本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
全射・単射と合成写像
$X,X^{\prime},X^{\prime\prime}$を集合とし,$f:~X\rightarrow X^{\prime}$,$f:~X^{\prime}\rightarrow X^{\prime\prime}$を写像とする。このとき,次が成り立つ。
- $f$と$g$がともに全射ならば$g\circ f$も全射
- $f$と$g$がともに単射ならば$g\circ f$も単射
- $f$と$g$がともに全単射ならば$g\circ f$も全単射
単射と単射を「連結」すれば単射になりそうですし,全射と全射を「連結」すれば全射になりそうという意味で,直感に反しない定理です。
証明
任意の$x^{\prime^\prime}$に対し,$g$は全射であることから,ある$x^{\prime}\in X^{\prime}$が存在して$g(x^{\prime})=x^{\prime\prime}$となります。この$x^{\prime}$に対し,$f$は全射であることから,ある$x\in X$が存在して$f(x)=x^{\prime}$となります。このとき,合成写像の定義より,
\begin{align}
g\circ f(x) &= g(f(x)) \\[0.7em]
&= g(x^{\prime}) \\[0.7em]
&= x^{\prime\prime}
\end{align}
g\circ f(x) &= g(f(x)) \\[0.7em]
&= g(x^{\prime}) \\[0.7em]
&= x^{\prime\prime}
\end{align}
となります。すなわち,$g\circ f$は全射になります。次に,$x_{1},x_{2}\in X$に対し,$g$は単射であることから,
\begin{align}
g\circ f(x_{1}) &= g(f(x_{1})) \\[0.7em]
&= g(f(x_{2})) \\[0.7em]
&= g\circ f(x_{2})
\end{align}
g\circ f(x_{1}) &= g(f(x_{1})) \\[0.7em]
&= g(f(x_{2})) \\[0.7em]
&= g\circ f(x_{2})
\end{align}
ならば$f(x_{1})=f(x_{2})$となります。このとき,$f$は単射であることから$x_{1}=x_{2}$となります。以上より,
\begin{align}
g\circ f(x_{1}) &= g\circ f(x_{2})
\end{align}
g\circ f(x_{1}) &= g\circ f(x_{2})
\end{align}
ならば$x_{1}=x_{2}$となります。すなわち,$g\circ f$は単射になります。したがって,$f$と$g$が全単射であるとき,$f\circ g$は全単射になります。
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