【数検1級対策】累次積分と重積分の注意点

本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

累次積分と重積分の注意点

$x\in[a,b],y\in[c,d]$の累次積分において,重積分との等価性について考える。被積分関数$f$が$[a,b]\times[c,d]$上で可積分な関数であるときには,

\begin{align}
\int_{a}^{b}\left(\int_{c}^{d}f(x,y)dy\right)dx
&= \int_{[a,b]\times[c,d]}f(x,y)dydx
= \int_{c}^{d}\left(\int_{a}^{b}f(x,y)dx\right)dy
\end{align}

となり,累次積分と重積分が等しくなる。

常に累次積分と重積分が等しくなる訳ではないため注意しましょう。

反例

累次積分と重積分が等しくならない例として,

\begin{align}
\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\frac{x-y}{(x+y)^{3}}dxdy\label{反例}
\end{align}

が挙げられます。被積分関数は$(0,0)$で定義されないため,累次積分の順序は交換できず,累次積分と重積分は等しくなりません。このようなケースでは,

\begin{align}
u = x+y,\quad v = x-y\label{変数変換}
\end{align}

とおいて変数変換しても正しい結果とならないため,十分注意が必要です。

被積分関数を見ると式($\ref{変数変換}$)と置きたくなります。引っ掛けポイントです。

式($\ref{反例}$)は,変数変換せずに

\begin{align}
\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\frac{x-y}{(x+y)^{3}}dxdy
&= \int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\frac{(x+y)-2y}{(x+y)^{3}}dxdy\\[0.7em]
&{=} \int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\frac{1}{(x+y)^{2}}dxdy - \int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\frac{2y}{(x+y)^{3}}dxdy\\[0.7em]
& = \int_{0}^{1}\left[-\frac{1}{x+y}\right]_{0}^{1}dy- \int_{0}^{1}\left[-\frac{y}{(x+y)^{2}}\right]_{0}^{1}dy\\[0.7em]
&= \int_{0}^{1}\left[-\frac{1}{x+y}\right]_{0}^{1}dy- \int_{0}^{1}\left[-\frac{y}{(x+y)^{2}}\right]_{0}^{1}dy\\[0.7em]
&= -\int_{0}^{1}\frac{1}{(y+1)^{2}}dy = -\frac{1}{2}
\end{align}

と計算すればよいです。同様に,

\begin{align}
\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\frac{x-y}{(x+y)^{3}}dydx
&= \int_{0}^{1}\frac{1}{(x+1)^{2}}dx = \frac{1}{2}
\end{align}

となるため,累次積分の順序を交換できないことも確認できました。

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