【初学者向け】二階同次線形の微分方程式

本稿では,代表的な微分方程式の解法をお伝えします。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

二階同次線形微分方程式

次の形をした微分方程式を,二階同次線形微分方程式と呼びます。

\begin{align}
\frac{d^2 y}{dx^2}+P(x)\frac{dy}{dx}+Q(x)y &= 0\label{主題1}
\end{align}

多くの場合は,$P(x)$と$Q(x)$が定数係数である場合を扱います。

\begin{align}
\frac{d^2 y}{dx^2}+a\frac{dy}{dx}+by &= 0\label{主題2}
\end{align}

解法

定数係数の二階同次線形微分方程式は,特性方程式の解に依存して定められます。

特性方程式定数係数の二階同次線形微分方程式の解
異なる$2$つの実数解$y=C_{1}e^{\lambda_{1}x} + C_{2}e^{\lambda_{2}x}$
実数の重解$y=(C_{1}+C_{2}x)e^{\lambda_{1}x}$
$2$つの共役複素数解$y=e^{\alpha x}(C_{1}\cos\beta x + C_{2} \sin\beta x)$
特性方程式と定数係数の二階同次線形微分方程式の解

特性方程式とは$y^{(n)}$に$\lambda^{n}$を代入して得られる方程式のことを指します。

例題

以下の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため定数項はそのまま残してよいです。

\begin{align}
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= 0 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 4y^{\prime} + 4y &= 0 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} - 2y^{\prime} + 4y &= 0
\end{align}

それぞれの特性方程式の解は以下のようになっています。

\begin{align}
\lambda &= -1, -4 \\[0.7em]
\lambda &= -2 \\[0.7em]
\lambda &= 1 \pm \sqrt{3}i
\end{align}

したがって,与えられた二階同次線形微分方程式の一般解はそれぞれ以下のようになります。

\begin{align}
y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} \\[0.7em]
y &= (C_1 + C_2x)e^{-2x} \\[0.7em]
y &= e^{x} (C_1 \cos \sqrt{3}x + C_2\sin \sqrt{3}x)
\end{align}

初期条件が与えられていれば定数項を定められますが,今回はここで終了です。

補足

二階同次線形微分方程式の解法は,微分方程式の解の線形性(重ね合わせの原理)を利用しています。$y_{1},y_{2}$が二階同次線形微分方程式($\ref{主題1}$)の線形独立な解ならば,$y{=}C_{1}y_{1}+C_{2}y_{2}$も二階同次線形微分方程式の解となります。なぜなら,$y$を式($\ref{主題1}$)に代入すると

\begin{align}
&(C_{1}y_{1}+C_{2}y_{2})^{\prime\prime}+P(x)(C_{1}y_{1}+C_{2}y_{2})^{\prime}+Q(x)(C_{1}y_{1}+C_{2}y_{2})\notag\\[0.7em]
&= C_{1}(y_{1}^{\prime\prime}+P(x)y_{1}^{\prime}+Q(x)y_{1})
+C_{2}(y_{2}^{\prime\prime}+P(x)y_{2}^{\prime}+Q(x)y_{2})
= 0
\end{align}

となるためです。ここで,定数係数の微分方程式($\ref{主題2}$)の解の候補として$y=e^{\lambda x}$を代入すると,

\begin{align}
\lambda^{2}e^{\lambda x}+a\lambda e^{\lambda x} + be^{\lambda x} &= 0\\[0.7em]
(\lambda^{2}+a\lambda + b)e^{\lambda x} &= 0
\end{align}

となるため,特性方程式

\begin{align}
\lambda^{2}+a\lambda + b &= 0\label{特性方程式}
\end{align}

を得ます。

特性方程式($\ref{特性方程式}$)が$2$つの実数解$\lambda_{1},\lambda_{2}$をもつ場合

$e^{\lambda_{1}x}$と$e^{\lambda_{2}x}$は線形独立となりますので,重ね合わせの原理より

\begin{align}
y &= C_{1}e^{\lambda_{1}x} + C_{2}e^{\lambda_{2}x}
\end{align}

と表されます。

特性方程式($\ref{特性方程式}$)が実数の重解$\lambda_{1}$をもつ場合

特性方程式は

\begin{align}
\left(\lambda+\frac{a}{2}\right)^{2} &= 0
\end{align}

という形になるため,$\lambda_{1}{=}-a/2$となります。$e^{\lambda_{1}x}$のみだと線形独立な$2$つの解を得られないため,定数変化法のアイディアを利用します。

$e^{\lambda_{1}x}$のみでは解空間の次元である$2$を表現できません。

$C$を$C(x)$と考えると,

\begin{align}
y=C(x)e^{-ax/2}
\end{align}

と表します。$y_{1}{=}e^{\lambda_{1}x} $とおいて微分方程式($\ref{主題2}$)に代入すると,

\begin{align}
&C^{\prime\prime}(x)y_{1}+2C^{\prime}(x)y_{1}^{\prime}+C(x)y_{1}^{\prime\prime}
+a\left\{C^{\prime}(x)y_{1}+C(x)y_{1}^{\prime}\right\} + bC(x)y_{1}\notag\\[0.7em]
&= C(x)(y_{1}^{\prime\prime}+ay_{1}^{\prime}+by_{1})
+ C_{1}^{\prime}(x)(2y_{1}^{\prime}+ay_{1})
+ C^{\prime\prime}(x)y_{1}\label{重解の場合}
\end{align}

となります。ここで,$y_{1}^{\prime\prime}{+}ay_{1}^{\prime}{+}by_{1}{=}0$および

\begin{align}
2y_{1}^{\prime}
&= 2(e^{-ax/2})^{\prime}
= -ae^{-ax/2} = -ay_{1}
\end{align}

に注意すると,式($\ref{重解の場合}$)が$0$となるときは$C^{\prime\prime}(x){=}0$となります。例えば$C(x){=}1$および$C(x){=}x$は$C^{\prime\prime}(x){=}0$を満たすため,線形独立な二つの解$e^{\lambda_{1}x}$と$xe^{\lambda_{1}x}$が得られます。重ね合わせの原理より,

\begin{align}
y &= C_{1}e^{\lambda_{1}x}+C_{2}xe^{\lambda_{1}x}
=(C_{1} + C_{2}x)e^{\lambda_{1}x}
\end{align}

となります。

特性方程式($\ref{特性方程式}$)が$2$つの共役な虚数解$\lambda_{1},\lambda_{2}$をもつ場合

オイラーの公式により,

\begin{cases}
e^{\lambda_{1}x} = e^{(\alpha+\beta i)x} = e^{\alpha x}e^{i\beta x} = e^{\alpha x}(\cos\beta x + i\sin\beta x)\\[0.7em]
e^{\lambda_{2}x} = e^{(\alpha-\beta i)x} = e^{\alpha x}e^{-i\beta x} = e^{\alpha x}(\cos\beta x - i\sin\beta x)
\end{cases}

となりますが,実数関数の重ね合わせの原理を適用するために$e^{\lambda_{1}x}$と$e^{\lambda_{2}x} $から線形独立な$2$つの解を抽出します。

\begin{align}
\frac{e^{\lambda_{1}x}+e^{\lambda_{2}x}}{2} = e^{\alpha x}\cos\beta x,\quad
\frac{e^{\lambda_{1}x}-e^{\lambda_{2}x}}{2i} = e^{\alpha x}\sin\beta x
\end{align}

すると,重ね合わせの原理より,

\begin{align}
y &= C_{1}e^{\alpha x}\cos\beta x + C_{2}e^{\alpha x}\sin\beta x
= e^{\alpha x}(C_{1}\cos\beta x + C_{2} \sin\beta x)
\end{align}

が得られます。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • (3)式は、特性方程式が重解λ=-2をもつには、y’’+4y’+4y=0となる必要があると思います。

    • Tomii9273様

      ご指摘誠にありがとうございます。おっしゃる通りですので,本文を修正致しました。

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