本稿では,代表的な微分方程式の解法をお伝えします。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
変数分離形の微分方程式
変数分離形は最も基本的な微分方程式の形で,主に2つのバリエーションがあります。
- パターン1
-
\begin{align}
\frac{dy}{dx} &= P(x)Q(y)
\end{align} - パターン2
-
\begin{align}
\frac{dy}{dx} &= f(ax + by + c)
\end{align}
解法
パターン1では左辺に$y$の関数,右辺に$x$の関数を寄せて両辺を$x$で積分します。パターン2では,
u &= ax+by+c
\end{align}
と置くことで,パターン1に帰着します。
例題
以下では,例題を通して変数分離形の微分方程式の解法を確認します。ただし,初期条件は与えないため定数項はそのまま残してよいです。
パターン1
\frac{dy}{dx} &= \frac{y}{x(y+1)}
\end{align}
$y{\neq}0$のとき,$y$の関数を左辺に移項させると,
\frac{y+1}{y}\frac{dy}{dx} &= \frac{1}{x}
\end{align}
となります。両辺を$x$で積分します。
\int \left( 1 + \frac{1}{y} \right) \frac{dy}{dx} dx &= \int \frac{1}{x} dx \\[0.7em]
y + \log |y| &= \log |x| + C_1 \\[0.7em]
\log |ye^{y}| &= \log |e^{C_1}x| \\[0.7em]
ye^y &= \pm e^{C_1}x\\[0.7em]
ye^y &= Cx\label{主題}
\end{align}
ただし,$\pm e^{C_1}=C$と置きました。$y{=}0$のときは$dy/dx{=}0$となりますが,これは式($\ref{主題}$)で$C{=}0$のときに相当します。したがって,求める解は以下です。
ye^y &= Cx
\end{align}
変数分離形の記述問題では$1/x$の積分を考えるときに絶対値を付ける解答が一般的ですが,一松先生もご指摘されている通り,積分定数に正負の符号を付けることにより吸収することができますので,実用上はあまり気にしすぎなくてよいでしょう。
パターン2
\frac{dy}{dx} &= (x + y)^2 \label{パターン2}
\end{align}
$u=x+y$の両辺を$x$で微分して整理すると,
\frac{dy}{dx} &= \frac{du}{dx}-1
\end{align}
となるため,微分方程式($\ref{パターン2}$)に代入して整理すると,
\frac{du}{dx} &= 1+u^2
\end{align}
となり,パターン1に帰着しました。$u$の関数を左辺に移項します。
\frac{1}{1 + u^2}\frac{du}{dx} &= 1
\end{align}
両辺を$u$で積分します。
\int \frac{1}{1 + u^2} du &= \int dx \\[0.7em]
\tan^{-1}u &= x + C
\end{align}
$u=\tan (x + C)$となるため,求める解は
y &= \tan(x + C) - x
\end{align}
となります。
補足1
$y{\neq}0$というのは「$y$が恒等的に$0$となる関数ではない」ということを意味しています。逆に言えば,$y$は恒等的でなければ$0$という値を取る可能性があることを意味しています。しかし,$P(x)$と$Q(x)$が「ある条件」を満たす場合には,恒等的に$0$となる関数以外に$y{=}0$となる関数は存在しません。この「ある条件」は微分方程式の解の一意性を規定する条件なのですが,我々が微分方程式の問題を解く際には通常成り立っている条件です。
微分方程式の解が一意であることが保証されている場合に,ある$y_{0}$で$Q(y_{0}){=}0$となる関数が変数分離系の解でないことを示します。$Q(y_{0}){=}0$とすると,
\frac{dy_{0}}{dx} &= P(x)Q(y_{0}) = 0
\end{align}
となり,$y{=}y_{0}$という定数関数は変数分離系の微分方程式の解となります。ここで,$y{=}y_{0}$とは別の解として$Q(y_{1}){\neq}0$となる$y_{1}$を通る$y$を考えます。この$y$が$y_{0}$を通ると仮定すると,$y_{0}$を通る微分方程式の解が$2$つ見つかってしまい微分方程式の一意性に矛盾します。したがって,$y_{1}$を通る解は$y_{0}$を通りません。これより,恒等的に$0$となる関数以外に$y{=}0$となる関数は存在しないことが示されました。
補足2
微分方程式の任意定数は$\pm\infty$として扱うことも許されます。任意定数を$\pm\infty$としたときに初期条件が満たされるのであれば,一般解の中に特殊解を含めてよいものとします。
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