本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
二重根号の外し方
$\sqrt[n]{a+b\sqrt{d}}$を求めたい場合,
t &= \sqrt[n]{a+b\sqrt{d}}+\sqrt[n]{a-b\sqrt{d}}
\end{align}
とおいて両辺を$n$乗し,対称式を利用して$t$の$n$次方程式に帰着させる。
例題
$\displaystyle\sqrt[5]{\frac{5\sqrt{5}+11}{2}}$の二重根号をはずして簡単にしなさい。
まず,$\displaystyle\alpha = \sqrt[5]{\frac{5\sqrt{5}+11}{2}},~\beta = \sqrt[5]{\frac{5\sqrt{5}-11}{2}}$とおくと,
\alpha^{5}+\beta^{5}=5\sqrt{5},\quad
\alpha\beta = 1
\end{align}
となります。ここで,$t=\alpha+\beta$とおいて両辺を$5$乗すると,
t^{5}
&= \alpha^{5}+5\alpha^{4}\beta+10\alpha^{3}\beta^{2}+10\alpha^{2}\beta^{3}+5\alpha\beta^{4}+\beta^{5}\\[0.7em]
&= (\alpha^{5}+\beta^{5})+5\alpha\beta(\alpha^{3}+\beta^{3})+10\alpha^{2}\beta^{2}(\alpha+\beta)\\[0.7em]
&= 5\sqrt{5}+5(\alpha^{3}+\beta^{3})+10t\label{代入先}
\end{align}
が得られます。$\alpha^{3}+\beta^{3}$を$t$だけで表すことを目指して変形すると,
\alpha^{3}+\beta^{3}
&= t^{3}-3\alpha\beta(\alpha+\beta)
= t^{3}-3t
\end{align}
となるため,式($\ref{代入先}$)に代入して整理すると
t^{5}-5t^{3}+5t-5\sqrt{5}=0
\end{align}
が得られます。左辺に$t=\sqrt{5}$を代入すると$0$になること,および奇数次数の$n$乗根は実数範囲で一意に定まることから,$t=\sqrt{5}$のみを考えればよいです。解と係数の関係より$\alpha,\beta$は$x^{2}-\sqrt{5}x+1$の解であるから,$\alpha>\beta$に注意してこれを解くと,
\alpha=\frac{\sqrt{5}+1}{2},\quad
\beta=\frac{\sqrt{5}-1}{2}
\end{align}
が得られます。したがって,求める答えは$\displaystyle\frac{\sqrt{5}+1}{2}$です。
補足
最も汎用的な二重根号の外し方は上の方法ですが,他にもいくつか解法があります。
別解1
二重根号の外側が$3$乗根であれば与式を$a+b\sqrt{d}$とおいて恒等式を利用することができます。
$\sqrt[3]{2\sqrt{13}-5}$の二重根号をはずして簡単にしなさい。
$\displaystyle\sqrt[3]{\frac{2\sqrt{13}-5}{2}}=a\sqrt{13}+b$とおいて両辺を$3$乗すると,
2\sqrt{13}-5 = (13a^{3}+3ab^{2})\sqrt{13}+(39a^{2}b+b^{3})
\end{align}
が得られます。両辺の係数比較を行うことにより,
\begin{cases}
13a^{3}+3ab^{2}=2\\[0.7em]
39a^{2}b+b^{3}=-5
\end{cases}\label{a_b_連立}
\end{align}
が得られるため,上式に$5$,下式に$2$を掛けて両式を足せば
65a^{3}+15ab^{2}+78a^{2}b+2b^{3}=0
\end{align}
となります。係数の対称性に着目して$a=-b$を代入すると$0$となること,および奇数次数の$n$乗根は実数範囲で一意に定まることから$a=-b$のみを考えればよく,式($\ref{a_b_連立}$)に代入すると
a=\frac{1}{2},\quad
b=-\frac{1}{2}
\end{align}
が得られるため,求める答えは$\displaystyle\frac{\sqrt{13}-1}{2}$となります。
別解2
二重根号の外側が$2$乗根であれば,まずは下記の解法を試してみましょう。
$\sqrt{4+\sqrt{15}}$の二重根号をはずして簡単にしなさい。
与式を変形すると
\sqrt{4+\sqrt{15}}
&= \sqrt{\frac{8+2\sqrt{15}}{2}}
= \frac{\sqrt{8+2\sqrt{15}}}{\sqrt{2}}
= \frac{\sqrt{(\sqrt{3}+\sqrt{5})^{2}}}{\sqrt{2}}
= \frac{\sqrt{3}+\sqrt{5}}{\sqrt{2}}
\end{align}
となります。
「二乗根の係数は$2$にする」「掛けて15・足して8になる数を見つける」がポイントです。
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