【徹底解説】余因子行列の性質

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

余因子行列の行列式

$A$を$n$次正方行列,$\tilde{A}$を$A$の余因子行列とすると,以下が成り立つ。

\begin{alignat}{2}
A\tilde{A} &= \tilde{A}A &&= \det (A)I_{n} \label{主題}
\end{alignat}

ただし,$I_{n}$は$n$次元単位行列を表す。

併せて余因子行列を用いた逆行列の表現をおさえましょう。

証明

余因子展開の性質より,以下が成り立ちます。

\begin{align}
\sum_{j=1}^{n} a_{ij}\Delta_{kj}&=
\begin{cases}
\det (A) & (i=k) \\[0.7em]
0 & (i\neq k)
\end{cases}\label{1}\\[0.7em]
\sum_{i=1}^{n} a_{ij}\Delta_{il}&=
\begin{cases}
\det (A) & (j=l) \\[0.7em]
0 & (j\neq l)
\end{cases}\label{2}
\end{align}

行列積の定義より,式($\ref{1}$)の左辺は$A\tilde{A}$の$(i,k)$成分を,式($\ref{2}$)の左辺は$\tilde{A}A$の$(l,j)$成分を表しています。すなわち,$A\tilde{A}$と$\tilde{A}A$は対角成分に$\det (A)$が並ぶ行列であることが分かります。したがって,式($\ref{主題}$)が示されました。

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