid u\in U,~w\in W\right\} \label{1}
\end{align}

は$V$の部分空間をなし,これを$U$と$W$の和という。いま,$Z=U+W$とおけば,式($\ref{1}$)より$Z$の任意の元$z$は$U$の元$u$と$W$の元$w$の和として

\begin{align}
z &= u+w \label{2}
\end{align}

と表される。もし$Z$の任意の元$w$が式($\ref{2}$)として一意に表されるならば,和$Z=U+W$は$U$と$W$の直和であるといい,

\begin{align}
U\oplus W
\end{align}

と表す。

固有空間の議論で利用される重要な概念です。

補足

以下では,和$U+W$が$V$の部分空間であることを確認します。まず,$u_{1},u_{2}\in U$,$w_{1},w_{2}\in W$に対し,

\begin{alignat}{2}
z_{1} &= u_{1}+w_{1} &&\in Z \\[0.7em]
z_{2} &= u_{2}+w_{2} &&\in Z
\end{alignat}

となる$z_{1},z_{2}\in Z$を考えます。$U,W$は部分空間であるため$u_{1}+u_{2}\in U$,$w_{1}+w_{2}\in W$が成り立つことに注意すると,

\begin{alignat}{2}
z_{1} + z_{2} &= (u_{1}+w_{1}) + (u_{2}+w_{2})\\[0.7em]
&= (u_{1}+u_{2})+(w_{1}+w_{2}) &&\in Z
\end{alignat}

が成り立ちます。すなわち,$Z$は加法に閉じていることが分かりました。次に,任意の実数$c$に対し,$U,W$は部分空間であるため,$cu_{1}\in U$,$cw_{1}\in W$が成り立つことに注意すると,

\begin{alignat}{2}
cz_{1} &=c(u_{1}+w_{1}) \\[0.7em]
&= cu_{1}+cw_{1} &&\in Z \label{3}
\end{alignat}

が成り立ちます。すなわち,$Z$はスカラー倍に閉じていることが分かりました。最後に,式($\ref{3}$)で$c=0$とすると,$0\in Z$が成り立ちます。以上より,和$U+W$が$V$の部分空間であることが示されました。

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