【これなら分かる!】微分演算と期待値の順序交換

zuka

こんにちは。
zuka(@beginaid)です。

本記事は「これなら分かる!はじめての数理統計学」シリーズに含まれます。

内容は統計検定1級に準拠しています。もし不適切な内容や誤植があれば,記事下のコメント欄もしくはお問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。

目次

はじめに

微分演算$\frac{d}{dt}$と期待値$E[\cdot]$の順序がある条件下で交換できることを示します。微分演算と期待値の順序交換は多くの教科書では成り立つものと仮定しているために,議論されることが少ないように思えます。しかし,測度論では重要なトピックであるため,ここでも少し触れておこうと思います。

下準備

厳密さを追求してしまうとキリがないため,ここではルベーグの収束定理が示されているものとして証明を進めていきます。

ルベーグの収束定理(Lebesgue’s convergence theorem)

$I$を$\mathbb{R}$上の区間とし,$f_1, \cdots$は$I$上の連続関数とする。$f$,$g$が$I$上の可積分な連続関数であり,全ての$x\in I$に対して$f_n(x)$は$f(x)$に収束して$|f_n(x)|\leq g(x)$が成立するとき,下記のように極限の積分の順序を交換することができる。

\begin{align}
\lim_{n \rightarrow \infty} \int_{I} f_{n}(x) d x=\int_{I} f(x) d x
\end{align}

ただし,$I$上で可積分とは以下を満たすことを指します。

\begin{align}
\int_{I} |f(x)| dx < \infty
\end{align}

この定理と平均値の定理を用いれば,微分と積分の順序交換は簡単に示すことができます。

証明

まず,平均値の定理より,数直線上の区間$I$上の可積分な連続関数$f(x,t)$に対して

\begin{align}
\left|\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\right|
&= \left|\frac{d}{dx}f(x+\theta h)\right| \\[0.7em]
& \leqq g(x)
\end{align}

が成り立ちます。ただし,$0<\theta<1$です。したがって,ルベーグの収束定理より,

\begin{align}
\frac{d}{dx} \int_I f(x) dx &=\lim_{h \rightarrow 0} \frac{\int_{I} f(x+h) dx – \int_{I} f(x) dx}{h} \\[0.7em]
&=\lim_{h \rightarrow 0} \int_{I} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} dx \quad(\because \text{積分の線形性}) \\[0.7em]
&=\int_{I} \lim_{h \rightarrow 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} dx \quad(\because \text{ルベーグの収束定理})\\[0.7em]
&=\int_{I} \frac{d}{d x}f(x) dx
\end{align}

が成り立ちます。これは,微分操作と積分の順序交換ができることを示しています。$f$が二変数関数になったときも同様です。$f(x, t)$の順序交換はモーメント母関数などで活躍します。まずは,平均値の定理です。

\begin{align}
\left|\frac{f(t+h, x)-f(t, x)}{h}\right|
&= \left|\frac{d}{dx}f(t+\theta h, x)\right| \\[0.7em]
& \leqq g(x)
\end{align}

続いて,積分の線形性とルベーグの収束定理を利用します。

\begin{align}
\frac{d}{dt} \int_I f(t, x) dx &=\lim_{h \rightarrow 0} \frac{\int_{I} f(t+h, x) dx – \int_{I} f(t, x) dx}{h} \\[0.7em]
&=\lim_{h \rightarrow 0} \int_{I} \frac{f(t+h, x)-f(t, x)}{h} d x \\[0.7em]
&=\int_{I} \lim_{h \rightarrow 0} \frac{f(t+h, x)-f(t, x)}{h} d x \\[0.7em]
&=\int_{I} \frac{\partial }{\partial t}f(t, x) dx
\end{align}

さて,最後に微分操作と期待値の順序交換に関しても確認しておきましょう。積分と期待値はほとんど同じですので,直感的にも順序交換が可能であることがわかります。実際,以下のように先ほどと同様に証明することができます。$I=(-\infty, \infty)$とします。

\begin{align}
\frac{d}{dt} E[f(x, t)]
&= \frac{d}{dt} \int_{I} f(x, t) f_X(x) dx \\[0.7em]
&=\lim_{h \rightarrow 0} \frac{\int_{I} f(x, t+h)f_X(x) dx – \int_{I} f(x, t)f_X(x) dx}{h} \\[0.7em]
&=\lim_{h \rightarrow 0} \int_{I} \frac{f(x, t+h)f_X(x)-f(x, t)f_X(x)}{h} dx \quad(\because \text{積分の線形性}) \\[0.7em]
&=\int_{I} \lim_{h \rightarrow 0} \frac{f(x, t+h)f_X(x)-f(x, t)f_X(x)}{h} dx \quad(\because \text{ルベーグの収束定理})\\[0.7em]
&=\int_{I} \frac{d}{d t}f(x, t)f_X(x) dx\\[0.7em]
&= E\left[\frac{d}{d t}f(x, t)\right]
\end{align}

この期待値と積分の順序交換は統計学では頻出の操作ですので,ぜひおさえておきたいところです。

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